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【本編完結】辺境の錬金術師 ~今更予算ゼロの職場に戻るとかもう無理~《コミックス発売!》   作者: 御手々ぽんた
第二章

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菌糸粘体!!

 ふさふさとした、真っ白な毛。


 たぶん、キノコの菌糸なのだろう。床に接するリハルザムの本体部分から、一斉に菌糸が生える。短髪の男性の髪の長さぐらいまで、菌糸が伸びる。


 その菌糸の部分が持ち上がるようにして、粘体がうにうにと動く。

 四つ足の動物の形をとり、分離する粘体。その大きさは子犬ぐらい。


 菌糸で覆われた部分がまるで頭部のように見える。

 人の頭と同じくらいの大きさの頭部。

 そして子犬ぐらいの体。


 歪だ。


 そんな髪だけの四つ足粘体が、襲いかかってくる。

 歯茎粘体を狩り尽くしたタウラとアーリへ。


 四つ足のためか、歯茎粘体よりも動きが素早い。


「これは、髪を斬ればいいのか」


 タウラが首をかしげながら、飛びかかってきた粘体へと剣を振るう。切っ先が頭部の菌糸を切り裂く。

 しかし、動き続ける粘体。

 落ち着いて、身をかわすタウラ。


「その粘体、本体のキノコは、後頭部の髪の中! サイズはかなり小さい」


 ロアが私の側から、タウラへと声をかける。

 ちらりとロアを見ると、魔素のきらめきが見える。遠視と透視を両目で同時使用しているようだ。


「ありがとう。ではこれで、どうかな」


 タウラがまるで、敵の頭部を千切りにするかのように、手にした剣を振るう。

 そのどれかの剣撃が菌糸に隠された本体を捉えたようだ。ドロリと溶け、形を失う粘体。


「ふう、なかなか厄介だな。小さいし速い。そして弱点が見えない。しかしまあ、細切れにすれば問題ない」


「私は苦手です。ロア、交代してください」


「うん」


 アーリがロアと入れ替わって、私の近くへ。

 ロアは、透視の魔眼だけを使いながら、次々に槍を繰り出し、敵の髪の毛を散らしていく。


「お、おでの、髪が! よくもよくもっ! もっとだ! もっと、食べ物だっ。おい、誰かいないのかっ」


 自分の粘体が次々にやられているのを見て、リハルザムが何か騒いでいる。


 ──ああやって、粘体を分離すると、本体の体が小さくなるのか。


 私は騒いでいるリハルザムを、観察していた。

 良く見てみると、最初部屋の壁一面を覆っていたリハルザムの本体が、今では天井との間に隙間が見える。


 ──なるほど。このまま粘体を分離させ続けるのが良いのか。でも、何で本体は動かないんだろう。……もしかして、食べ過ぎで動けない?


 周囲のキノコ人は全て私のラビットポーションで浄化しているので、リハルザムがいくら騒ごうが、当然誰も来ない。

 指示出ししていた巨漢の男も、キノコを失い、どこかそこらへんで気絶しているはずだ。


 それでも騒ぎ続けるリハルザム。醜悪な姿になっていることも含め、少し哀れにも見えてくるが、私は気を引きしめる。


 そもそも、魔族とはいえ、成り立てのせいなのか、相手は正気を失っている。それもあって、倒すだけならそこまで苦労せずに倒せそうだ。どちらかといえば人の時のリハルザムの方が、厄介だったとすら思える。


 ──しかし、国中に蔓延している寄生キノコを一網打尽にする必要があるんだよなー。まあ、そのために錬成したのが、この特製のブラッディポーション。


 私はベルトに固定したブラッディポーションのボトルに触れながら、動くタイミングをはかる。


 ──原初魔法の理に属する魔族なら、本体と眷属の間には、原初魔法によるパスが繋がっている。この原初魔法と錬金術のハイブリッド製のブラッディポーションをリハルザムのコアに打ち込めば、そのパスを通じて、リハルザムの眷属たる国中の寄生キノコを浄化出来る、はず。問題はブラッディポーションが一本しかないこと。


「どう考えても、万全を期すべきだな」


 思わず呟いてしまう。どうかしましたかとこちらを見てくるアーリに手を振って何でもないと謝る。


 ──哀れだが、このまま戦って、その体をもう少し削らせて貰おう。


 そうしているうちに、いよいよ目減りしてくるリハルザムの本体。ついに壁の半分、人の身長の倍程度の大きさまで、その体が減ってきた。


 私は決着をつけるべく、動き出す。








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