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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
28 精霊を食べよう編!
653/716

653 花の大精霊アトリコナブト

<<<獣の大精霊殿ッ、お討ち死にィーーーッ!!!>>>




 灰色鎧の中精霊が片膝をつき、光り輝く花々に囲まれながら絶叫する。


<<<<<<<<<............>>>>>>>>>


 テーブル代わりの切り株を囲みながらその報告を受けた大精霊たちは......しかし、実に落ち着いた様子だった。

 さすが大精霊、とでも言うべきか。




<<<ガウーガブが、逝きましたか>>>


 光の大精霊は、抑揚のない声で超然とつぶやき。


<<<クスクス......あの子も、所詮は獣......おバカさんですもの>>>


 花の大精霊は、盃の中の酒をゆらゆらと揺らしながら、愉快そうに嘲笑い。


<<<フン、考え無しに飛び出すからじゃ>>>


 昆虫型の大精霊は、苛立ちを隠しもせず、短く鼻から息を吐いた。


 ......彼ら大精霊はその長い生の中で、“死”というものに、嫌という程接してきた。

 当然、倫理観も生死観も、人間とは異なる。


 仲間の一柱の死。


 ただそれだけのことで、今さら取り乱すような未熟者は、この中には存在しないのだ。


 大精霊たちは冷静に、静かに、言葉を交わし続ける。

 彼らの中では、まるで獣の大精霊ガウーガブの死など、取るに足らない出来事であるかの如く。




<<<しかし......ガウーガブの戦闘能力は、我々大精霊の中でも一番高かったはずですが>>>


<<<我らが王に、『森の守護獣』とまで称えられた大精霊......それがガウーガブ......>>>


<<<クスクス......そんなあの子を打ち倒す、ニンゲン?......私たちが、勝てるのかしら......?>>>




 ......が。

 態度には出していないだけで、大精霊たちは皆、正直に言えば焦っていた。

 獣の大精霊ガウーガブが衝動的にこのお花畑から飛び出していった時、彼らは思ったのだ。


 『ま、あいつなら勝てるだろ』......と。


 それが、まるで戦闘描写を省略されたかの如き短時間で敗戦の一報を聞くことになろうとは。

 全くもって、計算違いも甚だしい事態なのだった。




<<<......仕方がないわね>>>


 と、ここで。

 花の大精霊が切り株の上に盃を置き、静かに立ちあがった。




<<<クスクス......次は私が出るわ。私......花の大精霊アトリコナブトがね>>>




 そして妖艶に笑いながら、そう宣言したのだ。


<<<......しかしのう、花の。お主が戦うとなると>>>


<<<ええ、森が一区画は、死に絶えるでしょうね......クスクス>>>


 微笑みながら花の大精霊は指先に一輪の花を咲かせた。

 その真っ青な花からは一滴、透明な液体が切り株へと滴り落ちる。

 するとその雫が落ちた箇所からジュウジュウという不気味な音が鳴り、その周囲は紫色に変色、さらには溶け始めた。

 魔力により様々な効果が付与された、猛毒である......!


<<<これから私の周囲に咲き誇るのは、一面のお花畑。ニンゲンが脱出できない程、広範囲の、クスクス......猛毒のお花畑。ニンゲンはなすすべなく、この子たちの香りを嗅ぐだけで、死に果てるでしょうね>>>


 そう言って、指先に咲いた青い花の花びらを風に散らしながら、花の大精霊はうっとりと微笑んだ。




<<<すると、ですが、やはり......かなり森が、死にますが>>>


<<<だからこそ、この力は出し惜しみしていたんじゃないの。でもね光の大精霊......今はお堅いことを言っている場合ではないわ>>>


<<<............>>>


<<<クスクス......あとで森の精霊王様に、一緒に怒られてね?お願いよ?>>>


 最後にそうやって、少女然としたその容姿に似合う、可愛らしい笑みを浮かべてから。

 花の大精霊はその体を無数の花びらへと変え、その場から消え去った。

 敵の所在へと、転移したのだ。


 ふわりと舞った花びらの一枚が、彼女の残した盃の上に落ち。


 その酒を......あっという間に、真っ青に染めた。




◇ ◇ ◇




<<<花の大精霊殿ッ、お討ち死にィーーーッ!!!>>>




 ......その数分後の速報が、これである!


