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【本編完結】辺境の錬金術師 ~今更予算ゼロの職場に戻るとかもう無理~《コミックス発売!》   作者: 御手々ぽんた
第一章

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報酬を提示しよう!!

「さて、報酬なのですが……」


 私がそう切り出すと、村長たちは緊張した表情を浮かべる。


「カゲロの木の素材を無理のない範囲で、いかがでしょうか?」


 その私の言葉に、きょとんとした表情の村長とザーレ。


「そんな物で? 確かにカゲロは近くにたくさん生えていますが、何の使い道もないのでは?」


 村長の疑問。そう、確かに一般的な認識としてはそうだろう。習わしとして、集落の長の家のドアの上を飾るぐらいで、近くにカゲロの木を植えている集落は最近特に少なくなってきた。ただ、昔の文献を見ると、それこそ村に一本は必ず植えられていたらしい。


「たくさん生えているのですか。それは素晴らしい! とりあえず、案内していただけますか? 今なら、ちょうどカゲロの実も成っている時期ですし」

「わかりました。それでルスト師がよろしいのでしたら。こちらです」


 村長の案内に従って、私たちは村を抜ける。


 歩いている間に、何故かそこかしこから村人達が集まってくる。

 いつの間にか、村長を先頭にした行列が出来ていた。


 ──小さな村だし、娯楽も少なそうだから人が集まるのは仕方ないね。錬金術とか良い見世物だろうし。しかし、こうしてみるとやっぱり子供が少ないな。


 そんな事を考えていると、カゲロの木々が見えてくる。小さな林ぐらいはある。


「素晴らしい。さて、落ちている物で構いません、カゲロの木の素材を集めてくれませんか?」


 私は村長に声をかける。


「はあ、お前達、ついてきたなら働いてくれ。こちらの錬金術師様の言う通り、カゲロの木の枝や実を集めてくれ」


 最初は顔を見合わせていた村人達もすぐに村長の指示に従ってくれる。

 私の目の前に、みるみるたまっていくカゲロの木の枝と、実。ちゃんと分けて山積みされている。


「これぐらいで良いですよ」


 私は告げる。


「作業、やめっ!」


 ザーレが村人に声をかけてくれる。


 私はその間にカゲロの実の一つを手にすると、近くにいる村長達に語りかけるように呟く。


「魔晶石の材料はご存知ですよね。一般的にはモンスターの魔石を使います。ただ、作り方はそれだけではないのですよ」


 私はおもむろにリュックサックからスクロールを三本、取り出す。


「《展開》《展開》《展開》」


 くるくると広がる、三本のスクロール。それだけで周りにいた村人達がざわつく。


 口々に驚きの声が聞こえる。


「あれはなんだ?」「バカかい、あんた。あれはスクロールだよ」「あれが、スクロール。錬金術師が秘術の限りを尽くして作り出すと言われている……」「それよりも三本同時展開とはたまげたー。はじめてみた。神業か」


 私は村人達の会話を聞き流しながらも、結構錬金術に詳しい人もいるんだなと感心する。娯楽に飢えている村人達に、せっかくだから派手なのを見せてあげたかったとは思いつつ。まあ、工程は決まっているので、そういうわけにもいかず。

 地味でごめんねと、内心謝っておく。


「《純化》」


 一つ目のスクロールを発動させる。そう、それは前にポーションを作る際にも使ったもの。私の自慢の一品。


 あの時は純水を作るのに使ったが、今回の対象は目の前の空気。


 そこに含まれる魔素に対して、発動させる。


 そもそも、モンスターの体内から取れる魔石は、長い時間かけて大気中の魔素を固体化させたものなのだ。

 なら、わざわざモンスターを経由しなくても直接空気から濾し取ってやれば済む。


 純化のスクロールの作用で、目の前に黒いモヤが現れる。これが魔素だ。しかも高濃度のもの。


 再びざわつく村人達。しかし、流石に今回は何がおきているかわからないようだ。あまり驚いた様子もない。まあ、純化のスクロールは私の特製品。この世界で使っているのは私だけなので、それも仕方ない。


 ──ここが今回の錬成の工程のキモなんだけどねー


 まあ、いいやと。私は手にしたカゲロの実を、黒いモヤへと突っ込む。

 黒いモヤがカゲロの実へと吸い込まれていく。カゲロの実が、魔素を取り込み一気に黒く染まり始める。

 カゲロの実は本当にさまざまな錬成の素材として使えるのだ。というのも、このように魔素の宿りが非常に良いという特性があるためで。


「《研磨》」


 私はそのまま二つ目のスクロールを発動させる。


 発動したスクロールの上空、風が渦巻き始める。すぐさま、それは小さな竜巻へと変わる。


「すごい、ちっちゃな風の渦」「あれは竜巻って言うんだよ」「すげえ、ぐるぐるしてる」


 再びどよめく村人達。今回は分かりやすかったようだ。反応が大きい。


 私はそのミニ竜巻の上で、カゲロの実を放す。

 竜巻の中心へと、カゲロの実はまっすぐに落ちて行った。


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