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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
29 巨獣の台地の小さな魔物編!
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699 【醜い魔物の成り上がり】黄色の光の正体

 陸クジラの体内の光の色を、黄色に変更しました。

「ンエッ、ンエッ......ンエーーーーーーッ!?」


 ジャボーーーーーーンッ!


 陸クジラの体内を、転がって、転がって、転がって......。

 ドクゲーゴンが行きついたのは......“湖”と表現して差し支えない程の、水場だった。


(ここは......?)


 薄黄色に輝く心地よいぬるま湯につかりながら、ドクゲーゴンは周囲を見回した。


 周囲に転がっているのは、相変わらず外界から吸いこまれた巨木や、巨獣の死骸である。

 それらが、ドクゲーゴンと同じようにぬるま湯につかりながら、徐々に徐々に......ジュワジュワと音を鳴らしながら、溶けていく。




(......ってこれ、胃酸だうわぁーーーッ!?)


 ドクゲーゴンは慌てて全身から毒液を分泌し、ふわりと宙に浮きあがった。


(やばい、やばい、やばいよぉ!)


 そして毒液をまき散らしながらバサバサと翼をはためかせるが......ふと気づく。


(......ボクは、溶けてないな?)


 と。




(まさか......【毒耐性】のおかげ!?『相性が良い』って、こういうこと!?)


 『胃酸は毒なのか?』という疑問がドクゲーゴンの頭を過ったが......良く考えればドクゲーゴンの毒も、相手の肉を溶かす酸的な効果を持ちあわせていた。

 今さらだし、詳しく考えるのは、やめだ。

 重要なことは、自分が陸クジラの体内では安全に行動できそうだという事実。

 そして......これからどう行動すべきかという指針だ。


「ンエーーーーーー......」


 バサバサと毒の翼をはためかせ、ドクゲーゴンはゆっくりと周囲を旋回した。

 何しろコロコロと転がってここまでたどり着いたので、彼はすっかり、自分がどちらの方向からやって来たのか、わからなくなっていた。

 周囲は見渡す限り底の浅い胃酸の湖であり、目印となるものすらない。

 逃げ出したくても......逃げられない!


「ンエーーー......」


 ドクゲーゴンは心細くなり、再度情けなく、鳴いた。




 ズウウ......ン。




 しかし、その時。

 遠くから微かに、何かがぶつかったような音が聞こえて......胃酸の湖にさざ波が走った。


(......!エミー......)


 当然それは、おそらくドクゲーゴンの飼い主の仕業だろう。

 きっと、陸クジラを殴るか蹴るかしたのだ。


 彼女は言っていた。

 『ギリギリまでは、付き合う』と。


 ドクゲーゴンが、陸クジラの体内で......戦っているのだと、信じて。




「ンエ......」


 そもそもエミーの行動は、ドクゲーゴンの内心を勝手に自分の尺度に当てはめて解釈した結果の、勘違いに基づくものであり......。

 的外れで、ドクゲーゴンにとっては、迷惑千万な行為に他ならないものであった。


 だけど。


「ンエ......!」


 ドクゲーゴンの瞳に、炎が灯る。

 彼は、裏切りたくなかった。

 巨大でファンタジーなクジラの体内という未知の環境に対して、恐怖はある。

 でも。

 それ以上に......大切な“仲間”の命を賭けた信頼から......逃げ出したくなかった!




「ンエーーーーーーッ!!」




 ドクゲーゴンは勇気を振り絞って一声鳴くと、毒の翼を一回り大きく広げて......舞いあがった!




 ジャバアアーーーンッ!!




 ......しかしその瞬間、おそらくエミーの暴力によって加えられた衝撃で、胃酸の大津波が発生!


「ンエーーーッ!?ンエホッ、エホッ......」


 胃酸大津波に巻きこまれたドクゲーゴンはすぐさま胃酸の湖に落下し、再び薄黄色の液体塗れになった。

 ふと横を見ると、今の津波で流されてきたのか、醜悪な顔の巨獣の死骸が転がっている......。


(これ、この死骸に潰されてたら、死んでたんですけどぉ!?)


 確かに、【毒耐性】のある自分は、この陸クジラの体内では、生き残りやすい。

 ......だけど、大切な“仲間”の大暴れこそが、彼の命を危険に晒している!


「ンエッ、ンエーーーッ!!」


 とにかく!

 一刻も早く自身の安全を確保するためにも、ドクゲーゴンは改めて高く飛びあがった!




◇ ◇ ◇




 その数分後、ドクゲーゴンは陸クジラの胃の天井近くを、毒液をまき散らしながらまっすぐに飛んでいた。


 どこに進めば良いかは、わからない。

 しかし、動かない訳にはいかないのだ。


 体の外では、エミーが戦っている。

 自分も、戦うのだ!

 故に、手当たり次第......届く範囲で、とにかく毒を巻き散らかしているわけだ。


「ンエーーー......!」


 チラリと振り返れば、そこにあるのはドクゲーゴンの毒によって腐食した、陸クジラの胃壁である。

 ジュワジュワと溶け腐り、紫色に変色した、肉。


「......ンエ、ンエ!」


 ドクゲーゴンは一旦方向転換すると、粘度の高い毒の力で胃壁にはりつき、毒に侵された陸クジラの肉を、ついばんだ。

 一口、二口と少量食べるだけで、消費した魔力が随分と回復していくのを感じる。

 長く生きる超巨大生物の肉だ......その魔力含有量は桁外れである。

 “通常の生物であれば”、その血肉は食べるだけで毒。

 しかしそのルールは、どういう訳かドクゲーゴンには当てはまらなかった。


 体内を毒で荒し、さらには肉を食べて魔力補給。


 圧倒的強者であるはずの陸クジラは、このドクゲーゴンの蛮行を止めることができない。

 弱者による一方的な蹂躙行為という奇跡が、体内という特殊環境のもとで、ここに成立していた!


