報連相は大切だけど!!
「これが、セイルーク?」
宿に戻った私たちを出迎えたアーリとカリーンが、変化したセイルークを面白そうに眺めていた。
特にカリーンは興味津々な様子で、セイルークの増えた羽をつんつんと指先でつついている
「これ、別々に動くのか?」
セイルークがカリーンの声に応えて羽を動かす。
四枚ある羽が器用にも、別々に動く。
「くちゅん」
その一枚の羽の先がアーリの鼻先をくすぐったのか、くるっと後ろを向いたアーリの方から、くしゃみの音が聞こえてくる。
ロアがそんなアーリにハンカチを差し出す姿を何とはなしに眺めながら、私はカリーンに遠乗りであったことの報告を続ける。
「──以上です」
「それで、何か面白い事はあったか、ロア?」
私は十分に波乱に満ちた報告をしたのだが、そんなことをロアに尋ねるカリーン。
「ルスト師、別れ際にリリー殿下に迫られて嬉しそうだった」
そこで、ロアからのいわれもない告発を受ける。確かに霊廟跡から王都に戻ってきた際にリリー殿下がだいぶ距離をつめて話しかけてきてはいたが、私は何もやましい事は無い。
「ほーう、そうなのか、ルスト? 確かにリリー殿下は目鼻立ちは美人だからな。男装姿の凛々しさと、どこか天然で抜けている所があるギャップは男性諸君から見たら、大層魅力的だろうよ」
なぜか満面の笑みのカリーン。
「ごほんっ。そんな事はありません。それに、断ってますから!」
「それ、セイルークが来る前に言いかけてた、あれ? という事は、二人で霊廟の中でも、そんなことを話してたの?」
「ほー。それは今の報告には入ってなかったなー」
悪のりした時のテンションで聞いてくるカリーン。これは、めんどくさいやつだ。
「確かに、霊廟の中で、リリー殿下から求婚されました。でも、私はカゲロ機関を辞める気も、そしてアドミラル領を離れる気もないので。だいたい王家に入るとか柄じゃないですし」
「そうかそうか。ルストのその気持ちは私としては嬉しい事だな。しかし、王族からの求婚があったとはな」
満足げなカリーンだったが、後半は色々と思索を巡らせている顔つきに変わっていた。
しかしロアはまだ疑問の浮かんだ顔をしている。
「でも、あれ、断ったって言ってもすごい中途半端だった。リリー殿下、別れ際にも迫ってたぐらいだし、諦めて無いと思う」
「──あれは仕方ないだろう! セイルークも来て、更に敵が襲ってきたんだから。あの後改めてお断りする雰囲気じゃなかったし……」
なんとなく言い訳めいた事を言ってしまう。
「ロア、それぐらいに」
見かねたのか、アーリが止めてくれる。
「それとカリーン様、ルスト師。タウラ殿に連絡がつきました。急ぎ戻ってくるとのことです」
アーリから告げられたのは、タウラの事だった。リハルザムを倒した際に手がかりが見つけられず、一人王都を離れて呪術師の捜索をしていたタウラ。
先日の白面の会の後の襲撃に、呪術師の関与が疑われる事をアーリから連絡してくれていたのだ。
その返事が届いたのだろう。
「そうかそうか。魔族の配下らしき存在に、呪術師からの襲撃。王家もちょっかいをかけてきたと。王都滞在も、いよいよきな臭くなってきたな」
手のひらに拳を打ち付け、カリーンは心底楽しそうにそう言った。




