総力戦!!
「る、すと……?」
巨大な部屋の半分を覆い、その天井にまで届かんばかりの大きさのどろどろの塊。そこに浮かぶのは、これも巨大な顔。明らかに人間の大きさではない。
よく見ると無数のキノコが、その顔かたちを作りあげている。
リハルザムの顔だ。
そのキノコで出来た醜悪な唇から、耳障りな高笑いが溢れだす。
「あぁ、あぁ、あは。ぐふはははっ、ぐふはっっ。うそだっったじゃないか。嘘だと、しんじ、ていたぞ! るす、と、るす、と、るす、と。おまえ。生きてる、な? いきて、いるよな。おお。これで、殺せる。殺せるぞ! おまえを殺せるっ」
興奮のためか、くるくると回る顔。訳のわからない事を叫びなから、どろどろの粘液の中を回転し、どんどんとこちらへとリハルザムのキノコ顔が近づいてくる。
私が最後に見たリハルザムは、キノコスムージーまみれでよたよたと逃げていった時の姿。その時とはすっかり様変わりしていた。
リハルザムのキノコ顔が粘体の中を縦横無尽に動き回り、妄言を撒き散らしている間も、部屋の中にいるキノコ人達は、料理の盛られた皿を傾けている。料理が、リハルザムの体の粘体へと落ちていく。
投下した先、粘体の中には、まるで人の歯のように並んだ、真っ黒なキノコが並ぶ。歯もどきだけがいくつも粘体の中で落下してきた食べ物を、そしゃくしている。
「本当に、リハルザムなのか。キノコ汁をかぶりすぎて、ついにキノコの魔族になってしまったのか……?」
私が思わず呟くと、敏感に反応するリハルザム。
「おで、は、にん、げんだぁーーーーっ! 殺す! 殺す! 殺す! る、すと、殺す!」
食べ物をそしゃくしていた沢山のキノコの歯が、まるで憤慨したかのようにそしゃく中の食べ物を撒き散らす。粘体から飛び出す、どろどろになったものが壁や床を汚す。
リハルザムの粘体の体から、そのキノコの歯が人、一人分ぐらいの大きさの粘体をまとって飛び出す。
人型をとる粘体。その人で言えば頭部に当たる部分の粘体の表面に生えたキノコの歯。
それをガチガチと噛み鳴らしながら、こちらへと近づいてくる。
「気をつけて下さい! あの歯を全て破壊しないと動き続けます!」
未来視の魔眼を発動しながら、アーリが、皆に警告する。その警告で、皆が動き出す。部屋の入り口付近にて、迎撃のための布陣を作る。
そこへ襲いかかってくる、歯の浮いた粘体。
「弱点をさらしているのは、愚か」
ロアはそう呟きながら、槍先で的確に一つ一つ、キノコの歯を貫いていく。全ての歯を貫かれた粘体がドロリと形を失い、溶け落ちる。
「繊細な斬撃がいるのか。腕が鳴るな」
何故か楽しげなタウラ。その目にも止まらぬ剣閃は、一閃で上の歯をまとめて切断。次の一閃で、下の歯を全て切断していく。
こうして、リハルザムとの総力戦が、始まった。




