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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
28 精霊を食べよう編!
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665 森の精霊王ココリリオンとの激突

 ガ、キイイイイインッ!!


 精霊の聖域に、硬質な音が響く。

 巨木の洞から飛び降りその勢いを乗せて振り下ろされた精霊王の杖と、その奇襲に気づいたエミーが防御のためにかざした腕が、ぶつかりあった際の衝撃音だ。

 同時に、衝撃波も発生する。

 精霊王の杖とエミーの腕を起点として発生したそれは、凄まじい暴風となって球状に広がり、光り輝くお花畑の花々を引きちぎって吹き飛ばし、木々をなぎ倒した。


 奇襲を防がれた森の精霊王ココリリオンはそのまま地面へと着地し、バックステップ。

 エミーとの距離をとる。

 その間、精霊王の杖は......物理法則に従わず空中に留まり、高速縦回転しながらエミーに襲いかかった!


「らッ!!」


 常人であれば骨をへし折られ一撃で戦闘不能に陥るであろうその一撃に、エミーは拳をあわせた。

 つまり、殴り返した!

 するとこの打ち合いで力負けしたのは、精霊王の杖である。

 ぶつかり合ったその部位の破片をまき散らしながら、遠くへと飛んでいき......しかしながらまたしても物理法則を無視し、突然飛びゆく軌道を変え、精霊王の下へと戻って行った。


 ザシュッ!!


 鋭い音を立てながら地面に突き刺さったその杖の上部はすっかり砕け、短くなってしまっているが......1秒と経たぬうちに、元の長さへと戻った。

 損壊部分の縁から複数本の枝が伸び、お互いを支えとしてねじるようにして一つにまとまり、杖を修復したのだ!


 復活した杖を掴み取り、エミーに対して戦闘姿勢をとったココリリオンは、ここでようやく口を開いた。




<<<名を名乗れ......とは言わぬ。これ程まで大掛かりに、攻め込んできたのだ。背後におわす天上の者に繋がる痕跡など、素直に残すことなど考えられぬ故>>>




 その言葉の端々には殺気が満ちあふれ、もしも常人がこの場にいたのならば、精霊王の放つその【威圧】の力だけでショック死していただろう。

 それ程の緊張感が、この場には満ち満ちていた。


 対するエミーの返答は。




「......何、言ってるの?」




 実に素朴で簡素な、困惑が多分に含まれた言葉であった。


 ......それも当然である。


 森の精霊王ココリリオンは、エミーのことを、精霊神ピーリースユの敵対派閥が送りこんだ使徒であり、その目的はココリリオンの愛し子ミシュティレを害し、ココリリオン、ひいてはピーリースユにダメージを与えることだと思いこんでいる。


 が、しかし、そんな事実はどこにもない。


 エミー・ルーンは、ただの旅人なのだ。

 うっかり精霊の森に入りこみ、精霊たちと諍いを起こしてしまっただけの、ただの旅人なのだ。

 愛し子の命を狙っているとか、神々の使徒であるとか、そんな背景は一切ないのだ。

 ......反撃の結果、ほぼ一人で精霊の森に住まう精霊たちを狩り尽くしているという事実は、“ただの旅人”で済ますにはあまりにも物騒な戦果ではあるが......。

 とにかくそういう訳なので。

 エミーはココリリオンの一方的な決めつけには、ポカンとせざるを得ないのが実情なのだ。




<<<さりとて、楽に死ねるとは思うな。貴様が忠義より情報を吐かずとも、我は貴様を苦しませるその手を止めはしない......我が愛し子を狙うというその卑劣な性根ッ!断じて、許せぬッ!!>>>


「何、言ってるの?」




 しかしエミーのその呆けた様子も、ココリリオンには演技にしか思えなかった。

 “とぼけて、己をおちょくっている”。

 そうとしか、見えていなかった。

 ココリリオンの心の中を渦巻く怒りの炎が、さらに激しく燃えあがり始めた!




<<<我は、愛が為戦うッ!!この胸焦がす愛が為......貴様のような邪悪はその魂に至るまで、滅却し尽くしてくれようぞーーーッ!!>>>




 そう叫ぶや否や、ココリリオンは凄まじい勢いで後ろに跳ね跳び.......背後に屹立する巨木の幹を蹴って勢いをつけて、杖でもってエミーに殴りかかった!




「何をッ!言ってるのーーーッ!?」




 エミーは訳の分からぬココリリオンの物言いに混乱しながらも、杖による攻撃をさばき続けた!

 右斜め上から振り下ろされたそれを、エミーは後ずさることで回避!

 するとココリリオンはその勢いのまま一回転し、横薙ぎの一撃を放つ!

 エミーは高速で襲いかかる杖の下側から思いきり左腕を振りあげることで、杖の軌道を跳ねあげ、直撃を避ける!

 殴打を受け流されたココリリオンは、思わずバランスを......崩さない!

 下からの衝撃で上に跳ね飛ばされココリリオンの手を離れた精霊王の杖は、しかしやはり物理法則を無視してすぐさま引き寄せられるようにココリリオンの手元に戻る!

 そしてココリリオンは......鋭く尖った杖の先でもって、思いきりエミーの顔面を突く!

 エミーはそれを......歯で噛み止める!

 そしてバキバキと咀嚼し、飲みこみ、杖のリーチを減らす!




