墓雲のフィールド
「きゃっ」
腕の中でリリー殿下が短く、驚きの悲鳴をあげる。
急上昇をするセイルーク。
すぐにリリー殿下が指差していた積乱雲が間近に迫る。
次の瞬間、視界が白く染まる。
地上で遭遇する霧の何倍もの濃さ。普通の雲よりも明らかに視界が悪い。それなのに、雷の一つも起きていないようだ。
──これは明らかにただの雲じゃないな。水滴もつかない。
不思議な静寂が支配するその真っ白な空間をぐんぐんとセイルークが上昇していく。
前方が明るい。
そのまま、雲らしきものを抜ける。
まぶしい。
セイルークが羽ばたきをゆるめ、ゆっくりと滑空を始める。
明るさになれた目で、周囲を見回す。
「ルスト様、あれ……」
眼下の真っ白な雲。その中央を指差すリリー殿下。
何を指差しているのだろうかと目を凝らす。
「あれは、骨?」
同じ白色をしていて分かりにくいが、雲の中央に、無数の骨が山積みになっていた。
それはまるで雲の中に浮かんでいるかのようだ。
滑空をしながら、セイルークがそちらへと近づいていく。
間近にみると、一つ一つの骨が大きい。明らかに人のサイズではない。
「ドラゴンの骨、か?」
私が呟くと、まるでそれが合図だったかのようにセイルークが骨の山へ着地する。
そのまま沈み込むかと私は一瞬、緊張する。しかし、リリー殿下はキョロキョロと楽しそうだ。
そして、私の予想に反して、セイルークは骨の山に無事立ち続けていた。
「すごいですね。骨自体が浮いているのかしら」
「ぎゅるる?」
降りる? と聞いているのが絆を通して伝わってくる。セイルークの尻尾が丸められ足場として近づいてくる。
「降りても良いのですね。ありがとうございます、ドラゴン殿。お先に失礼しますね」
私が躊躇っている間に、体を起こしたリリー殿下は身軽な動きでセイルークの尻尾へと飛び移ると、そのまま尻尾を伝って行ってしまった。
私は慌ててセイルークの作ってくれた尻尾の足場へと移る。ゆっくりと下ろしてくれるセイルーク。その気遣いに感謝をしつつ、間近に迫った骨の地面に片足を伸ばしてみる。
ゆっくりと体重をかけるが、びくともしない。
私は慎重に骨の山に降り立つ。
そこへ駆け寄ってくるリリー殿下。
「ルスト様、ここ、凄いですね。この骨、物凄く頑丈なのに全く重くありません。やはり全てドラゴンの骨なのですかね」
リリー殿下が足元の骨を持ち上げて話しかけてくる。
私はリリー殿下の勝手な行動を注意しようとして、危うく思いとどまる。
──危ない危ない。注意なんてしたら、旦那面するなら結婚してからにしろとか、また言い出しかないからな、このお姫様は。うろちょろするなと言いたいが、ここは、我慢だ。
私が一人葛藤していると、セイルークが再びなき声をあげる。
そして絆を通して、始まるよ、伝わってくる。
私たちの足元の骨が、カタカタと音を立てて動き始めていた。




