嬉しい驚き!!
無事にハーバフルトンにたどり着いた私は、カリーンへの報告をアーリに任せ、自分の天幕へと急いでいた。
タイムリミットは、あと二日。
それまでにやるべき仕事が無数にある。
頭の中はその算段で忙しくて、気がつくのが遅れた。
私の天幕の前に、佇む人影に。
「ルスト! 帰ってきたな。ふん、その顔はどうやら解決策を見つけてきたようだな」
「ハルハマー師! ただいま戻りました。よくわかりますね。そんなに分かりやすい顔ですかね」
私は軽く自分の頬をもむ。
「ふん、お前さんの何か思い付いて自信に満ちた顔は、何度も見てきたからな。だいたいな、その顔を見せられた後に毎回、お前さんはとんでもない物を作り出してくるんだ。嫌でも記憶に残る」
ハルハマーに豪快に笑いながらそう言われ、思わず肩をすくめてしまう。
自覚はなかったが、言われてみれば思い当たる事が多い。
「さあ、わしらも手伝うぞ。で、どこでやる?」
「わしら、ですか?」
「おう! カゲロ機関顧問のわしと、カゲロ機関仮構成員の新人どもだ」
そう言うと、いつの間にか私の天幕の隣に建っていたレンガ作りの建物を指し示す。
ちょうどそのタイミングで、ぞろぞろと人がその隣の建物から出てくる。
皆、錬金術師の装いをしている。
私はポカンとしてしまう。彼らが整列していくのを、ただただ眺めてしまう。
「カリーン様から聞いていないらしいな。せいぜい、驚かしてくれと頼まれたが、どうやら言いつけは守れたようだな」
聞き捨てならない事を言うハルハマー。
「ええ、本当に驚きました。まさかカゲロ機関が知らない間にこんな事になっていたなんて。だからカリーンは早く名前をつけろと言ったのか……」
私が答えながら、カリーンには後で必ず文句を言ってやると内心誓っている間にも、ハルハマーの話が続く。
「わしらがハーバフルトンに来たときに見たゴーレム達がおっただろ。あれ、彼らの簡易錬成獣だったのさ。でだ、ルストがいない間に、カリーン様からわしが簡単な組織化を頼まれてな。きっと必要になるだろうから、とさ。一応、全員の実力の測定と適性の把握は済ませてあるぞ」
と、どや顔をするハルハマー。
確かにかつて錬金術協会を差配していたハルハマーなら、そこらへんはお手の物だろう。
「私が強行偵察に出ていた短期間でよくそこまで……。流石ハルハマー師ですね。それで、仮、というのは?」
「勿論、正式採用するか否かは、カゲロ機関の機関長たるルスト師、お前さんの承認待ちさ。これが全員分の書類だ。今は緊急時だから、後ででいい。じっくりと目を通しておくのがお薦めだ。それと、今からの働きぶりで決めたらいい。さあ、作業の指示を。わしが仕事は割り振ろう」
自分の胸をとん、と叩いてそう告げるハルハマー。
私は軽く息を吸う。
その一呼吸のうちに、自分でやるべき事、ハルハマー達に託せる仕事を、頭の中で簡単に仕分けしてみる。
──うん、ハルハマー師が仲介に立って調整してくれるなら、最も難しい部分以外は全て任せられる。
私はそう決断すると、これからの作業工程を皆に説明し始めた。