 しかし......。




(ああ、もう、向こうの肉は......回復している)


 陸クジラの膨大な魔力を原資とした超強力なホメオスタシスが急速な新陳代謝を促し、毒によって侵された肉を新たな肉に次々と取り換えていく。

 皮膚をあっという間に元通りにしていた驚異の治癒力は、体内であっても健在だ。


 『体内で毒をまいた方が、きっと効果的に違いない』と、ドクゲーゴンは漠然と考えていたが......話はそう簡単ではないらしい。

 エミーが言った通り、『体の奥の、何か重要な部分』を攻撃しなければ、この陸クジラに致命的なダメージを与えることは難しい。


(とはいえ......どこに行けば良いんだよぉ......)


 しかし陸クジラの体内はあまりにも広大であり、どこに毒をかければ良いのか......ドクゲーゴンには見当もつかない。

 少しでもダメージを与えエミーの助けとなるべく、今はがむしゃらに毒をまき散らしているが、このままではいつまでも陸クジラを倒せない。


(とりあえず......肺を目指す?でも肺って、どこなのぉ......?」


 彼は毒で胃壁にはりつきながら遠い目をして途方に暮れ、ため息をついた。




 ......その様が。


 絶好の隙と、見なされたらしい。




「アァァアアアニサアーーーッ!!!」




 それは、突然のことだった!

 ドクゲーゴンのはりついていた胃壁が、少し震えたかと思うと......その、肉の中から!


 白く細長い、ミミズのような生き物が、飛び出して来たではないか!

 その生き物の先端には丸い口が開き、鋭利で凶悪なギザギザの歯が、無数に並んでいる!


「ンエーーーーーーッ!?」


 ドクゲーゴンはすぐさま胃壁から飛び離れることで、間一髪その奇襲噛みつき攻撃をかわした。

 あの歯で噛みつかれていては、致命的な傷を負っていたことだろう。

 危ないところだった......!


(あ、あれは何!?寄生虫!?)


 ドクゲーゴンは周囲を旋回しながら、未だに胃壁の中に体を残しながら頭部を悔し気にブンブンと振り回し奇声をあげるそれを観察した。

 頭部と思しき先端部に存在する口意外には特徴のない、糸のような生き物である。

 糸......とは言ってもその太さは直径にして1メートルはある。

 陸クジラという山のように巨大な生物の寄生虫なだけあって、おそらくそれは地球上に生きるどんな大蛇よりも大きい。

 そして......。


(あッ!!)


 次の瞬間!

 その生き物はパチ、パチと......放電するかのように、黄色に輝き始めた!


(まさか、このクジラの体内が明るかったのって、こいつらがいたからってことぉ!?)


 生命の神秘!


 しかしドクゲーゴンには、この未知なる寄生虫の生態に興味関心を寄せる余裕はなかった!

 何故ならば......!




「キィィイイイーーーッス!!!」


「ンエーーーーーーッ!?」


 この寄生虫、口から......バチバチと音を立てる黄色の雷球を射出し、ドクゲーゴンを攻撃し始めたからだ!


 ドクゲーゴンは間一髪その雷球を回避し、反射的に毒球による反撃を放った!

 エミーのスパルタによって身に付けさせられたそのカウンターは、寄生虫に見事命中!


「アニサキィィーーーッ!?」


 予期せぬ反撃で毒を食らった寄生虫は、苦悶の悲鳴をあげながらのたうち回った。

 しかし、苦しそうにしてはいるが、即死はしない。

 普段から胃液に塗れた環境で生活しているためか、この寄生虫の【毒耐性】はそれなりに高いらしく、ドクゲーゴンの毒が普通の生き物に比べて効きにくいようだ。




「「「アァァアアアニサアーーーッ!!!」」」


(うわわッ!?)


 と、ここで、同胞の悲鳴を聞き、寄生虫の仲間たちが続々とドクゲーゴンに近づいてきた。

 しかし、この寄生虫......普段は死骸、あるいは陸クジラに丸のみされ、既に弱った巨獣ばかりを相手にしているためか......戦闘能力はそれ程高くはないようだ。

 次々に突進、あるいは黄色雷球によりドクゲーゴンに襲いかかるも、彼の反撃毒液攻撃を浴びては、すぐに退散していく。




(......ん?)




 その様を見て......ドクゲーゴンはふと、違和感を覚えた。

 この寄生虫達は......バラバラの方向からドクゲーゴンに向かって襲いかかってくるが......逃げ出す方向は、皆同じなのだ。


「ンエ......?」


 寄生虫たちは黄色に輝いているので、彼らの逃亡する経路は光の道としてドクゲーゴンの視界に映っていた。

 そして、その光の道の、向かう先は......。


 遠くで一際大きく輝く、黄色の巨大光球であった。


(あれは、一体......?)


 その正体について、皆目見当もつかないドクゲーゴンであったが......現在彼は、迷子のようなもの。

 陸クジラを倒すため、どこに毒をかければ良いか、わからない。

 そしてここにいても、寄生虫たちにただたかられるだけ。

 ならば。




(行ってみよう......!)




 何らかの、陸クジラ攻略のヒントを求め。

 ドクゲーゴンは寄生虫達の猛攻を振り切り、相変わらず毒をまき散らしながら巨大光球に向かって飛び立った!

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寄生虫の鳴き声に笑ったw
なんて分かりやすい鳴き声なんだ。食中毒の心配はいりませんね!
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