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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
6 冒険者になれない編!
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96 エミーとカマッセの凱旋

「はい、こちらでーす!推定“トーゴードコマンド”討伐隊に参加される方は、こちらの列にお並びください!10分後には出発しまーす!」


冒険者ギルドヨシャンカ出張所の受付嬢ピリッツァは、内心イライラしながら滅多に出さない大声をあげて、話を聞かないアホな冒険者共を整列させていた。


トーゴードたちを指揮する、赤いトーゴードの特殊個体が現れた。

現在、銀髪の少年冒険者が、1人でトーゴードたちを食い止めている。


とある54等級の冒険者からもたらされたこの情報により、ヨシャンカ出張所には激震が走った!

なにしろ、赤いトーゴードといえばそれは、その指揮能力の高さから『見つけ次第全力で討伐推奨』とされるトーゴードコマンドに違いない。

銀髪の少年冒険者の身も危険であるし、何より放っておけばこのヨシャンカの町にも大きな被害がもたらされる可能性も高い。

すぐにでも討伐隊を結成し、その赤いトーゴードを狩り殺さなくてはいけない。


「赤いトーゴード......トーゴードコマンド、っつったか?」

「へへっ!そいつをぶっ倒してよ、オレたちも名をあげるぜ!」

「............」


情報を整理し冷静に準備を整える者。

興奮し気勢をあげる者。

武者震いする者。


冒険者たちの反応は様々だが、このような緊急討伐依頼に集まるのは当然血気盛んな冒険者ばかり。

共通しているのはまだ見ぬ強敵との戦いへの期待。そして熱気だ。

現在ヨシャンカ出張所のロビーは、冒険者たちが発する異様な熱気と興奮に包まれていた。




一方で、受付嬢ピリッツァの心の中は冷え切っていた。


(これで今晩は残業確定じゃないの~!あぁ~、面倒くさい!!)


今回の緊急討伐依頼、依頼主は“冒険者ギルドヨシャンカ出張所”扱いで出されている。

公益性、緊急性が高い場合にはこのようにギルドが依頼主になるという事態も想定されており、その場合の冒険者たちへの報酬の支払いは全てがギルド負担だ。

そしてこのような多数の冒険者を動員した大規模討伐依頼の場合......その事務処理手続きは滅茶苦茶に手間がかかるのだ!

誰が、どのように、どれだけ貢献をしたのか?

討伐隊に参加した冒険者たちが不満を持たないようにできる限り正確に評価し、適正な報酬と貢献点を振り分ける......。

ピリッツァのような事務職員にとっては、延々と続く地獄のような作業が待っている。

ヨシャンカ出張所は3人の職員で運営してきた本当に小さな出張所なのだ。

なのに、現在ヨシャンカには何故かそんな小規模ギルド出張所のキャパシティを明らかに上回る人数の冒険者が集っており、今回集まった人数だって既に30人近い。

しかも現在所長は出張中。

地獄の事務処理を、通常業務と並行しながら、ピリッツァたちは2人で捌ききらなくてはならない。

......堕落受付嬢ピリッツァでなくとも、思わず顔をしかめたくなるというものだ。

トーゴードコマンドを放置した結果生じるヨシャンカの町への損害を考えるとそんな文句を言っている場合ではないのだが、現段階では被害らしきものはほとんど発生していない。

報告者である冒険者の仲間が傷つけられた程度であり、ピリッツァがケガをしたわけではない。

自分の身に被害が及ばなければ、人間は危機を危機として認識できないものである。


まぁとにかく。

例え内心が不平不満であふれていても、そこは彼女もプロである。

ピリッツァは嫌な顔一つ見せずに、冒険者たちへの対応を続けていた。


(あ~もうっ!イライラするぅ~~~っ!)


彼女は癇癪を起こしそうになる自分を、脳内の札束を数えることで何とか押さえつけつつ、業務にあたっていた。

今日もきっと、あの呪い子がサイーシュ草を持ってくる。

自分のお部屋に積んであるお金がまた増える。幸せ幸せ!


......と、その時だった!




