後片付け!!
目の前の真っ赤な魔石を手に取る。
それが引き金になったのか、突然、空中に点滅する三角ボタンが現れる。前にも現れた、『ステータス』を表示させるボタンだ。
それが、今回は二つ。
私と、セイルークのそれぞれの顔の前に浮かんでいる。
──また、出たか。いや、これはとりあえず後にしよう。
私は魔石をリュックへしまうと、タウラ達を囲う風の壁を消す。
こちらへと駆け寄ってくる三人。
「ルスト師! ご無事ですか? 今のは?」
アーリがセイルークを見ながらたずねてくる。
「私は大丈夫。アーリ達も問題無さそうだね。今のはたぶん、セイルークが原初魔法で手伝ってくれたんだと思う。キノコに寄生されていた人たちの様子を見てきてくれるかな?」
私は部屋の入口すぐそこまで迫っていた元キノコ人達の方を見ながらアーリとロアへお願いする。
元キノコ人達はすぐそこまで迫っていたようだ。入口近くで倒れている人の姿が、多数見える。
風の壁に突っ込んで被害が出なかった事に内心ほっとする。
顔を見合わせるアーリとロア。
「わかりました。ただ、終わりましたら、お一人で行かれたことは、きちんとお話しさせて頂きます」
「いくらルスト師でも、あれは流石に無謀。心配した」
「──わかったよ。覚悟しとく」
私は苦笑しながら、二人に返事をする。
「タウラは──」
「私は呪術師の手がかりを探してみる」
「うん、気をつけて。あとで手伝うよ」
そう言って部屋の中を探索し始めるタウラから視線を外すと、私はスクロールを回収していく。そのうちの一つ、ローズを顕現するスクロールを再び展開、発動させる。
再び現れるローズの蔦。
特にそのうちの3本は、蔦先がぼろぼろだ。
──ローズにここまでのダメージを与えるか。リハルザム本体の侵食してくる力は、かなりの物だったみたいだ。やはり、タウラ達を近づけなくて良かった。私もブラッディポーションを作っていなかったら、危なかったかもしれないな。
私は蔦先を調べながらローズに謝る。
「ローズ、すまなかった。一番損な役回りをさせた」
ふるふると、ぼろぼろの蔦先を振って、良いですよ伝えてくるローズ。
「元に戻すのは、難しいか。剪定するよ?」
ひゅっと蔦が縮むローズ。そういえばローズは剪定を余り好きではなかったなと思い出す。
私は、さっと特別製のハサミと、魔素のほとんど含まれていない培養液の入った壺、清潔な布を取り出す。
恐る恐る培養液の中へと蔦先を入れるローズ。私はちょきんちょきんと、手早くぼろぼろの部分を切り落とす。すぐに布に培養液を浸し、手早く切り口を覆う。
《固着》のスクロールを布ごと覆うように巻きつけ、包帯がわりに固定させる。
「はい、終わったよ」
さっとスクロールに引っ込むローズの蔦。
私は苦笑い半分、すまない気持ち半分で、スクロールをしまう。
私がローズの手当てを終えた頃合いで、周囲の倒れた人々が起き始める。
そこへ、ちょうどアーリとロアも戻ってくる。
「確認した。みな、寄生キノコは無くなっていた」
「ルスト師、外はまだですが、地下内で確認した範囲では成功のようです! 流石です。ただ、数名、転倒時に怪我をした人がいるようです」
「それは良かった。怪我人には、ポーションを提供していこう。それと、安心するのは外も確認してからにしようか。何にしても、今回の事は皆の助力のお陰だ。何よりセイルークの手助けがなければ、失敗していた気がするしね」
私の肩で、くわぁーとあくびをしているセイルークを撫でながら伝える。
セイルークの原初魔法で引き起こされた事象。表示されていた文字はほとんど読み取れなかったが、いくつか見えた文字からも、その自分の推測が間違いない確信があった。
「ルスト、そなたがこの国を救ったのだ。そこはもっと誇って良い」
タウラも戻ってくる。アーリとの会話が聞こえたようだ。
「タウラ、手がかりは……。その様子だと無かったか」
「ああ、残念ながらな。とりあえず、ここから、脱出しよう。目が覚めた人たちを連れて」
「ああ、それじゃあタウラ、先導してくれ。私は治療に回る。ロア、一緒に頼む」
タウラが、目覚めた人々に向け、声を上げる。徐々に動き出す人々。
こういう時はタウラの騎士の位がよく効くようだ。
私はロアが透視で教えてくれた怪我人を中心に、残ったポーションで治療して回っていった。




