669 超巨大虹色人面世界樹ココリリオンの脅威
ドッ......ゴオオオオオンッ!!
ココリリオンが放った巨大な枝による槍のような一突きの威力はあまりにも強く......着弾点となった森の一角は、そのたったの一撃で吹き飛んでしまった。
宝石のように輝いていた木々は根元から折れ、下草はぐちゃぐちゃに潰れていた。
しかしながら......肝心のエミーは。
その枝の標的となったエミーは、すんでの所で横方向に跳躍して回避に成功し、無事だった。
土埃にまみれて地面に転がり、体中が葉っぱ塗れになるという、無様な様子ではあったが。
<<<ハハハハハハッ!!ハーッハハハハハハッ!!>>>
「......どうしよ、これ」
自らがなした暴力の凄まじさに興奮し大笑いを続ける巨木を尻目に、倒れた樹木の枝葉にコソコソと隠れながら......エミーはオマケ様に声をかけた。
「さすがにあれは、受け止められない」
<状況は、かなりまずいです>
オマケ様の声は、かなり緊張していた。
<今の一撃が、一度しか繰り出せない大技ならまだしも、相手はおそらく......精霊神の神器と一体化した存在。大地の魔力流から無尽蔵に魔力を吸いあげ、その活動に限りはない>
「疲れ知らず?」
<そうです。例え多少の傷を負わすことができても、すぐに回復されてしまうでしょう。私としては、撤退をお勧めします>
「このまま、【気配遮断】を続けて?」
<そうです。馬鹿正直に、エミーが相手をする必要もないでしょう。だって、あのココリリオンとかいう精霊王が行ったことは、言ってしまえば大地の魔力の私物化です。禁忌です。放っておいても、神々が対処することでしょう。滅せられるか、災厄として封じられるかは知りませんが>
「なるほど」
エミーは一人で小さく頷くと、樹皮を虹色に輝かせる......不気味な巨大人面樹と化したココリリオンから距離をとるため、慎重に後退を始めた......が、しかし!
<<<む......そこかああーーーーーーッ!!>>>
ココリリオンはどういう訳か、全力でその存在を隠蔽していたエミーの居場所を感知!
そして二撃目の枝槍を撃ち出したのだ!
「らッ......あああッ!!」
エミーはそれを、垂直に跳躍することで回避!
そしてズタボロに抉れ、破壊されていく足元の森にチラリと目をやり冷や汗を流しながら、【黒触手】を用いたアンカーを射出し、自らの体を大地へと引き寄せる!
<<<ハハハハハハッ!!今や我が根はこの森全域に張り巡らされ、魔力を吸いあげ続けると共に地表を蠢く貴様のような下等生物の動きを感知しているのだッ!!その上で逃げ隠れ等、できぬと知れーーーッ!!>>>
対するココリリオンはというと、馬鹿笑いをしながら次々に枝槍を放ち続ける!
ドゴオオオオンッ!!
ドゴオオオオンッ!!
ドゴオオオオンッ!!
周囲に響きわたる轟音と共に、精霊の森がどんどん破壊されていく!
<力に、酔っていますね。元は森の精霊王であったというのに情けない、成りたての亜神が>
苦々しく吐き出される辛辣なオマケ様のココリリオン評を聞きながら、エミーは跳躍によって枝槍を回避し続けた。
「......!!」
そして、ココリリオンから距離を置くための逃亡ルートの目途を立てようと、周囲を見回したエミーは......息をのんだ。
いつの間にか、周囲の精霊の森には......見慣れない物体が無数に屹立していた。
それは、根だ。
ココリリオンの樹皮と同じく虹色に輝くそれは......ココリリオンを中心として、いつの間にか円状に展開されていた。
まるで、エミーを閉じこめるための、柵の如く!
「......らッ!」
エミーは試しに、根と根の隙間に向けて、足元から拾った小石を【投石】した。
すると瞬時に虹色の根から新たに細長い根が伸びて、小石を受け止め砕いてしまった!
