剣姫殿下からの招待!!
翌日、カリーンはアーリを伴って早朝から出掛けていた。
どうやら昨日の襲撃について、王都の治安維持に関する関係各所に届け出にいくらしい。
救国の英雄が国の重鎮との会の帰り道に襲われたのだ。方々に圧力をかけたりしておく、と息巻いていた。交渉の手札がまた増えたと、カリーンは嬉しげだった。
どちらかといえば、久しぶりの戦闘が楽しかったのでは無いかと、宿に残ったロアと私は話しているところだった。
「カリーン様も、色々たまっている」
そういうロアの視線は、何かカリーンのストレス発散になる機会を私に用意して、と言っているかのようだった。
そんな話をしているうちに、昼過ぎ頃、カリーン達が戻ってきた。
宿の食堂で、皆で遅めの昼食をとることにする。
私たちは王都でも一二を争う宿に泊まっていた。今回のキノコ騒動後でもすぐに営業再開していた宿が他に無かったのだ。ここら辺の対応力の高さは流石、一流の宿といったところ。
ちなみに救国の英雄と言うことで宿代はタダで良いと言われたのだが、お気持ちだけで、きっちりお代は払っている。復興には何かと物入りだろうしね。
昼食は、私がリュックに保管していた辺境のモンスターの肉を宿に提供している。魔素たっぷりの肉はそのままでも人間にとっては美味しく感じられるのだが、一流の料理人の手で、至高の逸品と化していた。
王都は現在、食料が不足気味だ。リハルザムが相当食べてしまったようだ。最後に見たときの肥え具合から見ても納得だが。そんな王都に対し、昨晩、カリーンはモンスターの肉をハーバフルトンから供給する取引をやり取りしていたらしい。かなりの儲けと、あと恩も売っていたようだ。
皆が無言で至高の肉に舌鼓をうった後、カリーンが話し始める。
「昨晩の襲撃について、手がかりは今のところなし。ただ、今回の襲撃は最大限活かせそうだぞ。王都の人々は上から下までキノコの件で怒り心頭だからな。しかも主犯のリハルザムがすでに死んでいる。その恨みは、呪術師へと集中しているってね」
そういって口元を拭うカリーン。
「そうだ、これが届いていたぞ、ルスト」
そういって、何かを投げつけてくるカリーン。私は目の前に迫るそれを何とか受けとる。
「と、投げるな。随分と立派だな」
それは一通の封筒だった。ユリの花の模様に二対の剣があしらわれた印章で封がされている。
封筒自体も、多分、センスの良いものなのだろう。
表書きに私の名前が確かに記載されている。
しかし差出人の名前が無い。
「リリー殿下からだぞ、それ」
私が差出人名を探しているのを見て、カリーンが教えてくれる。何故か笑いを含んだ声。
「この前のといい、だいぶルストに御執心のようだな。例の魔晶石で気を引いておいて、夜会か何かの誘いだろう」
「……これは、開けない訳には行かないよな」
「うむ」
私は確かに鍵のような魔晶石のことはかなり気になっていた。めんどくささと好奇心の狭間で、一応好奇心が上回る。
蝋封を外すと、中身に目を通す。
「……遠乗りの誘いだ。しかも、今日」
私は王族とは思えないその性急さに呆れて、手紙をカリーンへと渡す。
「ふむ。そのようだな。行ってこいよ、ルスト。今日だったら、ロアなら貸してやる」
私は隣でまだ肉を食べているロアを見る。どこにそんなに入るのかと思うぐらい食べつづけているロア。口一杯に肉を詰め込んだまま、真面目な顔をしてこちらに一つ頷くと、再び肉へと戻っていく。
どうやら了承の合図のようだ。
「わかった。何か注意点はあるか?」
「面白いことがあったら、報告してくれ」
朗らかにそんな事をおっしゃる上司様に私は一睨みして、遠乗りの準備を始めた。




