魔晶石を作ろう!!
魔素を大量に含んだカゲロの実が、竜巻の中心でくるくると回転し始める。
この《研磨》のスクロールは当然、ただの竜巻を作るものではない。その本質は竜巻に含まれる微細な粒子。金剛石の粉の濃度を自在に変更し、竜巻の中での回転速度を操作することで、細かい調整が出来るのだ。
金剛石の粉の濃度を上げる。
カゲロの木からの木漏れ日を反射し、竜巻がキラキラと光り始める。
村人達からも、それが見え、歓声が上がる。
「キレイ……」「うわー」「なにあれ──」
女性陣の反応が顕著だ。やはりどこの地域でも光り物は女性受けするらしい。
魔晶石の規格は三つの項目がある。サイズ、出力、容量、だ。
特にサイズと出力が合わないと使い物にならない。
そして、出力は魔晶石のカッティングによって決まる。
幸運なことに、旧型の魔晶石の規格はバッチリ覚えている。
私は小さくなりすぎないように気を配りながら、魔素を大量に含んだカゲロの実を竜巻の中でカッティングしていく。
「よし、こんなものか。《定着》」三本目のスクロールを発動させる。
私は魔素をカゲロの実へと完全に封じ込める。
竜巻を消すと、さっと手を伸ばす。
私の手の上には、多面体にカットされ、中で真っ黒なモヤが渦巻く魔晶石が一つ。
「村長さん、どうぞ。そちらのH-32型魔法銃で試し撃ちしてみてください」
私は魔晶石を差し出す。
震える手でそれを受け取り、魔法銃へセットする村長。
緊張した面持ちで、その様子を見守る村人達。
村長が空に向けて魔法銃を構え、引き金を引く。
魔素が弾へと変換され、一条の真っ黒な光が空へと走る。
「うおおおお!」「本当に魔晶石だ!」「これでもう怯えて暮らさなくて……」
村人達の歓声が爆発した。
──こんなに喜んでもらえると、やりがいあるなー。
そんな事を思いながら、呟く。
「さて、サクサク作りますかー」と、私は喜ぶ村人達を見ながら、先程の三本のスクロールをあと二セット、あと《解放》のスクロールを一本、リュックサックから取り出す。
そして、計十本、スクロールを展開させる。
そのまま三個同時進行で、カゲロの実をサクサク魔晶石へと錬成していく。
いつの間にか、村人達の歓声が止んでいる。
何故か皆、ポカンとした顔をして私の事を見ていた。




