80 やる気をだすエミー
はーい!皆さんこんにちは!
私黒髪黒目の超絶美少女、先日7歳になったエミーちゃんですよ!
今私はヨシャンカの町を出てそのまま南方に進み、カイセの森の端までやってきたところなの。
というのも、冒険者ギルド出張所の受付の人から冒険者になるための『課題』を出されたので、それをこなさなければならないからなんだけど......。
<エミー、私は納得がいきませんよ!>
あらら、オマケ様が怒っている。
まぁ、私にもその気持ちはわかる。
だって『サイーシュ草をとって来い』だなんて、そんなの明らかに冒険者志望の初心者に与える課題では......。
<なんで冒険者ギルドで絡んでくるのが、銀髪の少年なんですか!こういう場合、絡んでくるのはうだつの上がらない暴力的な小汚いおっさんって、相場が決まっているはずじゃないですか!?>
えぇ!?ちょ、オマケ様、何にキレてんの!?
キレるべきポイントはそこなの!?沸点がわからないよ!
ってか相場って何!?
<相場は相場です!異世界転生配信のお約束ってやつです!守るべき様式美です!>
いや、オマケ様、私の人生は別にどこぞの神に撮影されて配信されてるわけじゃないんだから、自分の期待するお約束が守られなかったからって、キレるのはやめよう?
<じゃあ、エミーは何に怒っていたっていうんです!?>
あのさ、オマケ様......まぁ良いや。
私が怒ってるのはさ、オマケ様、『サイーシュ草をとって来い』って『課題』、明らかに初心者向けのものじゃなくない?ってことだよ。
<あ......言われてみれば、そうですね>
言われてみなくてもそうなんだけど。
サイーシュ草って、アレでしょ?
師匠と一緒に過ごしていた頃に一度見かけて、『それなりに高く売れる薬草だ』って教えてもらった、水色で葉っぱがギザギザした薬草のことでしょ?
<はい、その通りです。『薬師神の異世界転生配信』で視ましたので、間違いありません。あれは魔力濃度が高い土地にしか生えませんので、自生地が危険な魔物の住処に重なるため採取が難しいんですよね>
そう、あの時もオマケ様にそうやって解説してもらったからよく覚えていたんだけども。
とにかく、そんな採取難易度が高い薬草をとってこいなんて『課題』、初心者に出すなんてさ、ちょっと酷くない?
私を冒険者にさせる気なくない?
ってか、私のこと殺す気なのかな?
この扱い酷くない?
<うーん、確かに酷いですねぇ。ですが、いつものことなのでは?>
む。
......そう言われて、思い出した。
確かにそうだ。その通りだ。
ここ最近はマーツ男爵様のお屋敷でそれなりの扱いを受けて暮らしていたから、すっかり忘れていた。
私は、黒髪黒目。
私は、呪い子。
この世界では、いわれのない非難にさらされ、迫害されうる存在(理由は知らんけど)。
冒険者ギルドの受付で不当な扱いを受けようが、変な冒険者に絡まれようが、無茶な『課題』を出されようが、しょうがないことだ。
だって、そういう世の中なんだから。
むしろ、町の中に入れてもらえただけでもありがたい。
男爵様の推薦状様々だなぁ。ありがとう男爵様。
<で、どうしますか?>
え?
<理不尽な扱いを受けて、あなたはどうするのですか?エミー。泣き言を言って、逃げ出しますか?>
むむ。
......そんなわけ、ないじゃん!
<そうですよね?エミー、あなたは強くなりました。そしてこれからも強くなり続けます。どうしてですか?>
理不尽に、打ち勝つため!
<ならば、こんなところで文句を言って、立ち止まっている暇はありませんよ!『課題』、こなしてやりましょうよ、エミー。あのしょうもない受付嬢を、驚かせてやりましょう。正面からぶつかって、理不尽を打ち砕くのです!そのための力なら、今のあなたにも十分に備わっているはずです!>
......ありがとう、オマケ様。
なんか......なんかやる気、出てきたよ!
理不尽な扱い?無茶な『課題』?それがなんだ!
正直言うとさっきまでは、こんな扱いをされるなら冒険者になんかならなくても良いかなって、思い始めてたんだよね。
自分でなりたいって思ったんじゃなくて、男爵様に勧められたから登録してみようと思っただけだし。
身分証がつくれるのはありがたいけど、これまでもそんなものなくても生きてこれたわけだし。
だけど、オマケ様に発破をかけられて、気づいたよ。
これは冒険者になるため、そのためだけの『課題』じゃない。
どうやってこれから私が生きていくのか、それを示すための、『課題』でもあるんだ。
私の人生に与えられた『課題』なんだ!
逃げてなんか、やるもんか!
私は正面に広がるカイセの森を睨みつける。
少し低い盆地のような土地に広がる黒々としたその森は、見渡す限り、地平線の向こうまでどこまでも続いている。
時折、森の外にいても感じるほのかな威圧感は、森に暮らす魔物達が発するものだろう。
まさに魔境。
戦うことのできない人間では、近づくだけで足がすくむ、そんな世界。
だけど、私は負けない!
この程度の理不尽で、私が止まると思うなよ!
魔物ども、来るならかかってこい!
......皆殺しにしてやる!!
やる気が高まる。
殺る気も高まる。
思わず魔力が、殺気があふれだす。
森からあふれ出る魔力と、私の魔力がぶつかりあい、ミシミシと音を立てて......。
「お、おいーーーッ!てめぇ、はやくその殺気を抑えやがれ!余計な魔物が寄ってくるだろうがッ!!」
......と、ここで突如、後ろから声をかけられた。
振り返るとそこに立っていたのは、肩で息をする、冒険者ギルド出張所で絡んできた銀髪の少年だった。




