魔導紋!!
「《展開》」
私はスクロールを展開する。
ロアが利き手を私の方へ差し出してくる。
私はトマ村へと突入する直前で、皆に仕掛けを施している所だった。今回の王都奪還のために準備した魔導具とスクロールのうちの一つだ。
「《魔導紋人体付与》ロア《流水膜》」
展開しているスクロールに手のひらを置くロア。
そのロアの手を透過して、スクロールから魔素の光が突き抜けていく。その光が通った跡に沿って、銀色のアザのようなものが手の甲に描かれていく。
「はい、完成。付与された魔導紋の効果時間はあまり長く無いから気をつけて。後、このベルトに差したポーションが対象だから」
私はポーションをセットした状態のベルトを皆に示す。
スクロールから手を離したロアは手をかざしながら数回閉じたり開いたりしていた。
不思議そうな表情。
「こんなの、初めて。でも、何も感じなかった。これは魔導回路?」
私はロアにもわかるように、魔導紋をなんと説明するか悩む。
「まあ、魔導回路の一種だね。人の体に直接書き込む場合の、魔導回路を魔導紋と名付けたんだ」
「さすがルスト師ですね。こんな新技術まで開発されるなんて」
アーリが答えてくれる横で、ロアはマイペースに私が持ったままのベルトを指差す。
「それで、そのベルトは腰に巻くの?」
「ああ、どこでも大丈夫だが長さは腰か肩掛けを想定している」
「うん」
そういってなぜか両腕を真横に広げるロア。
どうやら、つけてといっているようだ。
私は一瞬動きが止まる。まあ、当然のためらいだろう。
ロアは腕を広げたまま、相変わらず無表情。何を考えているのか、さっぱり読み取れない。ただ、その無言の圧に、私は負ける。
「──はい」
私はアーリにベルトを押し付けるようにして、手渡す。
「はい、次はタウラ。手を出して」
「おっ、ああ。よろしく頼む」
タウラはアーリがロアにベルトを巻くところを興味深そうに見ていたが、視線を私に戻す。
手を差し出してくる。
そうして、同じようにしてタウラに流水膜の魔導紋を付与した。
少し顔をしかめて、手の甲の魔導紋を眺めるタウラ。
「ちょっと、呪術師の呪いを思い出すな」
そう、あえて口に出すタウラ。
「ああ、言われてみれば、確かに……」
私はタウラに謝るか悩む。しかし、その間にもタウラは私の用意したベルトを積極的に身に付けていく。
その間に、アーリにも無事に流水膜の魔導紋を付与した。
「さて、皆武器を手にしてください。あ、手だけど、滑らないようにね。」
私はタウラたちにそう、声をかける。
各々が自身の武器を構える。
「うげぇ、何この感触」「うわっ」「なるほどね」
皆の手にした武器にうっすらとまとわり付くものがある。ポーションだ。
魔導紋の効果だが、腰につけたポーションを利用して各々の武器にポーションをまとわせているのだ。
こうすることで、寄生キノコに操られた敵を攻撃しても、ポーションで回復。ついでに武器での攻撃で、キノコを浄化出来るようになっている。
そうした一通りの準備が、終わる。
「あ、そうだ。これ、お守りの新しいやつ。はい、アーリ。こっちはタウラに。ロアはまだ大丈夫だよね。さて、それじゃあそろそろ」
お守りの追加だけ渡すと、私たちはトマ村へと一気に乗り込んでいった。




