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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
6 冒険者になれない編!
85/716

85 ヨシャンカは昼間の風も冷たい

びゅおお......。


相変わらずの海風吹きすさぶヨシャンカ郊外の荒野から、おはようございます。エミーです。


<エミー、おはようございます。しっかり眠れたようで、何よりです>



今私がいるのは、荒野に生える地を這うように広がる灌木の根元に掘った、穴。

昨晩作った、私のねぐら。

隙間なく生い茂る硬質な葉はしっかりと風を防いでくれて、雨が降ったらどうなるかわからないけど、割と快適で過ごしやすい。


もぞもぞと灌木の茂みから這い出て、伸びをする。

天気は相変わらずの曇り。

風は冷たい。

まだ慣れない潮の臭いが鼻につく。



<さて......どうします?エミー>


......どうしようかね、オマケ様。


昨日、冒険者になるために挑んだ『課題』。

無事に達成できたにも関わらず、あの受付は私の薬草を盗んだものだと決めつけ、ろくに話を聞いてくれなかった。


<まさか、あそこまでぞんざいな対応をされるとは、私も考えていませんでした>


だよねー......。

私が冒険者になるためには、サイーシュ草を採るだけではなく......それを本当に自分が採取したのだと、証明する必要があるということだ。


<......エミー、昨日焚きつけた私が言うのもなんですが......まだ、諦めていないのですね?>






............。







うん、まあね!

昨日『理不尽に打ち勝つ!』って決意表明した矢先に、いきなり諦めるってのは恰好がつかないしね!


一度相手にされなかったからって、なんだというのだ。

そう、私はまだ、一度ぞんざいに扱われただけ。

こんなことで諦めるような人生を、私は歩くつもりはないぞッ!


<では、どうしますか?>


簡単なことだよ、オマケ様。

私が一人で薬草を採ってきた結果、それが盗んだものと疑われたわけだ。

つまり、一人で行かなければ良い。

私の薬草採取に同行して、私がサイーシュ草を採取したと証明してくれる人を、探せば良いんだ!


<なるほど。しかし、そううまくいきますかね?>


......わからないけど!

わからないけど、何かやってみないことには始まらないわけだし?

とりあえず、また冒険者ギルドの出張所に行ってみよう!



私は、ヨシャンカの町に向けて駆けだした。

正門まで回り込むのは面倒だったので、外壁は【紙魚】を使うことで乗り越えた。



◇ ◇ ◇



......1時間後!

ヨシャンカ中心部にある公園に設置された、石造りのベンチの上!

そこで私は......頭を抱え、うなだれていた!


<......うまく、いきませんでしたね......>


うん......。


黒髪黒目は呪い子だ。

この世界の常識である。

私は今日も布を巻いて髪を隠していたんだけど、私が呪い子であるという噂は、昨日のうちにすっかり広まってしまっていたらしい。

そんな呪い子に「魔境まで薬草採取に同行してくれ」と言われても、首を縦に振る冒険者はいなかった。

皆不吉がって、そもそも私と喋ることすら嫌がるのだ。

中には武器を抜いて、私を威嚇するおっさんもいた。

ちょっと【威圧】してやるだけで、腰を抜かして失禁していたけど。

女児に【威圧】されるだけで怯えるおっさんとか、冒険者として荒事をこなせるのか逆に不安になってしまった。






じゅー......じゅー......。


私の目の前には、でかい焼き鳥みたいなものを焼いている屋台。

ヨシャンカでは、外で朝ご飯を買って食べるのが普通らしく、町中にはいくつかこういう屋台が散見される。


ぐぅぅ......。


お腹空いた。

そういえば、今日は起きてから何も食べてないや。


<エミー、エミー!ここはひとつ、おいしいものを食べて、気分でもかえませんか!?>


オマケ様が、明るく提案してくれる。

......うん。

うん、そうだね!オマケ様!

おいしいもの!生肉じゃない、調理されたおいしいものを食べよう!

幸い、手元には男爵家でメイド見習いをして稼いだお金、15万エーンがある。

ちょっと焼き鳥を買うくらい、わけないのだ!

あ、エーンは通貨です。

“円”に響きが似ているのは、偶然みたいです。



とことこと、屋台に近づく。

余談だけど、ヨシャンカの屋台は必ず海側に背を向け、その背の部分をしっかりとした板で覆っている。

こうすることで、海風を防いでいるらしい。

本当に余談だけど。


近づくにつれ、良い香りが漂ってくる。


肉の脂の香り。

炭の香り......。


ぐぎゅるるる......。


あー......もう我慢できない!

おっちゃーん!その串、10本頂戴な!


「!?てめぇ、その恰好、昨日町に来たっていう呪い子か!?うちの屋台に近づくんじゃねぇッ!!」


......串を焼いてる白髪のおっちゃんに、アツアツの炭を投げられてしまった。

もちろん、瞬時に避ける。


「あの、串、欲し......」


「商売の邪魔だッ!早くッ!どっかに行きやがれッ!」


「............」


次々に投げられる炭。

私はその全てを、華麗に横跳びで避ける。

体があったまってきたので、サービスで(?)反復横跳びも見せてあげる。


シュシュシュッ!シュシュシュッ!


見よ!この速度!

ゴミクズ村にいた時とは比べ物にならない、この速度!

残像が見えるぜ!!


「な、なんなんだよてめぇはよぉッ!てめぇが寄ってくるだけで、他の客がうちから逃げてくんだよぉッ!勘弁してくれよッ!どっか行ってくれよぉッ!!」



........................。


屋台のおっちゃんが、マジ泣きを始めた。



え、えっと......その......。


ごめんなさい......。




なにこれ?

なんなのこれ?

私が悪いの......?


釈然としないものの、泣かれてしまうとどうも申し訳ない気がしてくる......。

私は屋台に背を向け、とぼとぼと歩き出した。



......とりあえず、カイセの森に行こう。

生蛇でも食べよう。

冷たい石畳の上を、素足でぺたぺたと歩く。

寒い。

ヨシャンカは昼間の風も冷たい。














「......おい!」



そんな時、後ろから私に声をかける存在があった。

年若い、少年の声。


振り返ると、そこにいたのは銀髪の少年冒険者、カマッセだった。



......カマッセはその両手に焼き鳥の串を一本ずつ持って、私を見つめていた。

第85話にして、初めて通貨の単位が登場する作品!

それが、『オマケの転生者』です。

今後とも、よろしくお願いします(なんだこの挨拶)。

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― 新着の感想 ―
すみません、テンポや話のスジ、全体的に好きで楽しみなのですが、 ちょっと読むのが辛くなってきました。 救いが無さすぎます。 ここで引かせてもらいます。 これからも執筆活動、無理せず頑張って下さい。
[良い点] カマッセに惚れた
[一言] これがこの世界の街のスタンダードなら、呪い子は生きていけません。仮に生き延びる者は間違いなく加護持ちの転生者、そして彼ら彼女らは間違いなく闇堕ちするでしょう。つまり力持つ彼らこそ世界を滅ぼす…
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