建物の増設とイブ
私は本部のある建物の奥、イブの本体が眠る場所へと向かう。
途中、カゲロ機関の面々に出会う度に、地下遺跡を攻略したことを祝われる。どうやら外にいる大きくなったセイルークがよく目立つようだ。言われてみれば本部の窓からも、セイルークの姿が見える。
──セイルーク、皆に囲まれて嬉しそうだ。
バサッとセイルークが大きくなった翼を広げる度に歓声が上がっている。
──今のうちにやること済ませておくか。
私はイブの本体が眠る部屋の前へと来ると、入り口の斥力場を解除する。錬金術協会で設置していた物の簡易版だ。イブ自体にも自衛能力があるので、セキュリティとしてはあまりレベルを高く設定していない。
部屋に入る。
部屋の中央は、露出した地面になっている。そこにどんっと鎮座する、『たけのこ』型錬成獣。
巨大化し、その身を都市へと変貌させたイブ。それらは全て、地下茎で繋がっている。
この本部の奥深くに設置した部屋で、その地下茎の芽子から生えている『たけのこ』が、都市全体を統括するイブの本体となっている。
そのイブの周りには、結界の魔素を都市維持のために変換するのを補佐するための魔導具を等間隔に設置している。
私はその隙間をぬってイブの本体に近づくと、起動のフレーズをつげる。
「『起きて』イブ」
イブから手足が生えてくる。
よっこいしょっとその身を地面から引き抜くと、手足をぷらぷらするイブ。
まるで寝過ぎて痺れたーとでも言っているようだ。
そのイブの背中からは、太い地下茎が地面の下へと延びている。まるで巨大な尻尾か、パイプのようだ。
そのパイプを行き来する大量の魔素が錬金術師としての私の目には見える。
ようやく体操じみた動きを終えたイブに私は建物の増設をお願いする。
一つは当然大きくなってしまったセイルーク用。そしてもう一つは不本意ながらリリー殿下のための建物だ。
特にリリー殿下のための建物は王族が宿泊する場所となる。掘っ立て小屋というわけにはいかない。
「見た目だけでも、出来るだけ豪勢にお願い。まあ、リリー殿下が帰ったら迎賓館にでもすればいいよね。──リリー殿下、帰るよな?」
自分で言ってて一抹の不安を感じる。
そんな私の不安顔をよそに、しゅぴっと両手をあげるイブ。
その動きにあわせ、地面が鳴動する。それは外で、新たな竹の建物が生え出てくることによる振動。
両手を掲げていたイブが手をくるくる回して、次にクロスする。
大地の鳴動が止まる。
こてっとたけのこの先を傾げるイブ。
「ありがとう、もう大丈夫。イブ、『眠れ』」
ばいばーいと手を振って、穴へと戻っていくイブ。生えていた手足が引っ込む。
「はあ、戻るか」
私はため息を一つ。気合いを入れ直すと、外へと向かった。




