こっそり仕込んだ隠し機能!!
「ハロルド! 眼帯、外しておけ」私はハロルドの背中に声をかける。
「ああ、そうだな」そのまま眼帯を外し、前方にいるリリィを見つめながら後ろに投げるハロルド。
全くこちらを見ていないにも関わらず、眼帯はちょうど私の手元へと投げ込まれてくる。
「ルスト師。ハロルドさんは軍部所属とはいえ、事務職なのでは?」
アーリが私に小声できいてくる。ハロルドが少し離れたタイミングなのは気を使ったのだろう。
その気遣いをぶち壊しにする大声で、カリーンがこたえる。
「ああ、たしかに経理関係の仕事だぞ。なんだ、心配しているのか? あいつ、それなりにやるぞ」
「カリーン様。それもありますがあのリリィと言うハロルドさんの部下は? 全く経理系のお仕事をされているようには見えません」
「昨晩聞いた話だと、王都の混乱と人手不足で指揮に駆り出されたと言っていたから、その部下なんじゃないかな」
私が今度はアーリに答える。
なぜかちらっと顔を見合せるカリーンとアーリ。
「始まるようだ。ルスト、私はいざとなったら宣言通り、出るからな」
私は一瞬感じた違和感も、目の前のハロルドとリリィの戦いでうやむやになる。
「もちろん、止めないさ。でも、大丈夫だと思うけど」
私は二人の戦いを眺めながらカリーンに答える。
リリィの高速で繰り出される双剣の連撃。
ハロルドはそれを片手で構えた剣で受け流している。
ハロルドが一歩踏み出しながら、剣を振り上げる。
リリィは打ち込んだ剣撃で、すくわれるように体が持ち上げられてしまう。わずかに生まれたリリィのその隙を狙い、ハロルドより放たれる魔法弾。
それは、ハロルドが構えた拳銃型の魔法銃から発射されたもの。
驚異的な身体能力で、魔法弾を双剣で切り裂くリリィ。
ハロルドとリリィの間合いが、広がる。
地面に剣先を突き刺し、ハロルドはもう一つ、拳銃型の魔法銃を取り出すと両手で魔素の弾を撃ち込んでいく。
しかし、無数のポーションラビットを寄せ付けなかったリリィだ。当然ハロルドの放つ魔法弾はすべて切り裂かれて、いなされ、リリィには届かない。
それどころか、放たれた魔法弾の雨のなか、ゆっくりとハロルドへと歩みを進めるリリィ。
「ルスト師、そろそろ不味いのでは?」
その様子を見てアーリが声をあげる。
「確かに、そろそろだ」私はハロルドをしっかり見ながら、そう答える。
「やっぱりですね……。あれ?」と急に単眼鏡を押さえるアーリ。
「アーリ、どうした?」
「はい。今ちょうど、未来視で見える世界が変わりました」
アーリが話しているタイミングで、ハロルドの義眼に宿る魔素が、急激に高まっていく。
「ルスト師。 あれは何ですか」と満面の笑みのアーリ。
「あー。ハロルドの義眼にちょっとした仕掛けを組み込んでおいたんだよ。ようやく発動したみたいだね」
ハロルドの動きがそこから一気に変わり始めた。




