金貨の使い道?
「これで、最後っと」
『研磨』のスクロールの竜巻で、バラバラになった猫人形が煙になり、かわりに現れた金貨がぴょんと竜巻から飛び出す。
ちょうど目の前に落ちてきたそれを片手でつかむ。
私たちは、あのあと現れた猫人形達をようやく倒し終えたところだった。
地面のそこかしこに、キラキラとした金貨が散乱している。散乱具合で、かなりの数がいたのがわかる。結構な時間がかかってしまった。
なぜかヒポポやローズ達をスクロールから呼び出せなかったのだ。
「ルスト師、どうするのこれ?」
ロアが足元の金貨を拾いながら聞いてくる。
「見たことのない金貨ですね。通貨としては使えないと思います。それに金貨としても質が悪いかもしれません」
「確かに。大きさの割りに軽いね」
アーリの指摘に私はうなづきながら答える。
「わしは持っていった方が良いと思うぞ。ここはいわゆる、ダンジョンって奴だ」
「ダンジョンというとあれですか? 原初の時代には無数にあったという──」
私は記憶を探りながらたずねる。
「そうだ。専用のモンスターが沸き、宝が眠るという、あれだ」
「でも、ここ、外」
ロアの不思議そうな声。
「ああ、見た目は外だが、ずっと行くと見えない壁があるか、元の場所に戻されるはずだ。わしの知っている文献によればだがの」
「そんなダンジョンがあるのですね。ではこの猫人形達は、ダンジョンモンスターだから煙になって消える──?」
アーリがロアのかわりに返事をする。
「つまりこの金貨はドロップ品ってことか。って、ハルハマー師が研究用に欲しいだけですよね?」
私のツッコミに、がははと笑いながら肯定するハルハマー師。
私は、まあ仕方ないかと、落ちている金貨をざっと竜巻で集めて一気にリュックへとしまっていく。
「研究用にしたいのはもちろんあるが、ダンジョンならドロップ品を何かに使うって可能性もあるんじゃぞ」
満足そうにその様子を見ていたハルハマー師がそんなことを言う。
私は軽く肩をすくめると、当初の目的地にしていた建物へ、足を進めた。
その時だった。
私の目の前に突然現れる半透明のプレート。
「え、何これ」「敵!?」「うぬ?」
アーリ達三人から、驚きの声が上がる。そちらを見ると、皆の目の前にも同じように半透明のプレートが浮かんでいる。しかも、皆、それが見えているようだ。
「何か書かれているぞ。ルストは読めるか?」
私はハルハマー師に言われ、自分の目の前のプレートに視線を戻す。そこには、私の目には二重写しになって、文字が書かれていた。
「ええ。タイムアップ、と」
私がそう伝えた時だった。視界が切り替わる。
一気に暗くなる。
すぐに慣れた目で見回すとそこは地下遺跡の中、私が鍵の魔晶石をかざした壁の前だった。
「きゅーっ!」
どんっという衝撃。頭の上が一気に重くなる。
「セイルーク! 無事だったかっ! 良かった。……そこは重いからどいてくれ」
背後から私の上へとダイブしてきたセイルークをよっしょっと持ち上げる。
前足の下で両手で持ち上げたセイルークを囲むようにして、皆が無事を喜んでいる。
「きゅっきゅっきゅー!」
契約の絆を通じて、セイルークの感情が伝わってくる。どうやら心配したのはこっちだと言いたいらしい。
「セイルークからしたら私たちが急に消えたように見えたのかな。ごめんごめん、心配かけたね、って痛い痛い」
なだめるように声をかける私の足にベシベシとセイルークの尻尾が当たる。
自然と皆から上がる笑い声が明るい。
私もつられて思わず笑ってしまった。




