奇跡!!
私はヒポポに乗ったまま、両手を組み祈りを捧げていた。祈りの対象は、前を行くカリーン、だ。
リリー殿下との庭園での会談を終えてから数日後。バタバタと準備に追われる日々を乗り越え、私たちは王都を離れ、アドミラル領へと帰還していた。
そして、なんとリリー殿下のアドミラル領への同行をお断りすることに、成功していた。
まさに奇跡。
カリーン様々である。
私はその事で、何度目かわからない祈りをカリーンに捧げている所だった。
カリーン曰く、王都で方々に作りに作った貸しが、相当役にたったらしい。貸しを使ってつてをたどり、最終的にはリリー殿下の乳母に当たる人物経由で辺境行きをいさめて貰ったらしい。
それを聞いて、カリーンの持つ政治力を大いに見直した。本当に、持つべきものは素敵な上司様、である。
いよいよアドミラル領へ出発という時に、リリー殿下の同行が無いことが確定した瞬間のカリーンが、まさにその頼れる素敵な上司様だった。
いつものひょうひょうとした感じで、「私が好きにやって良いって言ったからな。その分のフォローをしただけさ。それも元々はルストの功績で作った貸しを使っただけだし。大したことじゃない。なにより、十分面白かったからな」とおっしゃられたカリーン。
最後の一言さえなければ完璧なのにと思ったのは、その場にいたアーリやロア、タウラも同意してくれた。
そんなこんなで、仲間内だけの気楽な道中を私は満喫していた。
襲ってくる辺境在住のモンスターですら懐かしい。
それらを、アーリとロア、そしてヒポポの事前のお知らせを聞いてからのんびりと迎撃の準備をして、気負うことなくさくさくと対処していく。
もちろん、錬成用の素材は剥ぎ取り、残った肉はリットナーヘのお土産だ。王都で結んだ取引で見込める利益が相当あるらしく、カゲロ機関への予算も上乗せしてくれるらしい。
ちまちま魔物の肉を買い取って貰っていたのが遠い昔のようだ。
そんな帰りの道中、モンスターを狩っていない時はもっぱら今後の予定についての相談をしていた。
カリーンの方針としては、ハーバフルトンに一度帰り、新たな領都の開拓のための部隊──開拓隊──を編成するつもりのようだ。
ちょうど今もその話をしている所だった。
カリーンが、後ろを振り返る。
「ルスト、まだそれをやっているのか」
祈る姿の私を見て呆れ顔だ。
「感謝の気持ちの表明は大切だろう、カリーン様」
「それじゃあ、感謝ついでに仕事を頼む。開拓隊を受け入れるための、遺跡に先行する先行部隊の指揮をルストがやってくれ」
「謹んで承りましょう」
それぐらいお安いご用と、私は安請け合いをする。ヒポポの上でお辞儀の真似事をして応えておいた。




