呪術師の魔の手!!
「まだですっ!」
アーリの叫び声。
「っ! ローズ、二人を回収! シェルルールは、出発して! 全速力っ」
私は矢継ぎ早に指示を出す。
ローズの蔦がカリーンとアーリに巻き付く。客車へと急ぎ向かう私のあとを追って来る。
ちらりと見たローズの蔦。先程の液体が付着した部分が、黒く変色している。まるで、アザのようだ。出会った時のタウラの顔に刻まれていたものと似ている。
──呪い、か。しかも人の命を代償にかけるタイプ……。呪術師っ!
シェルルールがこちらへと向けて走らせてくれた客車に飛び乗る。《顕現》のスクロールが続き、そこから生えたローズの蔦に巻かれてアーリとカリーンも転がり込んでくる。
その時だった。
カリーンが気絶させたはずの残りの暗殺者たち。その体もぽこぽこと膨らんだかと思うと、次々に爆散し、液体を撒き散らす。アーリが見たのはこれだったのだろう。
路地を、壁を、飛び散った液体が汚していく。
間一髪で、そこから走り抜ける客車。
「カリーン、一度、宿まで戻る。いいか?」
私はローズの蔦を抜け出し、もぞもぞと立ち上がったカリーンに問いかける。
「ああ、驚いた。おう、そうしよう。あれは手がかりも無さそうだしな。何かあるか、ルスト? アーリ?」
「今のところ、次の襲撃は見えません」
アーリがカリーンに答える。
私はほっと息をつくと、シェルルールに速度を少し緩めるよう伝える。
全速力は錬成獣にも客車にも負担がかかる。長時間維持するのは好ましく無い。
それでも高速で夜を駆け抜けていく客車。
「あの暗殺者たちだけど、最初に爆発した一人は自分の意思っぽかったけど、あとは誰かが起動した、と思う。完全に気絶させていたよね、カリーン?」
私は自分の推測を伝える。
「ああ。ほぼ全力で殴ったぞ。それじゃあ、見ていた存在がいるという事だな」
カリーンがどかっと椅子に座ると腕を組む。
手にしたままの剣の重さで客車が揺れる。
「ああ。ロアのような遠視の魔眼は相当レアだし、暗殺者と見ていた存在が魔素のパスで繋がっていたら私が気づけたはず。だから多分、目視だ」
「例の呪術師、だな」
「ああ。ほぼ間違いないだろう。タウラは喜ぶな。手がかりがなくて意気消沈していたから」
私とカリーンが話している間に、客車が私たちの泊まっている宿へと駆け込んでいった。




