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【本編完結】辺境の錬金術師 ~今更予算ゼロの職場に戻るとかもう無理~《コミックス発売!》   作者: 御手々ぽんた
第三章

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墓雲のフィールド

「きゃっ」


 腕の中でリリー殿下が短く、驚きの悲鳴をあげる。


 急上昇をするセイルーク。

 すぐにリリー殿下が指差していた積乱雲が間近に迫る。


 次の瞬間、視界が白く染まる。

 地上で遭遇する霧の何倍もの濃さ。普通の雲よりも明らかに視界が悪い。それなのに、雷の一つも起きていないようだ。


 ──これは明らかにただの雲じゃないな。水滴もつかない。


 不思議な静寂が支配するその真っ白な空間をぐんぐんとセイルークが上昇していく。


 前方が明るい。

 そのまま、雲らしきものを抜ける。


 まぶしい。


 セイルークが羽ばたきをゆるめ、ゆっくりと滑空を始める。

 明るさになれた目で、周囲を見回す。


「ルスト様、あれ……」


 眼下の真っ白な雲。その中央を指差すリリー殿下。

 何を指差しているのだろうかと目を凝らす。


「あれは、骨?」


 同じ白色をしていて分かりにくいが、雲の中央に、無数の骨が山積みになっていた。

 それはまるで雲の中に浮かんでいるかのようだ。


 滑空をしながら、セイルークがそちらへと近づいていく。

 間近にみると、一つ一つの骨が大きい。明らかに人のサイズではない。


「ドラゴンの骨、か?」


 私が呟くと、まるでそれが合図だったかのようにセイルークが骨の山へ着地する。


 そのまま沈み込むかと私は一瞬、緊張する。しかし、リリー殿下はキョロキョロと楽しそうだ。

 そして、私の予想に反して、セイルークは骨の山に無事立ち続けていた。


「すごいですね。骨自体が浮いているのかしら」

「ぎゅるる?」


 降りる? と聞いているのが絆を通して伝わってくる。セイルークの尻尾が丸められ足場として近づいてくる。


「降りても良いのですね。ありがとうございます、ドラゴン殿。お先に失礼しますね」


 私が躊躇っている間に、体を起こしたリリー殿下は身軽な動きでセイルークの尻尾へと飛び移ると、そのまま尻尾を伝って行ってしまった。


 私は慌ててセイルークの作ってくれた尻尾の足場へと移る。ゆっくりと下ろしてくれるセイルーク。その気遣いに感謝をしつつ、間近に迫った骨の地面に片足を伸ばしてみる。


 ゆっくりと体重をかけるが、びくともしない。

 私は慎重に骨の山に降り立つ。

 そこへ駆け寄ってくるリリー殿下。


「ルスト様、ここ、凄いですね。この骨、物凄く頑丈なのに全く重くありません。やはり全てドラゴンの骨なのですかね」


 リリー殿下が足元の骨を持ち上げて話しかけてくる。

 私はリリー殿下の勝手な行動を注意しようとして、危うく思いとどまる。


 ──危ない危ない。注意なんてしたら、旦那面するなら結婚してからにしろとか、また言い出しかないからな、このお姫様は。うろちょろするなと言いたいが、ここは、我慢だ。


 私が一人葛藤していると、セイルークが再びなき声をあげる。

 そして絆を通して、始まるよ、伝わってくる。

 私たちの足元の骨が、カタカタと音を立てて動き始めていた。





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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます。 [一言] 始まったな ああ……(それっぽくうなづく)
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