魔石に刻まれたもの!!
頭部を失った敵の体が、ボフッと音をたてる。そこに現れたのは、真っ白な煙。
その煙が風で吹き散らされると、敵の体は跡形もなく消えていた。
「消えた……。モンスターや呪術師の使い魔じゃなかったのか?」
このように死んだあとに消えてしまう存在をはじめてみた私は、驚きながらも非常に興味をひかれる。そこへロアの声がかかる。
「ルスト師、あれ」
その指先の指し示す先に、ゆっくり近づいてみる。すると、敵の消えた場所の地面に埋まるようにして、魔石があった。
私は純化処理済みの採集用手袋を片手にはめ、慎重にそれを拾う。
「これまた珍しい。完全な真球……。しかも何か紋様が刻まれている」
それは通常ゴツゴツした石のような魔石とも、カッティングが施された形状をしている魔晶石とも違っていた。
私がまじまじと手の中の魔石を眺めていると、ロアとリリー殿下達が近づいてくる。
「ルスト様、先程は守って頂きありがとうございました。そちらもルスト様の錬成獣ですか? とても、お強いのですね。──その紋様はっ!」
手の震えは止まり、顔色も少し赤みを取り戻したリリー殿下が、私の手の中の魔石をみて息を飲む。
「ええ、こちらの錬成獣はローズと言います。リリー殿下はこの紋様を御存じですか?」
私はスクロールから顕在したままのローズの蔦を撫でて労いながら尋ねる。
「……ルスト様も『原初の八人』の事は御存じですよね」
「ええ。創世の時代に現れたと言われている最初の八人の魔族ですよね。何でも何体かは今だに代替わりせずに、生きているとか」
「ええ。八体のうち、五体は主に争乱の時代にドラゴンによって打ち倒され、代替りをしたそうです。ただ、残りの三体は、今だに創世の時代から二千年以上、生き続けていると言われています。その三体が『妄執の一席』、『不義の三席』、『最弱の七席』。王家に残る資料で見たことがあります。これは不義の三席と呼ばれる魔族の紋様に見えます」
「つまりは、先程の四つ腕の敵は、その不義の三席の配下とか被創造物って可能性があると」
無言で頷くリリー殿下。少し赤みが戻っていた顔色が再び青白くなっている。
私は余計なお世話かと思いつつ、リュックから気付け用にポーションを取り出すとリリー殿下に渡す。
「こちらは?」
「単なるポーションですが、少し気分が落ち着くかと思います」
「まあ。ありがとうございます」
笑みを浮かべ私からポーションを受け取るリリー殿下。しかし飲まずにしまってしまう。
──そうか。王族ともなれば、不用意に飲むわけ無いよな。失念していた。
少し顔色が良くなったリリー殿下が、帰還を告げる。
「さあ、王都に戻りましょう。霊廟の崩落に魔族の関与があることは、私から関係部署に通達致します」
「ありがとうございます。街道の修復については──」
私が、ヒポポが本気を出してから刻まれた足跡について言及すると、それもリリー殿下の方で引き受けてくれるらしい。
ありがたい事ではあるが、後が怖いなと思いつつ、断るのも無礼かと諦める。
そうして、私はロアの後ろに乗せてもらい、王都へと向かった。