<<<......やられましたね>>>


<<<......やられたのう>>>


 残された二柱の大精霊は、重いため息をついた。


<<<それにしても、花のは......どう見ても、ニンゲンに近しい見た目の少女なのに、容赦なくぶっ殺されるんじゃのう......敵には、人の心とかないんか?>>>


 さらに昆虫型の大精霊は、敵の容赦ない殺戮に戦慄し、思わず身震いした。


<<<わかりませんよ。ニンゲンの心理なぞ、わかりたくもない>>>


 そんな昆虫型の大精霊を眺めながら、光の大精霊は吐き捨てるように、そう言った。


<<<あなたにわからないのであれば、私にわかるはずもありません。何せあなたは、世界各地を放浪し、様々なニンゲンと友誼を結んできたのでしょう?>>>


<<<............>>>


<<<精霊でありながら、ある時は一国の将として国土を守り、ある時は復讐者に助力して共に邪悪へと立ち向かった......どこから聞いてきたのか、小精霊たちはあなたのサーガが、大好きですよ>>>


<<<大昔の話じゃ......今となっては、ワシはただの隠居ジジイじゃからのう>>>


 光の大精霊は、とある事情からとにかく人間が嫌いなのだ。

 故に、人間とそれなりにうまくつきあってきた昆虫型の大精霊の経歴には、思う所がある。

 思わず、言葉の調子にトゲが出る。

 昆虫型の大精霊は、そんな光の大精霊の若さに苦笑した。


 しかし。




<<<......逃げても、良いのですよ?>>>




 次に続いた光の大精霊の言葉には......皮肉ではなく、確かに昆虫型の大精霊の無事を願う彼女の気持ちが、こめられていた。


<<<この森は、あなたの故郷ではない。あなたは私とは、違う。あなたが命をはって、この森のために戦う必要は、ないでしょう?>>>


<<<いいや......逃げんさ。森を荒し小童共を屠りおった敵を、許すわけにはいかん>>>


 しかし昆虫型の大精霊は、そう言って首を振った。


<<<それにワシは、森の精霊王様に感謝しとるんじゃ。こんなにニンゲン臭いワシに、終の棲家を与えてくださったんじゃからのう......恩義は、返さねばならん>>>




 そして昆虫型の大精霊は、静かに立ちあがった。

 彼には、3対の脚がある。

 1対の脚で、彼は地面を踏みしめ。

 そして残りの2対の脚......4本の腕で、腰に差していた4本の刀を抜き放った。

 4刀流......それは彼が振るう、人間には身体的な制限から容易く真似のできない恐るべき戦闘技法......!




<<<ワシには巨体もなければ、毒もない。しかし、友から学んだ技がある>>>


 ザン!

 ザン、ザン、ザン!


 ......静かに語りながら振るうは、目にも止まらぬ神速の四閃!


 パラリ、と。


 彼の目の前を舞っていた花びらが、細切れになって散った。


<<<ワシは必ずや、残虐な敵を討ち果たして見せよう!>>>


 ブブブッ!

 昆虫型の大精霊の背中から透明な羽が展開され、高速で動き始める!

 すると彼の体は、フワリと宙に浮かんだ......!




<<<お主の技を借りるぞ、ジローサン......!>>>




 最後に。

 今は亡き、大昔の友に向かって、静かにつぶやいてから。


 昆虫型の大精霊は、お花畑を飛び出して行った!

【ジローサン】

 第13章にて言及のあった、かつて活躍していた転生者らしき人物。

 死闘の末、闇組織『ダークドラゴン』を滅ぼした。

 “敵をなめくさり戦力を逐次投入した結果、それらの戦闘を通して成長した敵に撃ち滅ぼされるという愚行”は、この世界アーディストでは『ダークドラゴンの誤り』と呼ばれており、この故事は現在もアーディストの闇社会において脈々と語り継がれている。

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― 新着の感想 ―
エミーは毒に強いからなぁ、強みを生かせない花の大精霊は相性が悪すぎた
花の大精霊の見せ場カットされてて草
がんばれ直哉····っじゃない昆虫型の精霊
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