原初魔法を参考にしよう!!
熱い。
腕から入り込んだ寄生キノコから抽出した成分が、私の体を内側から焼くようだ。
それが体内に事前に飲んであった希釈ポーションと、血管内で反応しているのが感じられるよう。
手から力が抜ける。ナイフが滑り落ちる。
「ルスト師!」
駆け寄ってくるアーリ達に、私は手をあげ、止まるよう告げる。
「ストップ! まだ大丈夫、だから。先に、そのナイフの刃にポーションを」
私は地面に横たわるナイフを指差す。
ロアがベルトからポーションのボトルを取り出すと、逆さにする。刃に、ポーションがどばどばと豪快にかかる。
黒い煙のようなものが一瞬ナイフの刃から上がるが、すぐに収まる。
「ルスト師、一体どうして?! 何をしているのですか」
アーリが、いつになくおろおろとしている。
「説明、しとけば良かったね。申し訳ない。これが代替案、なんだ。原初魔術において、最も活用されていたのは血液、だからね」
「一体、どんな案だと言うのですか! 寄生されちゃいますよ! 腕には怪我だって!」
「腕は、大丈夫。希釈したポーションを飲んでいたから。ほら、もう血も止まっている」
私はナイフを刺した所を見せる。まだ傷は生々しいが、ポーションの効能でゆっくりゆっくり、傷が塞がっていく様子が見える。
「それで、代替案というのは結局なんだったのだ、ルスト」
タウラが、心配そうなアーリにかわって聞いてくる。
「最初のプランでは、私は魔石を核として使わない、特殊な錬成獣を作るつもり、だったんだ。個々が微小な存在で、寄生キノコの構成物を横取りして簡単に自己増殖出来る。そんな錬成獣を作りたかった」
「確か、錬成獣の作成に必須の魔石は、モンスターからドロップした状態から、加工しないでそのまま使う必要があるんでしたか? だとすると、そんなに小さな魔石は存在しないでしょうし……」
アーリはようやく落ち着いたのか、錬金術の常識的な知識を呟くように口にする。
「しかし、なんでまた、そんなものを? 魔族を倒すのに役立つのか?」
不思議そうな顔をするタウラ。
「今回、この国全体へと広がっている寄生キノコ、本体の魔族をただ倒しても、消えるとは限らないだろう?」
「うーん。そういうものなのか?」
「たぶん、だけど。そのための諸々さ」
私はそれ伝えながら、ゆっくりとその場に座り込む。
熱のせいか、少し立っているのが辛い。
「ふむ。そういうことで、私に相談した例の件へとなったのか」
「そう。タウラの託宣で、理とやらに触れている、と言われたやつだ。それで、代替案が今やっている、これだ」
私は震える指でスクロール数本を追加で《展開》する。
次に空のボトルと、新しいナイフを取り出す。完全なる純水で洗浄済みの物だ。
「ルスト、無茶をするなよ!」
タウラの心配そうな顔に、私は手だけ振って答える。
「大丈夫さ。《純化》《解放》」
私はスクロールの発動を確認すると、新しいナイフを治りかけの傷へと再び突き刺す。
開いた傷口から再び溢れ出す血液。溢れ出すそばから、《純化》でしっかりと状態を固定する。
私の腕から滴る血液を、浮かせた空のボトルで受け止める。
「よし、完成、だ」
私は急いでボトルに封をする。そのままゆっくりとかざして状態を確認する。
透明のボトルに半分は、血液が入れられていた。
ほっとしながら、ポーションを取り出して、一気に飲み干す。体内から、キノコの成分が急速に浄化されていった。




