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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
29 巨獣の台地の小さな魔物編!
701/716

701 その頃、体の外では

 さてここで一旦、視点を陸クジラの体外へと戻そう。

 曇天のもとちらちらと舞っていた小雪は、いつしか視界を遮る吹雪へと変じ、巨獣の台地の森は一区画を除いて、真っ白に雪化粧が施されていた。




「らあああああーーーーーーッ!!!」


「ボアアアアアーーーーーーッ!!!」




 そしてその一区画とはつまり、エミーと陸クジラの決戦場だ!


 ここでは、エミーの拳が巻き起こす風圧が。

 あるいは、陸クジラのフジツボが放つビームの熱が!


 雪を吹き飛ばし、溶かし続けていた!




「ボアッ......アアアーーーーーーッ!!!」


 ここで陸クジラは、その山の如き巨体をぐるりと回し......エミーに尾を叩きつける!

 地面をこすり、巨岩を砕いて弾き飛ばしながら迫るその尾を、エミーはビル一つ跳び越えられる程の跳躍でもって、回避!


 ビッ!!


 それを隙と見たフジツボ達は、空中に浮いたエミーに向けて一斉に【フジツボビーム】を放つが......。


「らああッ!!」


 エミーはとっさに背中から【黒翼】とノズルを展開!

 そしてノズルからどす黒くて環境に悪影響を及ぼすに違いない瘴気......エミーの魔力を大量に噴射することで推進力を得て、空中移動を開始する!

 【フジツボビーム】は、標的に命中することはなく、遠くの灰色の雲に小さな穴をあけた。


「あああーーーーーーッ!!!」


 エミーは襲いくる【フジツボビーム】を間一髪で避け続けながら、陸クジラの巨体を目指す。

 その手には、いつの間にか巨大な【黒大剣】が握られており、エミーはそれを......常軌を逸した膂力に飛行の勢いを加えた上で、陸クジラの脳天に叩きつけた!


「ボアアッ!?」


 陸クジラがその痛みに怯み、悲鳴をあげる!

 しかし......!


「ちッ......!」


 エミーは舌打ちをした。

 【大蟷螂】も加え、切断力を増強させた【黒大剣】をもってしても......陸クジラの頭蓋骨で、刃が止まる!


「らッ......!」


 エミーはすぐさま陸クジラの頭部にめりこんだ【黒大剣】の柄を蹴って、自らは一旦陸クジラから距離をとる。

 【黒大剣】は、瘴気となって霧散。

 陸クジラの頭部は......すぐに治癒され、盛りあがってきた肉によって修復されていく。




 このように。




 エミーと陸クジラの戦いは、はた目からすればほぼ互角。

 エミーは陸クジラの攻撃を受ければ大ダメージを受けること間違いなしだが、鍛えあげた戦闘勘で神がかった回避をし続ける。

 一方の陸クジラは、エミーの攻撃を受けても致命傷には至らず、すぐさまその傷を治癒してしまう。


 しかしながら、魔力量を比べると、両者の差は一目瞭然なのだ。


 エミーの魔力は、人とは思えないほど膨大である。


 しかしながら、相手は何千年もこの巨獣の台地で生き続けてきた巨大生物。

 亜神、陸クジラ。


 さすがのエミーも、さすがにこの陸クジラの“年の功”には勝てない。

 保有魔力量を比較すると、軍配があがるのは......残念ながら陸クジラなのだ。


 つまり、互角の戦いを続けていれば、いずれはスタミナの差で、エミーは負ける。




<もう、逃げてしまいませんか?>


 故に。

 エミーの脳内に住まう彼女の相棒、オマケ様が......エミーに対してそのような進言を繰り返すのも、無理からぬことである。

 オマケ様が一番に優先するのは、いつだってエミーの命だから。




「......ダメ」


 しかしエミーは、決して首を縦に振らない。


「ドクゲーゴンが......せっかくやる気になったんだ」


 この巨獣の台地にあって......小さく、弱く、醜い魔物。

 魔物のくせに戦うことを嫌がる、風変りで臆病者な......エミーのペット。




 拾ったのは、ほんの気まぐれだった。




 こんなに醜い生き物なら、自分の不幸に巻きこまれて死んでも......うっかり握り潰しちゃっても、惜しくないだろうし。

 毒まみれでどう考えてもまずそうだから、お腹が空いてもつい食べちゃうこともないだろうし。

 このところ野山で動物のように生きているエミーの、人間社会復帰の一助になるのではないかと思って、飼い始めた。

 他者と関わるにあたっての、コミュニケーション、あるいは力加減の練習台。


 ただ......それだけの存在だと、思っていた。




「応援しなきゃ......飼い主として」


 だけど、今では違う。

 いつの間にかドクゲーゴンは、大切な彼女の“仲間”になっていた。

 エミーにとってドクゲーゴンは、気まぐれに殺してしまえる有象無象では、なくなっていたのだ。




<『やる気』って言いますけど......ドクゲーゴンは多分、さっき逃げたそうにしてたと思うんですけど>


「そんな訳ない」


<いや、ありますって>


「ちょっとの間に、姿形が変わってた。あれは、『戦うために、覚悟を決めたからでは』って、オマケ様も言ってた」


<まあ、確かに言いましたけど。魔力を多く持つ生物は、たまにそういうこともありますし>


「つまりドクゲーゴンは、やる気満々」




「ボアアッ、ボアアーーーーーーッ!!!」


 陸クジラの突進を、そして【フジツボビーム】を紙一重でかわしながら、エミーは待ち続けていた。




「頑張れ......ドクゲーゴン!!」




 彼女の仲間が......根性を見せて、この状況を打破する......その時を!




「私も......頑張るから!!」




 次の瞬間!

 エミーは爆発的な跳躍で跳ねとび、陸クジラの左頬を殴った!

 そしてたたらを踏む陸クジラの右頬を、今度はいつの間にか伸ばしていた【黒腕】で殴る!

 さらには一度地上に降りてから再度跳ねとび、衝撃が脳天へと突き抜けるアッパーカット......の後に、伸ばした2本の【黒腕】を祈るように組み、陸クジラの頭上へと振り下ろす【黒大槌】!


 全力を振り絞った......エミーの後先を考えぬ大暴れが始まった!

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― 新着の感想 ―
ジョバンノの死による傷は大分深いですねぇ
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