675 【醜い魔物の成り上がり】謎の監獄からの脱出
(......あれ?)
晴馬情。
姓がハルマで、名前がジョウ。
ただの男子高校生であったはずの彼は、ある日突然ぼんやりと薄暗いどこかで、囚われている自分に気づいた。
(え!?何、何!?監禁!?怖い!!)
もともと怖がりな性格であった彼は、すぐにパニックを起こしてジタバタと暴れた。
何しろ、彼が囚われている空間は、とても狭い。
“まるで”......胎児のような姿勢で膝と首を曲げ、くるりと体を丸めなければ、入っていられない程に。
(いや、いや、いや!誰か、助けてぇッ!!)
両手両足を無茶苦茶に振り回し、叫ぶ。
「ンエエーーーーーーッ!?」
すると己の喉から響くのは日本語ではなく、奇怪な唸り声。
彼はますます錯乱し、終いには頭をガンガンと、彼をとり囲む陶器のような質感の壁へと打ちつけ始めた。
すると、どうだ。
ミシ、ミシリ、と。
その壁に、ヒビが入り始めたではないか!
「ンエーーーッ!!ンエーーーッ!!」
彼は必死になって、そのヒビに頭を打ちつけた。
それを繰り返すこと、数十回。
壁のヒビは徐々に大きく広がって......。
「ンエーーーーーーッ!!」
ついに彼は、監獄を脱し、外界へと顔を覗かせることに成功した!
狭くて窮屈な監獄の壁をペキペキと砕きながら、今度は慌てて全身を外へと放り出す。
“四つん這いの姿勢”のまま。
すると、まず彼の目に飛びこんで来たのは、圧倒的な光量!
それまで閉暗所に囚われていた彼は、外界にあふれる光の刺激に怯み、思わず瞳を細めた。
「ンエッ......ンエ?」
しかし、徐々に慣れていく。
白一色で塗りつぶされていた彼の世界には、ぼんやりと色彩と輪郭が付与され始める。
それと同時に、気づく。
何か大きな存在が、自分のそばで......身じろぎする気配を。
「ンエ......」
恐る恐る、彼はその大きな何かへと、顔を向けた。
すると、そこにあったのは。
彼の姿を映す黒色の瞳一つが、彼の体よりも大きな......あまりにも巨大な、カラスの横顔だった。
「ンエーーーーーーッ!?」
もともと、電線の上にカラスが群れをなしていたら動けなくなるほどカラスが苦手だった彼は、次の瞬間には気絶した。
だからその時点では、気づきはしなかった。
瞳に映った自らの姿が......未だ羽毛の生えそろわぬ、不恰好な雛鳥に変じてしまっていることに。




