実験しよう!!
「彼で、トマ村の村人は最後です。言われた通り、寄生キノコをまだ浄化していません。お気をつけて」
「ありがとう、二人とも。ああ……ザーレさん、か」
アーリとロアが最後につれてきたのは、トマ村の村人のなかでは多分一番よく顔を会わせていた、ザーレだった。
その顔の半分が黒いキノコに覆われ、縄で拘束されたザーレ。彼は、それでも私たちに襲いかかろうと、もがいている。
どうも寄生された人によって、人間性がどれくらい残っているかはバラバラのようだ。確証は無いのだが、人体のどの部分に寄生キノコが生えているかが関係しているのではと思っている。それも私の直感に過ぎないのだが。
今、私たちはトマ村の村長の家の前にいた。
トマ村に突入してからのアーリ達の活躍は素晴らしいものだった。ポーションをまとわせた槍で、タウラは剣で、次々と村人に寄生したキノコを浄化していく三人。
一振りごとに刃先から飛ぶ、ポーションの雫。それは剣と槍の動きの軌跡にそって、キラキラと輝いていた。
そう、まるで華麗な舞を見ているかのようだった。そんな訳で、私が見とれている間に、あっという間にトマ村は制圧されてしまったのだった。
「どうやら、触れるだけでは、このキノコは感染はしないようだ」
別方向から、タウラが声をかけてくる。彼女は浄化が済み気絶してしまった村人を、運んで来てくれていた。
「タウラも、ありがとう。さすがの剣技だったね」
「何、これぐらい大したことは無い。もともと武の心得の無いものたちだからな。怪我をさせないように気をつけても、軽いものだ。しかもルストのおかげで、ポーションが剣を覆っているからな。ついた傷もすぐに治るんだろう?」
「ああ、そのはずだけど。ただ、三人の技量が高すぎでそこは誰も確認出来てない」
そう私はタウラに答える。三人とも巧みな武器さばきで、村人たちに怪我一つさせてなかったのだ。それどころか、三人とも、最後の方はいかにポーションを節約して剣や槍を振るうかを競っていたふしがあった。
「──それで、ザーレはどうするのだ。出来れば早めに寄生キノコを浄化してやって欲しいのだが」
タウラは拘束されたザーレを見て告げる。
「ああ。すぐすむよ。皆、まだ魔導紋は消えていないね」
私は三人が頷くのを確認すると、前にセイルークと契約した時に使ったツインラインホーンのナイフと、一本のスクロールを取り出す。
スクロールを展開し、次にナイフでザーレの顔から生えたキノコを一部削りとる。
「《純化》」
そのまま刃先にのせたキノコの一部へスクロールを発動、キノコに含まれる寄生の因子だけを抽出する。
それ以外の部分がドロリと溶け出し、ナイフに刻まれた溝にそって流れ落ちていく。そして刃先に残ったのは真っ黒な魔素のような塊。
私はナイフを落とさないように、気を付けながら、特製の希釈したポーションをリュックから取り出し、一気に飲み干す。
「──ルスト師、まさか!」
「もし私からキノコが生えたら、よろしくね」
私は三人にそう告げると、ナイフを自らの二の腕に突き立てた。




