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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
28 精霊を食べよう編!
649/716

649 邪悪な精霊鼬

<<<ギ!?ギ!?ギーーーーーーッ!?痛い痛い痛いーーーーーーッ!?>>>


 ルクトリアに殴り飛ばされた鼬の中精霊ファルウィーゼルは、じたばたと暴れながら無様に泣き叫んだ。

 周囲には無茶苦茶に風が吹き荒れ、あまりの強風のため周囲の樹木の枝が数本折れ、地面へと落ちる。


「ちィ......」


 追撃をしかけようにも、無秩序に吹き荒れる局所的な嵐をかいくぐる術がない!

 ルクトリアは小さく舌打ちをした。


<<<おいニンゲンッ!!お前、オイラをッ!!お前ッ!!オイラをお前お前お前お前お前ーーーーーーッ!!>>>


 そうこうしている内に強風は止んだが、ファルウィーゼルの激昂は治まっていない。

 緑色の体毛は逆立ち、顔は真っ赤。

 さらには、怒りのあまり言語能力が著しく低下している!

 危険だ!




<<<ギーーーーーーッ!!!>>>


 そして、次の瞬間!

 ファルウィーゼルは、風の刃を......【風刃】を、放った!


「!!!」


 その不可視の刃は、瞬きする間にルクトリアへと届いた。

 【風弾】など、比べるまでもない速度。

 避けようがない。

 ルクトリアが身動きをとれないうちに、【風刃】は。


 ルクトリアの、金色の前髪を一直線に斬り裂き。


 彼女の額に、横一文字、傷をつけ。




 ......しかし彼女の頭を刎ね飛ばすことなく、そこで止まった。




「......ハッ、ハッ......ハッ」


 ダラリと、額から流れ出た血がルクトリアの顔を染め。

 全身から一斉に、冷や汗が流れ出る。


 そうしてから、ようやく、ルクトリアは荒い息を吐いた。


 彼女は死んでいたのだ。


 ファルウィーゼルが......“手加減していなければ”。




<<<キキキキキキッ!キキキキキキッ!びびってやんの、びびってやんの!狂犬姫様が、びびってやんの!キキキーーーッ!!>>>


 ルクトリアの真っ青な顔を見て、ファルウィーゼルは大喜びしながら笑った。

 しかし、その表情は鬼の形相だ。

 未だ、怒り狂っている。




<<<決まったぞ、お前の味付けが!それは......“恐怖”だ!>>>


 そう叫びながら、ファルウィーゼルは何度も【風刃】を放つ。

 首の薄皮一枚と、後ろ髪がばっさり斬られた。

 まずは、右側。

 そして、左側も。




<<<怯えろ!恐れおののけ!魂を、縮こませろ!コリコリになー!!>>>


 次いで、ルクトリアの右頬目がけて飛び来る、二閃の【風刃】。

 彼女の頬に、十字傷ができる。




<<<さあ、これで“調理”も、しあげといこうか!>>>


 そしてファルウィーゼルは最後に、己の頭上に巨大な【風刃】を作り出した。

 三日月めいた形状のそれには、これまでの【風刃】とは異なり、どうやってか......あえて緑色に、着色がなされている。

 視認可能にすることで、恐怖を高めようとしている!




<<<魂震わせ、無様に死ねよニンゲンーーーーーーッ!!!>>>




 ファルウィーゼルは喜色満面の笑みで、涎をたらしながら......巨大な【風刃】を撃ちだそうとした。

 ルクトリアは思わず、本能に抗えず目をつぶる。


 ああ、哀れ、ルクトリアは!

 このまま首を刎ねられ、下劣な精霊に、その魂を貪り食われるのだ!




 ......ただし、それは。


 本来の、運命。




 神々の、筋書きを。


 打ち壊す程の存在が、いなければの話である!!




<<<ヒュピピピピーーーーーーッ!!!>>>




 ちょうど、その時だったのだ!

 笛の中精霊の......【精霊大警笛】が、鳴り響いたのは!


<<<あーーー!?>>>


 その大きな音に驚き、ファルウィーゼルは【風刃】を霧散させた。


<<<なんだ、あのクズ笛野郎!今、良い所だったのにー!>>>


 そして笛の中精霊に対して、悪態をついた!

 笛の中精霊は、嫌われていた......。




「すーーーっ、ふーーーっ......」


 一方のルクトリアは、その隙に血と汗をぬぐい、深呼吸を繰り返した。

 意識的に精神を安定させ、体内に魔力を巡らせ、事態を打開すべく頭脳を回転した。


<<<ギーーー......なんだ、ニンゲン。もう平常心に戻りやがった。これだから、英雄の器は嫌だ!扱いにくい!>>>


 そんなルクトリアに対し、ファルウィーゼルは唸りながら無造作に【風弾】を放つ。


 ドン!

 ダン、ドン、ドン!


「あ、ぐゥッ......!?」


 体のあちこちを不可視の砲弾で撃たれ、ルクトリアは立っていられない。

 無様に、地面に転がった。

 その様を見て多少は気持ちも落ち着いたのか、ファルウィーゼルは静かにつぶやいた。


<<<本当は、オイラも救援に向かうべきだが......それは無しだ。笛野郎なんぞ、どうなっても構わない>>>


 笛の中精霊は、嫌われていた......。


<<<それよりも、お前だルクトリアだ!オイラはお前を、担当する!オイラたちは、森の精霊王様から侵入者の排除を命じられている!つまりはお前を相手取っていたから救援に向かえないのは、仕方がないことなんだ。キキキキキキッ!>>>


 さて、そしてファルウィーゼルはそう言って厭らしく笑うと、ルクトリアの全身を“薄緑色の球体”で包みこみ......ふわりと宙に、持ちあげた!

 その球体はしゃぼん玉のような儚げな薄さでありながら、ルクトリアが中でどれだけ暴れようと、決して破れることはなかった。


<<<驚きも恐怖も、“一度目”が最上だ!というわけでお前には、この【風膜】を味わってもらおうかな!キキキッ!>>>


 ふわふわ浮かぶ“ルクトリア入りのしゃぼん玉”の周りを楽しそうに飛び回りながら、ファルウィーゼルは楽しそうに笑った。


<<<良いか!この膜は、外界との物の出入りの一切を遮断する!当然食べ物も水も、もはやお前には届かないが......それ以前に、もーーーっと大事な物を、お前は手に入れることはできない!それが何か......頭のよろしい狂犬姫様には、わかるでしょうかーーー?>>>


 ニヤニヤ笑うファルウィーゼルとは対照的に、ルクトリアの顔は真っ青だ。

 ルクトリアに届かない物。




 それは、“空気”だ。




 狭いしゃぼん玉の中に閉じ込められていれば......さほど時間が経たないうちに、ルクトリアは呼吸困難に陥り、死へと至るだろう!

 その様を、この下種鼬は外から眺めながら、楽しむつもりなのだ!

 なんという邪悪!


<<<暴れんなよーーー?暴れたら余計に、空気もなくなるからな!......それじゃ、せいぜいその素晴らしい頭脳を働かせて、この問題を解いてみると良い!もちろん答えなんて、用意してないけどな!キキキーーーッ!>>>

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― 新着の感想 ―
英雄の器か。 このご令嬢も、もしかしなくても神々の被害者かいな…。 彼女がいくら頑張ろうと、シナリオの強制力で結局はこうなってたんやろうなぁって。んで死ぬ。 エミーが居なければ、の話やけどね。
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