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【本編完結】辺境の錬金術師 ~今更予算ゼロの職場に戻るとかもう無理~《コミックス発売!》   作者: 御手々ぽんた
第三章

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お貴族様の世界!!

 私はグラスに入った果実酒をゆらす。


 背中を壁につけ、出来るだけ気配を消していると、不思議と目の前のきらびやかな世界が一枚の絵のように見えてきた。


 あの後、カリーンにすべてを任せてハーバフルトンに戻ろうという私の目論見は、物の見事に粉砕してしまった。


 それどころかカリーンに連れられ、参加出来るだけの夜会やら舞踏会やらにつれ回される羽目になってしまっていた。


 回していた果実酒をそっと口に含む。

 今日来ているのは、カリーンによると特に重要な夜会、だそうだ。

 白面の会と、たしかカリーンが言っていた。その名の通り、参加者は、みな一様に顔の上半分をおおう真っ白なお面をつけている。

 そういう趣向の夜会らしい。


 ぜいたくな調度品に、抑え気味の照明が雰囲気を出している。


 ──照明の魔道具はどれも一級品だな。そこら辺に飾られている美術品の方は価値がさっぱりだけど。


 私は仮面ごしに室内の魔道具を観察しながらそんなことを思っていた。

 そこへ、声がかかる。


「隣、失礼しても?」


 男性にしては高めの声。服装は男装だが、かなり中性的な雰囲気をまとっている。ただ、仮面の下の口許から察するに女性、だろう。

 そして何よりも、重心の移動、所作から見て、かなり出来そうだ。


 私は礼を失しない程度に会釈して答える。


「もちろんです。王国に」


 そう言って軽くグラスを捧げる。カリーンから教えてもらった最近流行りの挨拶だ。


「王国に。そして救国の英雄に」


 その男装の麗人もグラスを捧げる。


 ──まあ、こんな仮面じゃ、誰が誰かなんて、すぐわかるよね。とはいえ、私には相手が誰かさっぱりだけど。まあ、この夜会の参加者だから貴族以上の位なのは間違いない。動き方から見て、軍部関係か、王族を守護する近衛系の人か。


 私は相手を観察しながら考える。カリーンからは事前に、面白そうだから好きに動いて良いぞ、とのお達しだった。それだけの、巨大な貸しが王国を相手にあるから、色々と大丈夫、らしい。


 どうしたものかと、カリーンの姿を探す。当のカリーンは向こうでお偉いさん方と丁々発止のやり取りをしているのが、遠くに見える。

 その近くに控えるアーリがハラハラしているっぽいのが少し憐れだ。


 まあ、そんなカリーンの戯れ言を真に受けた訳ではないが、折角なので一つ、私も餌をまいてみることにする。


「救国の英雄と言えば、こんな話は御存じでしょうか。彼がとある呪術師を探している、と」


 私は今回、手がかりを得られなかった呪術師について、話を振ってみる。

 タウラのため、と言うのも、もちろんある。それに加え、呪術師がセイルークを執拗に狙っている様子から、個人的にも情報を得ておきたい、と言うのが偽らざる気持ちだ。


「ほう。それは面白いお話しですね。呪術師、ですか。そう言えば創世の神話に、このような言葉があります。鳩はかささぎの巣に居る、と」


 私はその続きを待つが、どうやらそれで終わりらしい。

 目の前の男装の麗人は笑みを浮かべてグラスを傾けているだけだ。


 ──全く意味がわからない。鳩にかささぎ、って呪術師になんの関係があるんだ。これが貴族特有の言い回しってやつか。まあ、適当に返しておくか。えっと、かささぎって確かカラスの仲間だったよな。とすると、巣にいる鳩を餌にでもする、とかか? そうだとしたら、なかなか賢いよな。


「かささぎの知恵は素晴らしい、とも言いますしね」


 まあ、きっとかささぎは頭が良いだろうと私は返しておく。

 目の前の男装の麗人の顔の見えている部分が、なぜか急に真っ赤になる。


「私の完敗です。さすが当代随一の錬金術師と呼ばれるお方だけはありますね。これを」


 そう言って、急に間合いを詰めてくる。鋭い踏み込み。ふわっと花の香りが広がる。

 なにかをそっと私の手の中へと滑り込ませ、そのまま立ち去っていく男装の麗人。


 私は訳がわからないまま、その後ろ姿を見送る。


「剣姫様と、だいぶ親しげだったじゃないか」


 カリーンの声。

 振り返ると、お偉いさん方とのやり取りが終わったのかカリーンとアーリが近づいてくる所だ。上気したカリーンの顔からは嬉しげな雰囲気がにじみ出ていた。

 たぶん、交渉が満足いくものだったのだろう。


「剣姫様って。今の、リリー第二王女殿下か」


 私は名前だけは聞いたことのあるこの国の王女と話していたのかと、少し不安になる。

 ちょうどいいかと、先程の王女とのやり取りをカリーンに伝え、どんな意味があったのか聞いてみる。


 なぜか私の話の途中から、口を手で隠し始めるカリーン。どうやら盛大に笑いをこらえているらしい。

 一層不安になってくる。

 私の話にアーリも首を傾げている様子から、アーリも私と同じように理解していないようだ。


「カリーン?」


「すまんすまん。あー。さすがルストだ。面白い。面白すぎる」


「そういうの、いいから。で、どういう意味なんだ?」


「鳩はかささぎの巣に居るってのは、他人の成功や地位を横取りするってことさ。呪術師の動向、そのものだな。王室も当然、呪術師の情報を掴んでますってアピールだったはずだ」


「……そんなの分かるわけないぞ」


 カリーンの解説に思わず眉間にしわがよってしまう。神話とか、私の守備範囲外なので。


「それに対するルストの返事がたまたまだろうが、皮肉になっているのさ。烏鵲(うじゃく)の智って、先の事ばかり心配して、身近な危険に気づかないって意味だ」


「あー……」


 カリーンの話で、なんとなく意味がわかってきてしまう。


「王都の人間は、みな寄生キノコにやられていたんだろう? 当然、剣姫殿下も例外じゃないって訳だ。情報通を気取っても、キノコにやられてたのを助けたのは私ですよってルストは言った事になる」


「それは──流石にまずかったよな? 不敬罪にならないか」


「いや。直接いった訳じゃない。ルストはただ、かささぎの話をしただけだろう。だから安心しろ。それより、その手の物はなんだ?」


 目ざといカリーンの指摘で、私は先程何かを渡されたのを思い出す。

 ゆっくりと手を広げてみた。




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― 新着の感想 ―
[気になる点] ステータスボタンは押した?
[一言] 男装の麗人をはじめ、着飾った方々がほんの少し前はキノコをはやしていたかと思うとなんか笑える。
[一言] なるほどかしこい!٩( ᐛ )و ←よくわかってなかった
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