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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
28 精霊を食べよう編!
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642 神々のパッチワーク

 パチリと目を覚ますと、目の前の焚火はすっかり消えかかり、白い灰と黒焦げの枝、いくつか残る赤い光点だけが残っていた。

 焚火の前で、座ったまま寝ていたみたい。


 ちょっと、失態。

 油断しすぎた。

 素早く【魔力察糸】を周囲に展開......するも、動く生き物の気配なし。

 ほっと、息を吐く。


<ふわあ、あ、あ......あれ、もう夜ですか>


 私の中で、オマケ様も目を覚ます。

 その声に釣られて、頭上を見あげる。

 夕日で真っ赤だったはずのそこは、今や満点の星空。


 ドサリと仰向けに倒れ、しばらく星の瞬きを眺める。

 そよそよと風が吹いて、私の頬をくすぐる。

 気持ち良い......。


<暑すぎず寒すぎないっていうのは、良いことですねぇ......>


 オマケ様が、しみじみとそんなことを言った。

 私も同感。

 なんてったって、今までいた場所が、酷すぎた。


 ゴロリと転がりうつ伏せになってから立ちあがると、崖の上からどこまでも広がるラサナスキロス大砂漠を眺める。

 崖の上......つまり私は今、ラサナスキロス大砂漠の西端、隣のエリアとの境目にある大岩壁の上にいる。


 眼下には、星々の光を受けて、仄かに輝く白い砂。


 強制的に大監獄に転移させられて、災厄に襲われて......倒したは良いけど、魔力不足で暴走して。

 思えばよくもまあ長いこと、あんな過酷な場所にいたもんだ。

 そこに住んでる人たちには、ちょっと失礼な言い方になるけど。


<自由に動けるようになってからも、しばらく大型魔物狙いで大砂漠をうろちょろしてましたからねぇ>


 まあね。

 自分のお腹を眺めながら、撫でる。

 あれだけ食い散らかしても余分なお肉が少しもつかない、美少女のお腹だ。


 そのお腹が大きく、ぐううと鳴った。


<......まだ、お腹空いてます?>


 オマケ様が心配そうに、問いかける。


 うん、まあ、空いてる。

 まだまだお腹空いてる。


 でも大丈夫。

 昼間、私、崖の下であの少年に、理性的な対応できていたでしょ?

 もう、暴走することはないと思う。


<本当に、気をつけましょうねエミー。暴走の果てに神に目をつけられ討伐対象にでもされたら、たまりませんからね>


 そうだねぇ......。


 しばらく大砂漠の風景を眺めていると、再び風が吹いた。

 砂漠は昼は暑く夜は寒い。


 だから大砂漠では、この時間に吹く風は大分寒かったけど......ここではそうではない。


<一般的には、この風も結構冷たいはずです。季節的には、今は真冬ですから。あなたが丈夫なだけですよ、エミー>


 それでも大砂漠に比べたらマシだ。

 なんで崖を登っただけで、こんな風に気候が一変するの?

 年中暑い砂漠の真横の崖の上なのに、ここには季節があるの?


<よく、幻想大陸ニージアルは、“神々のパッチワーク”であると言われます。様々な気候、地形、政治形態が、時に脈略なく隣り合わせに配置されています。なんでとか、考えない方が良いです>


 適当な大陸だなぁ......。


<幻想的な大陸なんですよ>




 そんなことを言いながら、私は大砂漠とは反対側に振り向く。

 そこにあるのは美しい......それこそ幻想的な森だ。

 その森に生える木々はどれも宝石のような樹皮と葉を持っていて、夜でも光り輝いている。

 地面に生える草や苔も明るく発光していて......その中を、草木に照らされながら、いくつも小川が流れているわけだ。


 うん。

 前世では絶対に見ることができなかったであろう、実にファンタジーな森だ。

 美しい。


<さすがは、精霊の森。観光神が『一度は訪れたいアーディストの名所百選』に選んだだけは、ありますね>


 ......それも、映像が配信されていたりするの?


<はい。異世界転生配信ではなく、アーディストの美しさをピーアールする公的な配信に近い物ですが>


 ふーん。

 ......そんなに有名な場所なんだ。


<はい>


 だから、オマケ様は。


<なんでしょう>




 探検したくて......ウズウズしてるんだ?




<ば、ばれてましたか?>


 ははは、何年一緒にいると思ってるの。

 オマケ様、配信で視た有名な場所に、行きたがるじゃない。

 ここもそうなのかなって、思ったんだ!


 どうせ変な時間に寝ちゃったせいで、目がさえているんだ。

 夜のお散歩に行こうじゃない。


<でも、夜の森歩きは危険ですよ>


 私に向かって、それは今さらじゃない?

 それに見てよ、オマケ様、この森を。

 木々や草が光っているから明かりには困らないし......下草も、草刈りしているかのように全然伸びてない。


<そういう種類らしいですね>


 つまりは、滅茶苦茶歩きやすいよ。

 獣の声もしないし。

 実のところ、かなり安全な森なのでは?


<........................うーん>




 と、ここで。

 オマケ様は何か考えているのか、しばらく沈黙していたけど。


<......うん、大丈夫!多分、大丈夫です!行きましょう!行ってみましょう!>


 そう言って、精霊の森ナイトツアーにゴーサインを出した!


 よっしゃ、そうこなくっちゃ!

 だから私は、焚火痕をぐりぐり踏みつけて完全に火を消すと、元気よく森に向かって歩き出したんだ!

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