転移先は?!
私が目の前の壁に鍵の魔晶石を近づけると、壁に魔法陣が浮かび上がる。
「おお!」「一発で正解を引いたなっ」
私の肩や腕に掴まっている皆から感嘆の声が上がる。
霊廟の壁の物と同様に、くるくると壁の上で回り始める魔法陣。それが崩れ、魔素の光がやはり文字となって壁の表面に現れる。
霊廟の時はリリー殿下からの求婚の衝撃もあってしっかりと見ていなかった文字。
今回現れた文字もやはり、『管理者権限の確認が完了』と書かれている。
しかし、僅かな違和感。
「あ、『バックドア』の文字がないんだ──」
私は書かれた文字のうち、読み取れる部分に素早く目を通す。そして、違和感の正体に気がつく。
しかし、『バックドア』というものが何かは相変わらず、わからないままだった。それでも、何かが変更になっている可能性が高いと、皆へと警告しようとする。
しかし、私が口を開くよりも速く、壁から溢れだす魔素の光。
それは私の体を通して、皆へと広がる。そのまま全員の体を包み込んでいってしまう。
次の瞬間、世界がパッと切り替わる。
私たちを取り囲んでいた地下遺跡の壁が完全に消失している。
「え、転移しました? 外?」
私の肩につかまったままのアーリの呟き。先程まで感じなかった日の光が私たちに降り注ぎ、風が吹き抜ける。
私の後ろには、ロアにハルハマーもいる。私の腕を掴んで一緒に転移してきたようだ。
しかし、アーリが掴んでいるのと逆の肩が不思議と軽い。
「セイルーク、いない」
ロアが私の空いた肩をみて、ぼそりと呟いた。
「セイルークだけ取り残されたのか? それとも別の場所へ?」
私は呟きながら急いで辺りを見回す。
辺りはひらけていて、少し離れた場所には無数の建物が見える。
石とも金属ともわからない不思議な質感の建物群。
どれもなかなかの大きさがある。
足元も不思議だ。石というには柔らかく、僅かに弾力を感じる。
そのどれもが霊廟の時の転移先の小部屋とは全く別物で、戸惑ってしまう。
何よりも、戻るための壁がどこにあるのかがわからない。
「なんだか不思議な場所ですね。今のところ争いの兆候は無さそうです」
同じように辺りを見回しながらアーリが教えてくれる。
「ありがとう、アーリ。まずは戻る用の、鍵の魔晶石が反応する壁を探そうと思うんだけど、どうかな?」
私は皆に尋ねる。
「それがいい。セイルークの事は今は何もわからんしな。わしの勘ではセイルークだけ地下遺跡に取り残された可能性が高いとは思う。どちらにしても確認できん。ルストの言うように、動くしかあるまい」
アーリとロアも頷いてくれる。
方針を決めた私たちは、一番近くに見える建物へと向かった。




