カリーンの悪癖!!
「最後にルスト師。まずは今回の襲撃の撃退、大変見事だ。自軍だけではなく、操られた敵を正気に戻したルスト師の錬金術は、一軍を凌駕する戦果をあげた」
カリーンが真面目な顔をして、そう持ち上げてくる。
「お褒め頂き、ありがとうございます」
私も真面目な顔で無難に返答する。
「さて、それではルスト師の意見を聞きたい。王都奪還において、ルスト師のポーションは必須となるだろう。量産は可能か?」
私は少し目をつむり、考える。
「もし王都のほぼ全ての民に対してポーションを投与すると想定すると、難しいですね。ハーバフルトンで手にしにくい薬草があります。国内の流通が死んでいるとなると、在庫を全て放出しても足りません」
「なるほど。するとやはり大軍での即時出兵は現実的ではないと。薬草がとれる地を先に奪還するか、もしくは──」
カリーンの目が輝く。
「カリーン様」一応、釘を刺そうと私は声をかける。
「なんだ?」
「少数精鋭で王都へ向かうにしても、カリーン様はお留守番ですよ」
「なっ! なぜだっ! 魔族殺しの二つ名は伊達ではないぞ!」
「いえ、それは知ってますが。カリーン様は、暴れたいだけですよね?」
「そ、そんなこと、あるわけなかろう! 騎士として王都に異変あらば一番に駆けつけるのが当たり前だ」
私は言い訳がましいカリーンを冷めた目で見ると、ちらりとアーリに視線を送る。軽くうなづくアーリ。
「カリーン様。連日の書類仕事、大変頑張られておいでですね」とアーリがカリーンに近づきながら話しかける。
「そ、そうか。そうだな?」
「せっかくの戦闘のチャンスも、今回は出番が無くて、さぞやがっかりされた事でしょう」
「お、おう。いや。いやいや、そんな事は微塵も──」
「しかし、カリーン様の身はすでにあなた様一人のものでは無いのです。私達を導けるのはカリーン様、だけなのです。ハーバフルトンを。そしてこのアドミラル領の全ての民があなた様の導きを必要としているのです」とアーリが片膝をつく。
「まあ、補足すると、国中に敵の手が回っているなら、この国でカリーン様が今一番位の高い貴族って可能性すらありますしね」と、私は笑顔で言い足す。
ついでに、うまくアーリが道筋をつけてくれたことへ、感謝の目配せを送る。私達のトップたるカリーンが、先頭に立って突撃するという悪夢のような事態は避けられそうだ。
「はぁ。わかったよ。それで、そなたの意見は?」
がっくりと肩を落としたカリーン。よほど戦いたかったようだ。なげやりな様子で片手を振りながら、最初の質問に戻る。
「どうぞ、私に王都奪還をお命じ下さい。リボンがけして、カリーン様の手に王都をプレゼント致しましょう」
私は少しカリーンをいじめすぎたかと反省し、せめてものお詫びとして、そんな大見得を切ってみた。
どうにか出来そうな案を、内心こねくりまわしながら。




