最後の確認は大事!!
先を急ぐ私たち。地下通路に響く、私たちの足音。
三つ首の襲撃のあと、危惧していた追加の攻撃を仕掛けてくる敵は結局現れなかった。
そうして進む私たちの横で、皿を掲げたキノコ人達の列がだんだんとつまってくる。ついには行列となって立ち止まり、並び始めるキノコ人たち。
「近い、な」
皆も当然、それに気がつく。何かが、もうすぐそこに居ると。
皆、足が止まる。他よりは光が残っている照明装置の下に、自然と集まってくる。
皆が私の方を見てくる。
──あー。この中で準備がいるのは私だけか。うーん、どのスクロールを用意しておくか……
私はそんなことを考えながら、ハーバフルトンを出発する前にカリーンとハロルドとかわした会話を思い出していた。
「ルスト師?」
「あ、ああ。待たせてすまない。みんな、ポーションの残量は大丈夫だね。ロア、アーリ。何か見える?」
「ダメ」「私もです。でも、だからこそ魔族が居ると思います」
私は無言でうなずく。確かに似た話を私もカリーンから聞いた。魔族の周りでは不思議な事が起こるぞと。ハロルドも、王都で発見した魔族らしき個体は、炎に属性変化した魔法銃の弾が急に効かなくなったと言っていた。
私はアーリたちと話しながら、スクロールを適当に展開していく。敵の能力の詳細がわからないので、勘だ。
それでも、手数は多い方が良いだろう。フヨフヨと、いくつものスクロールが私の周りを漂う。
次に、メインとなるポーションのボトルを指先で撫でていく。
腰に巻いた、ポーション固定用の専用ベルトにちゃんと把握している順番に並んでいるのを指差し確認。
──試しに、一つ。
中指で固定されたポーションのボトルの底を押し上げる。ボトルが綺麗に手のひらの中へと滑り込んでくる。
──うん。スムーズに取り出せる。
くるりと手のひらのなかでボトルを回し、親指の爪でそのままボトルの口を開けられるのを確認。再度手のなかでくるりとポーションを回し、親指と人指し指の指先で挟んで固定。
その状態で二本目のポーションを中指で押し出し、薬指と小指でひっかけるようにして、取り出す。
そのまま、それぞれ元の場所へポーションを差し戻す。
──魔導紋と連動する場所のポーションの入れ換えも問題なし、と。
最後に今回のために準備した細々とした魔道具をチェック。こちらは形状が様々なのでリュックから取り出すしかない。一つだけ、本命をポケットに忍ばせておく。
「よし、こっちは大丈夫。行こうか」
私は準備が出来たことを告げる。
何故か皆、じーと私の手元を見ている。
「無駄に器用」
「いや、面白いじゃないか。ボトルがくるくるしていたぞ」
ロアの辛口にタウラが面白そうに反論してくれる。
普段だとロアをたしなめるアーリは、今回はふいっと私から顔を反らす。
「さあ、行きましょう」
「アーリ姉様……」
何か言いたげなロア。しかし、アーリはそのまま歩き始める。
「ロア! 行きますよ」
「……うん」
ロアとアーリを先頭に、再び進み始める。
やがて見えてくる、薄暗い通路に、煌々と光が差し込む場所。皆の顔が緊張に引き締まるのが、その光で浮かび上がる。
通路の終わり、そこは大きな大きな部屋だった。
そこに鎮座する、部屋の大きさに負けないぐらいの、大きな何か。
思わず私はそれを見て、呟いてしまう。
「──リハルザム、か」