「らッ!」
今度は根の上方、かなりの高さに向けて小石を【投石】したが、こちらも結果は同じで、瞬く間に伸びた根が軽々と小石を砕いてしまう。
<脱出......できませんかね?>
「無理」
エミーとオマケ様は、即座にそう結論付けざるを得なかった。
<<<ハハハハハハッ!!邪悪なる下等生物よ、我は貴様を、絶対に逃さないッ!!>>>
それと同時に、ココリリオンは笑みを浮かべながら......しかし憎悪のこもった眼差しをまっすぐにエミーに向け、そう宣言した。
<<<貴様はッ!!貴様の魂はッ!!超上位存在即ち神たるこの我を、非常に不快にさせるッ!!故に貴様という存在は......この世界から、消え去らねばならぬッ!!さあ、疾く......死ねーーーッ!!>>>
そしてすぐさま......新たなる枝槍を発射!
エミーは瞬時に反応し、跳躍。
しかしそれは、これまでの回避のための横跳躍ではない。
飛び跳ね、彼女が降りたその先は......たった今発射され空振りに終わった、巨大な枝槍の樹皮の上だ!
「らあああああーーーーーーッ!!」
そして次の瞬間!
エミーはその巨大な枝の上を......人面世界樹ココリリオン目がけて、まっすぐに走り始めた!
逃げられないならば、倒す!
勝利の可能性は如何程か等、考える必要はない!
倒さなければならない以上は、倒すのだ!
そのための行動に移るまでに、エミーが躊躇することはない。
戦いづくめの人生が、この少女にそれだけの胆力を練りあげているのだ!
<<<ヌ......寄るな、下等生物がッ!!>>>
もちろんココリリオンも、その突撃を放置するわけがない。
不快な毛虫が自分の脚を登って来たのを見つけたような表情を浮かべながら、ココリリオンはエミーに向け、次々に枝槍を射出する!
「らッ!!」
しかしエミーは、自身の頭部目がけて飛んできた枝を、体勢を低くして避け。
「らッ!!」
現在走っている枝からエミーを捕まえるため網のように入り組んで伸びた小枝を、【紙魚】を使ってルートを変え、天地逆さまになって走ることで避け。
「らッ!!」
さらにそのルートすらも小枝によって塞がれると、【黒翼】を展開して一時的に宙に浮く事で避けた!
そして妨害が薄くなったタイミングを見計らって再度枝槍上に降り立ち、猛烈な勢いでココリリオンに向かって駆け抜けるのだ!
<<<アアアアアアッ!!おのれッ!!ちょこまかとーーーッ!!>>>
ココリリオンは、苛立ちが募り絶叫した!
邪魔くさくて気持ちの悪い羽虫を、うまく叩き潰せない!
しかもそれが、猛烈な勢いで自らに向かって来るのだ!
不快感のあまり絶叫するのもやむなしである!
しかしココリリオンは、絶叫をしている暇があるならば、より正確にエミーを狙って、何本でも枝槍を放っておくべきであった。
何故なら!
「らあああああーーーーーーッ!!」
次の瞬間、エミーはぐんと、これまで以上に急加速!
そしてミサイルもかくやという速度で、ココリリオンの顔面目掛けて跳躍したのだ!
その握りしめられた右拳には尋常ならざる程の魔力がまとわれている。
世界樹オドオカト・セ・ココリリオンを打ち砕くため......エミーは今できる最高威力の【魔撃】を作りあげ、そしてそれを!
思いきり......猛烈な助走の勢いを加算した上で......世界樹の瘤として浮かびあがったココリリオン顔面の眉間目がけて、打ちつけた!
ズガアアアアンッ!!!
すると鳴り響くは、ココリリオンの枝槍を遥かに凌ぐ大轟音!
そして、その衝撃は周囲に暴風として広がり、ココリリオンが無秩序に作り出した倒木をどこかへと吹き飛ばしていく......。
そんな一撃を食らい、ココリリオンの幹はどうなったか?
......結論から言えば、ほぼ無傷である。
その虹色の樹皮には、わずかにひび割れが生まれたものの、それもすぐに修復された。
強いて被害をあげるならば、枝からパラパラと落ちた葉程度のものである。
<<<ハ......ハハハハハハッ!!効かぬぞッ!!これが、神の体ッ!!ハハハハハハッ!!>>>
殴られた瞬間にこそ怯えの表情を見せたココリリオンだが、そんな自身の状況を感知して態度を豹変。
上機嫌に哄笑を始めた。
「......ちぃッ!!」
一方のエミーは、ココリリオンを殴りつけた反動をうまく使い後方に跳ね跳びながら、無表情のままに舌打ちをした。
しかしそのどす黒い瞳に燃える殺意には、微塵の揺らぎもない!