「すまない!ここを通してくれ!」


混雑するロビーに、少年の声が響き渡った。

喧騒にまみれていた室内は、声のもとである出張所入り口から順に徐々に静まりかえっていき、皆が何事かとそちらを振り向く。

そして驚愕する。



そこに立っていたのは、銀髪の少年冒険者カマッセ。

年若いながらもその戦闘力は群を抜き、知識も深い。

少なくともヨシャンカ出張所の冒険者の中には、彼のことを知らない者はいないほどの天才。

そして今回、傷ついた冒険者を逃がすため自らが囮となり、トーゴードコマンドの攻撃を食い止めていたはずの人物。

救助対象となるはずの人物であった。


「お、お前!無事だったのか!」


カマッセに助けられた54等級の冒険者が人垣をかき分け、飛び出してきた。


「もちろんだ!そして......見よ!」


元気に答えを返すカマッセは、それと同時に腕に抱えていた巨大なものを頭上に掲げた!

それは、生首である。

赤い毛並みの、通常の物とは比べ物にならないほど巨大な、トーゴードの生首。

即ち。


「集まってもらって悪いんだが、この通りだ!トーゴードコマンドはオレ“たち”が既に討伐した!ヨシャンカの危機は去った!!」


一瞬、室内を静寂が包み込む。


「「「「「お、おお......おおおおおおおおおーーーーーーーーーーッ!!!」」」」」


そしてすぐに、割れんばかりの歓声で埋め尽くされた。


「おいおい、マジかよ!?」

「ちくしょうっ!せっかくの活躍の場が!」

「さすが天才児!その評価に偽り無しか!」

「カマッセ!カマッセ!」

「「「カマッセ!カマッセ!カマッセ!」」」


驚愕、嫉妬、称賛の声。

そして沸き起こるカマッセコール!


「まて、まてまてまて!お前ら、一旦静まれ!」


当のカマッセは慌てて冒険者たちを黙らせる。


「勘違いするな!コマンドを討伐した主力はオレじゃねぇんだ!オレはサポートしただけなんだ!......おい!お前気配消してんじゃねぇよ!ほれ、ちゃんと前に出ろ!」


そしてそんなことを言いながら、“いつの間にか”彼の後ろに立っていた少女の腕を掴んで、前へと引っ張り出す。


その少女の姿を見て、出張所内はまたしても静まり返った。

ただしその静まり方は、先ほどとは毛色が異なる。

冒険者たちに広がる嫌悪感、そして不快感。

それが故の静寂だ。

カマッセが親し気に前へと押し出したその少女の髪の色は黒。

瞳の色も黒。

ヨシャンカ内でもたびたび目撃されている、例の呪い子の少女であった。


そんな周囲の冒険者たちの様子を見て、カマッセは不満げに口をとがらせる。


「おい!お前らなんだその反応は!まぁ、こいつは呪い子だからな、初めはそうなる、それは理解できる。オレもそうだった。でもな!こいつは凄いやつなんだよ!」


当然カマッセだって、呪い子が周囲からどれほど忌み嫌われているか知っている。

しかしだからこそ、彼は面倒くさがるエミーをこの場に引きずり出した。

この場で彼女の活躍、その強さを喧伝し、どれだけ有能な人材であるのかをアピールする。

そして、この町でのエミーの立場を向上させる。

カマッセが嫌がるエミーを討伐報告に連れてきた一番の目的は、エミーの存在を冒険者たちに認めさせることだ。

そして少しでも、エミーが不当な扱いを受けないようにしてやるのだ。

それが今の自分にできるエミーへの恩返しだ。

カマッセはそう考えていた。


「いいか!こいつは凄く強いんだ!今回のトーゴードコマンドだって、戦闘自体はこいつ一人でこなしたようなもんなんだ!」


そんなバカな!?

あんなに幼いのに?

呪い子なのに!?


周囲に動揺が広がる。

場の空気が整ってきたことを感じ、カマッセは口角を吊り上げながら言葉を続ける。


「良く覚えておけよ、お前ら!こいつはこの町の救世主!そして“未来の大英雄”!!その名も......!」




バァン!!




しかしながらカマッセの口上は、突然出張所内に乱入してきた集団により遮られる。


「いたぞ!呪い子だ!」


入ってきたのは屋台“トーゴード串”大将のバッカロー、“海風亭”女将のヨハンナ、万屋“カンセン屋”店主のカンセン婆など、ヨシャンカ商工会を代表する重鎮たち。


「いよいよもって貴様も年貢の納め時だ!覚悟しろ!」


そして彼らを意気揚々と率いる、年若い衛兵のヨザであった!

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― 新着の感想 ―
[一言] カマッセ……そもそもなんで独立組織の冒険者ギルドに衛兵が踏み込めるんだよ。もうエミーさんオマケさま、ここは捨てて行こうよ…
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