ウサギ投入!
「男、以外は殺していい! お前ら、やれ!」
そんな掛け声で、ぼーと突っ立っていただけのキノコ人達が慌ただしく動きだす。
手にした皿を振り上げ、こちらへと向かってくるキノコ人達。
声をあげたのは誰かと視線を巡らす。
どうも、あの巨漢の髭もじゃが指示を出しているようだ。
「あの男は殺すな! リハルザム師の獲物だ!」
──いや、獲物じゃないんだけど。それにアーリ達が負けるとは思わないけど。でもまあ、この数は確かに脅威か。まずは一手、対応しておこう。
部屋の入り口に陣取っている私たちだが、当然通路の方にも皿を抱えたキノコ人はいる。
「歯茎粘体は任せろ! ロアはルストを頼む」
タウラが敵の歯だけの粘体を、いつの間にか名付けている。
それはさておき、デデン達との戦いを教訓にしている様子が見えるなと、感心する。
前方から迫る歯茎粘体をアーリとタウラは余裕で対応している。人型とはいえ、攻撃が噛みつきだけと単純で、かつ攻撃するときに弱点が丸出しなのだ。二人の敵ではない。
その間に、こちらへと戻って来たロア。
そのまま、まっすぐに突き出された槍。
私の目の前を、槍先が通りすぎ頭上で響く、陶器の割れる音。
ロアの槍先が、キノコ人の振り下ろしてきたお皿を割って防いでくれたようだ。
運良く、食事をリハルザムに提供済みの空の皿だったようだ。
すぐにそのキノコ人から生えたキノコは、ロアの槍先で貫かれ浄化されていく。
そのまま、周囲のキノコ人の寄生キノコを次々とポーションをまとった槍で貫き、寄生から解放していくロア。
「ありがとう! ロア」
「うん」
私はお礼を伝えながら、リュックから、壺を取り出す。前回は作るのが間に合わなかった、魔道具の一つ。
収納拡張済みの壺だ。
そう、私の愛用しているリュックサックと同程度まで、拡張済みだ。
この中には当然ポーションがつまっている。王都全てのキノコ人を浄化するには当然足りないが、ここにいる人数なら余裕の量だ。
私はポケットに忍ばせていたポーションラビッツの魔石を一つ取り出すと、壺へと投入する。
ぽこぽこと、壺の縁から顔をだす、ポーションラビット達。
縁に前足をかけ、よっこいしょと体を持ち上げると、そのままチョロチョロと私たちの足元を駆け抜けていく。
次々と顔を出すポーションラビット。あっという間に床が埋まるぐらいまで溢れ、そのままキノコ人たちへとその身を投げ出すようにして浄化していく。
「ああ、あっちは相性悪いか」
いく匹か、ポーションラビットが歯茎粘体へととりつく。しかし、粘体自体にはポーションの効果がないのか、びくともしない歯茎粘体。逆に、その粘体の腕で掴まれ、ポーションラビットの体が引きちぎられてしまう。
バシャッと音を立て、そのポーションラビットはポーションへと戻ってしまった。
運良く弱点たる歯に当たらないと、ポーションラビットでは歯茎粘体の対応は難しそうだ。
あらかたキノコ人が浄化されたタイミングで、私はポーションラビットの魔石を壺から取り出す。
戦況を確認しようと前を向いた時だった。リハルザムの体から、今度は違う顔の部位だけ浮かんだ粘体が、分離してこちらへと襲いかかってきた。