「らッ......ああああああッ!!」
その証拠に、エミーは着地するや否や、次の一手を打った。
彼女は両腕から瞬時に【黒触手】を伸ばし、編みあげ......世界樹と化したココリリオンの幹にも匹敵するほどの、巨大な武器を作りあげた。
それは、【黒大剣】......ではない。
長い柄に、重そうな幅広の......台形状の刃。
即ちそれは、斧。
【黒大斧】だ!
「ああああああーーーーーーッ!!!」
超巨大な【黒大斧】を、エミーはココリリオンの根元目がけて、思いきり振り抜いた!
カァンッ!!!
すると若干湿り気のある小気味よい打撃音が響き、ココリリオンの虹色の樹皮に......浅い傷がついた!
「らッ!!らッ!!らああッ!!」
エミーはその動作を、超高速で何度も繰り返す!
幹に生まれたその傷は徐々に深さを増し......容易くは修復できないであろう溝を作り出していく!
そう......人間は普通、素手で樹木を殴り倒せない。
樹木を倒すためには、道具を......斧を使うのだ!
これが、人類の、英知だぞ!!
<<<き、貴様ッ!?尊き神の体に、何をするかッ!?>>>
ここで、馬鹿笑いを続けていたココリリオンが、ようやくエミーの蛮行に気づいた。
樹木の体を得て、痛みには相当鈍くなっているらしい。
ココリリオンはすぐさま、エミーに向けて枝槍を放つも......。
「らッ!らッ!!らああッ!!」
当たらない!
エミーは枝槍の発射を確認すると、瞬間移動かと思えるほどの速度でココリリオンの周囲を旋回!
別の地点に移動し、再度伐採行為を始めるのだ!
<<<は、な、れ、ろおおーーーーーーッ!!>>>
ここでココリリオンは狙っても当たらない枝槍に見切りをつけ、その巨体をゆさゆさと揺すった。
すると、その樹上から赤紫色や黄金色をした何かが無作為に落ち始めた。
それは、大量の“精霊の木の実”!
しかも、普通ならりんご大の大きさであるはずのそれは......一つ一つが、人間の体よりも大きく成長している!
さらに言えば!
ドカアアアアンッ!!
その精霊の木の実、着地と同時に爆発する!
許容量ギリギリまで実に注ぎこまれた魔力が、着地の衝撃を受けて暴走するためだ!
まさに、天然の魔導爆弾!
ドカアアアアンッ!!
ドカアアアアンッ!!
ドカアアアアンッ!!
「ああああああッ!?」
その爆撃の密度たるや凄まじく、さすがのエミーも避けきることは不可能だった。
爆発に巻きこまれたエミーは大きく吹き飛ばされ、そして......。
突如として地面から伸びたココリリオンの虹色の根に巻きつかれた!
両手両足に胴体、首......体中をがっちりと拘束され、身動きがとれない!
<<<さて、下等生物の分際で、この我に歯向かったこと......万死に値するぞッ!!>>>
エミーの捕獲に成功したココリリオンは、勝ち誇った笑みを浮かべた。
そしてエミーの近くに、もう一本の根を伸ばす。
その根の先は鋭利に尖っており......まるで槍のようだ。
この根槍で、エミーの体を突き刺し、殺す気なのだ!
なおここで、これまで使用していた枝槍を射出しないのは、エミーの拘束に使用している自らの根が巻きこまれ傷つくことを、ココリリオンが恐れたためである。
<<<さあ、いよいよ貴様が死ぬ時間だ。これで世界はまた一つ、美しくなる!>>>
ココリリオンは嬉しそうにそう口上を述べ、根槍の先端をエミーへと向け......。
<<<邪悪よ、滅せよッ!!>>>
それを思いきり、エミーの腹へと、突き刺した......!
【精霊の木の実】
高濃度の魔力を含んでいるため、魔力回復ポーションの原料となる。
第27章に登場。
【魔導爆弾】
魔力を注いでから衝撃を与えると小規模な爆発を巻き起こすアイテム。
超古代文明の遺物であり、おそらく貴重な物。
考古学者レーセイダが切り札として所持していた。
第26章に登場。




