空へ!!
「リリー殿下、王家の忠実なる僕たるアドミラル家が家臣ルストが、御身を空の旅へとお誘い申し上げます」
スタスタと近づき、片ひざをついての右手をリリー殿下へと差し出す。
──どうせ誘わざるをえないなら、せめてカリーンを認めさせてやる。リリー殿下が私のこの手をとったら、カリーン=アドミラルは王家公認の忠臣って事になるはず。
「っ!」
カリーンの、息を呑む音が聞こえてくる。しかしカリーンも流石貴族、ここで口を出しては来ない。
リリー殿下の供の騎士たちも無言だ。
高まる緊張の中、にこりと微笑むリリー殿下が私の手をとる。
「お誘いありがとう。さあ、我が身を、空へ」
私は、自らの手の平にリリー殿下の左手をのせたまま立ち上がる。そしてふと困る。
──どうやってセイルークに乗るか、考えていなかった……。
ポケットと袖に忍ばせたスクロールを使えば何とかなるけど、それは流石にまずいかと思いとどまる。流石に王族を蔦に巻き付けて持ち上げるのは、不味いよな……
絵面を想像してふるふると頭を振っていると、セイルークから絆を通してイメージが送られてくる。どうやらおすすめの乗り方があるようだ。
私はそのイメージに従い、リリー殿下の手を引いてセイルークの後ろ足側へと近づいていく。
ペタンと後ろ足を折り曲げ、座るセイルーク。その尻尾の、先がくるくるとまるまると、ちょうど人が乗れるぐらいの足場になる。
ありがたく、その尻尾で出来た足場にリリー殿下と乗る。ぐっと体が持ち上げられる感覚。
リリー殿下は歓声を上げている。どうやら単純に高いところが好きなようだ。
リリー殿下が愛用している騎獣を思い出して一人納得していると、セイルークの背中、二対の羽の間へと近づく。
まだ動いている足場からひょいっとセイルークの背中へ跳び移るリリー殿下。
セイルークの背中、平らな部分は人の足裏の幅一つ分程度しかないようだ。
そこに片足で上手くバランスをとったまま、くるりとこちらを向くリリー殿下。
「ルスト様もお早くっ!」
声が弾んでいる。私はしっかり動きが止まるのを待って、慎重に乗り移る。
座れる場所は二対の羽の間だけのようだ。前に横座りで座ったリリー殿下の、不本意ながらすぐ後ろに座る。
セイルークから、掴まるようにイメージが送られてくる。コブのような突起がちょうどあるので腕を伸ばす。
伸ばした私の二の腕に、ぽんっとリリー殿下が頭を預けてくる。花の香りが鼻先をくすぐる。
「準備はよろしくてよ」
「……はい。セイルーク」
私の声に応えるように大きく翼を羽ばたき始めるセイルーク。
私たちをのせ、その身は空へと舞い上がった。