<<<ちッ......何なのだ、貴様ッ!!>>>


 さすがに武器をいきなり食われ始めたことに動揺したらしく、精霊王は杖と共に一度後退し、歯を食いしばった。


「それは、私の言葉......」


 バキバキ、ボリボリと杖を咀嚼しながら、エミーは呆れ果てた。


 いきなり、訳のわからないことを言って襲いかかってくる。

 全くもって話にならない。

 思えば、この森の精霊たちは、皆そうだ。


<言ったでしょう?精霊は、アホなのです>


 脳内の同居人であるオマケ様のその言葉に、もはや心底同意しかないエミーである。

 自らを貴び、相手を見下す。

 例外もいたけど、これが精霊の基本姿勢だ。


 自らが、正しいと思っているから。

 もし己が間違っていても、力で叩き潰せば良いと思っているから。

 つまり、自分たちのことを、優秀な上位種族であると思いこんでいるから。


 こういうことになる。


 ......己と同等、あるいはそれ以上の力を持つ者と相対した場合、手酷いしっぺ返しを受けるのだ!




<<<グハアッ!?>>>




 次の瞬間!

 エミーは己が魔力で作りあげた戦闘用鎧の背後から、ノズルを展開!

 どす黒い魔力をジェット噴射させながら猛烈にココリリオンへの距離をつめ、精霊に対するいら立ちを込めたその拳で、思いきりその腹を殴りつけた!

 ココリリオンは思わず杖を手放しながら吹き飛び、自らの居所である巨木に背中を打ちつける!

 しかしその瞳は、エミーを睨みつけたままだ。

 吹き飛びながらもエミーのことをまっすぐ見据え続けているその瞳を、エミーは知覚していた。

 衰えぬ敵意を、知覚していた!




「らあああああーーーーーーッ!!」




 だからこその、追撃!

 ココリリオンが巨木に衝突したその数瞬後にはエミーもそこにたどり着き、もう一度彼の腹を殴った!


<<<グ>>>


 そしてココリリオンの右腕がピクリと動けば、それに続く何らかの動作を防ぐためすぐさま右腕を殴り!


<<<ギ>>>


 左腕が動けば左腕を殴り!


<<<ゴ>>>


 右脚が動けば右脚を殴り!


<<<ガアアーーーッ!?>>>


 左脚が動けば左脚を殴った!

 完全封殺!

 ちなみにその間、何倍もの回数、腹を殴っている!

 地獄の腹パンラッシュだ!

 ココリリオンが殴られた衝撃が巨木にも伝わり、頭上からは宝石の如く輝く大きな葉が舞い落ちて、キラキラと聖域を照らす!




<<<杖ぇーーーーーーッ!!!>>>




 しかしココリリオンも、なされるがままサンドバックになっている訳ではない!

 怒涛の腹パンラッシュを受けつつも、ココリリオンはそう絶叫した!


「!!」


 するとエミーの背後から突然襲いかかって来たのは精霊王の杖!

 高速で縦回転しながら、エミーへと殴りかかる!

 その気配を察知したエミーはとっさに振り向き、杖の中心部を殴りつけた!

 それにより精霊王の杖は真っ二つに折れたが......この隙はココリリオンにとって値千金の時間!


<<<ハッ!>>>


 その時間を使って、ココリリオンは......エミーのラッシュから抜け出した。

 ココリリオンの体は無数の木の葉へと姿を変え、完全にその場から消失。

 そしてエミーからかなり離れた位置に再度出現した。


 真っ二つに折られた精霊王の杖も、主を追うように飛んで行き......二本に分かれたそれぞれが、ココリリオンの足元の地面に突き刺さった。

 そしてさらに、それぞれが再度ねじれるように枝を伸ばして破損部を修復し......二本の杖となった。

 ココリリオンはその二本を掴み両手に構えると、怒りのままに吠えた!




<<<貴様ぁーーーッ!!例え使徒と言えど、下等生物の分際でこの我......森の精霊王ココリリオンへの、乱暴狼藉ッ!!許さんぞーーーーーーッ!!>>>




<あ、この男が、精霊王だったんですね!?>


 非常に今さらな話ではあるが。

 事ここに至って、初めてエミーとオマケ様は、現在戦闘している精霊がこの森の主......森の精霊王であることに気づいた。


「森の、精霊王......」


 いや......薄々、そんな気はしていたのだ。

 常にその身から誇示するように垂れ流される、膨大な魔力。

 殴っても殴ってもまるでこたえていない、耐久性。

 何より、偉そうなその態度。


 何となく......こいつがこの森の精霊王......ないしはかなり偉い立場の精霊であることを、推測はしていたのだ。


 しかし。




「その割に、弱くない?」




 エミーとオマケ様がココリリオンを精霊王だと確信できなかった理由が、その弱さである。

 どうにもこの男、本気で戦っているように見える割には、弱い。

 せっかくその身に宿した素質を、全く生かしきれていないように思えるのだ。


<まあ......王ですから。配下が戦えば良いのですから、自身が強くある必要もないのでは?>


 オマケ様はそう言って、一応の理解を示した。

 エミーも......その言い分を、理解はした。

 理解は、したが。




「これなら、さっきのアカシタルの方がよっぽど強かったし、王っぽかった」




 ついポロリと、思ったことを口に出した。




<<<きッ......ききききききききききききッ......貴様ぁーーーーーーッ!!!>>>




 そしてその一言が......森の精霊王ココリリオンを、激昂させた!

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― 新着の感想 ―
ライバル視してたやつのほうが精霊王らしかったとか、無意識で一番ダメージ与えること言っちゃってますねぇ
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