これは、圧勝せざるを得ない!!
「それは、勝者がなにか報奨を頂けると言うことでしょうか?」
私は街道の周りを続々と埋めていく人垣を眺めながらリリー殿下に尋ねる。先ほど門番にゾロアーが話に行っていた。これから始まる私たちの早駆け勝負の事が、門番からあっという間に噂となって広まったのだろう。
早駆けのため、街道を開けてもらうという点では良かったが。
人垣から、若い女性を中心にリリー殿下への声援が上がっている。ただ、それを上回るぐらい、私への声援が聞こえてくる。なぜか男性や、家族連れを中心に。
「あれが救国の英雄殿!」「意外といい男じゃない?」「パパ、ドラゴン、どこ? 真っ白なドラゴンっ」
「ルスト師の方が声援が大きい」
ポツリと呟いたロアの声。なぜか少し満足げだ。そして、その呟きが聞こえたのだろう、ゾロアーとリスミストの顔が少し険しくなる。ただ、聞こえなかったフリはするようだ。
私とリリー殿下は周りの諸々は置いておいて、話を続ける。
「負ける気が無いのですね。どうでしょう、賭けにするというのは」
「賭け事は、貴種にあるお方としてはあまり誉められたものでは無いのでは?」
私はやんわりと止めてみる。
「上に立つものほど、決断が必要でしょう?」
「──賭け事も、そのうちに含まれると言う事ですか。わかりました。何を賭けるのでしょうか」
「救国の英雄殿達が勝ちましたら、先日お渡しした魔晶石の秘密をお教えする、というのはいかがでしょうか」
私は一瞬、返事につまる。それはかなり気になっていた事だったので。
「──それで、私達が負けた場合はどうすれば?」
「カルザート王国第二王女たるわたくし、リリエンタール=カルザートのものになってくださいまし」
両手の指を再び会わせ、にっこりと笑いながら、リリー殿下が賭けの内容を告げた。
私はその朗らかながら、目が笑っていない笑顔を見て、決意する。
これは圧勝しなければいけない戦いなのだと。
「いいでしょう。その賭け、受けてたちましょう」
「ルスト師っ!」
何かいいかけるロアへ、手のひらを向けてなだめるように伝える。
「大丈夫。絶対勝つよ」
力強く言い切ると、ロアもしぶしぶ引き下がる。
「まあ。それでは早速始めましょう。五人のうち最初に霊廟にたどり着いた者が、勝者です。ゾロアー」
「はっ! 門番殿! スタートの合図を頼む」
慌ただしくも準備が整う。
ずらりと私たち五名は門の外で一列に並ぶ。
皆の視線は急に任命された門番へ注がれる。
大きく挙げられたその手。
「それでは、スタートの合図をさせて頂きます。皆様、準備はよろしいでしょうか」
「良い。はじめてくれ」
「わかりました。三、二、一。スタートっ!」
門番の手が勢いよく振り下ろされた。




