技術供与をしよう!!
「あー。魔素抜きですか……」
さっきまでの元気はどこへやら、急にテンションの落ちた様子のシェルルール。
走ってカゲロ機関の建物へと向かったコトを見送り、私が残ったポーションラビットを集めていると、ハルハマーがからかうようにシェルルールに声をかける。
「なんだ、シェルルールの嬢ちゃんは魔素抜きが嫌いなのか?」
「いえ、大事な仕事だというのはわかってますよ。でも、地味だし。時間もかかるし。パイプの魔導具を地面に刺して、ずーーーーっと魔素を流すだけで、なんの代わり映えも無いんですよ! それを一日中! そして、次の日はその少し隣で、同じことの繰り返し! 憂うつにもなりますよー」
身ぶり手振りで、激しく主張しているシェルルール。私は残ったポーションラビットを樽に帰らせながら、こんな一面もあるのかと少し不思議な気持ちで二人のやり取りを眺める。
──まあ、一般的なやり方でやれば、そうなんだけどね。皆には準備だけ手伝ってもらって、魔素抜き自体は、私がちゃちゃっとやっちゃうかな。みんながそこまで嫌がるなら。
「あー。シェルルール? もし気がすすまなかっ──」と私は声をかけようとする。
「やります! 魔素抜き大好きです!」
ころっと表情を変え、こちらを向くシェルルール。その顔は、なぜかやる気に満ちている。
「え? あ、うん。よろしく……」
──あれ? やる気みたい? まあいいか。それなら……。
私がそんなことを考えていると、カゲロ機関のみんながコトに連れられやってきた。
◇◆
「《展開》《開始》魔素転換」
くるくると広がった球根制御用のスクロールの上に、魔法陣が現れる。それに呼応するように、地面に手分けして埋めた球根の上にも、魔法陣が現れる。
魔法陣がゆっくりと回転を始める。
その回転に合わせて、魔素が揺らめくようにして球根に生えたパイプから空気中に大量に放出されていく。
私の作ったポーションはとにかく魔素の含有率が高い。そのせいか、普段の魔素抜き以上の勢いで、魔素が大気中へと放出されているようだ。
シェルルールをはじめ、カゲロ機関の錬金術師から、どよめきが起こる。
「まさかこんな!」「え、一人でこの範囲をっ。信じられない」「凄い! 魔素の放出量が既存の魔導具とは段違いだぞ、これ」
魔素抜き用の球根を食い入るように見つめるカゲロ機関のみんな。
彼らには折角なのでやり方を教えておこうと球根を植えるのも手伝って貰ったのだ。まあ、穴を掘る部分は、ほとんどヒポポブラザーズにお願いしたのだが。
でもやはり、自分で手を動かして覚えた方が身に付く。
「さて、みんな。自分の持ち場へ。貸し出した球根制御用のスクロールを展開してみて」
私は興奮覚めやらない錬金術師達に指示を出す。
一番に飛び出したのはやはりシェルルールだった。
「ルスト、そこの制御かわるぜ」と、ハルハマー師。
ひょいっと私が展開したままのスクロールを、そのまま展開状態を維持して引き継いでくれる。
──やるな、さすがハルハマー師。魔素の同調から上書き、そして制御。すべて完璧だ。そして私が皆にアドバイス出来るようにかわってくれる気遣いも、ありがたい。
「ありがとうございます、ハルハマー師。それではちょっと巡回してきますね」
私はハルハマーにお礼を言い残し、カゲロ機関のみんなの魔素抜きの様子を確認しに、歩き始めた。




