618 【冒険者ミトラン】レディの、秘密
ドドドーーーンッ!!!
レーセイダさんが隠し持っていたもう一つの魔導爆弾が黄金の四角錐の真下で爆発し......もの凄い大爆発を起こした。
「うわ、と、とととぉっ!?」
爆発の直前に黄金の四角錐から飛び降りていたボクは、爆風に煽られて立っていられず、コロコロと砂漠の砂の上を転がった。
でも何とか四つん這いになって動きを止めて、目を細めながら黄金の四角錐を睨みつける。
黄金の四角錐は......体の真下で爆発が起きた衝撃によって、のけぞるような体勢になっていた。
残念なことに、その脚やハサミは煙をあげながらも、ワシャワシャと動いている。
あれだけ凄い爆発を食らっておいて、まだ生きているの!?
体をのけぞらせている今なら良くわかるけど、あの超巨大ヤドカリは、中身が空洞の“黄金の四角錐”の中に、自らの巨体を押しこめている。
前方には、固い甲殻で守られた脚やハサミなど。
後方には、ヤドカリ特有の柔らかそうな腹部がギチギチに詰めこまれている。
もう少し奥の方で爆発が起きていれば......その一撃で腹部に攻撃できて、倒せていたんだろうけど。
どうやら爆発の衝撃を受けたのは甲殻に守られた部分であり、ヤドカリの柔らかな腹部は、それ程ダメージを受けなかったらしい。
「ギジャアアアアーーーーーーッ!!!」
「ひっ!?」
と、ここで。
のけぞったままの黄金の四角錐が、これまでにない程の大音量で咆哮をあげた!
ビリビリと、肌が震える。
ひいい......あれ絶対、滅茶苦茶怒ってるよぉ......!
そして黄金の四角錐は、ハサミを滅茶苦茶に振り回して、その反動で体勢を立て直していく。
つまり、今あの超巨大ヤドカリの殻は、爆発の影響で後部が若干砂にめりこみ、そのせいで腹部丸見え屹立体勢になっているんだけども!
それが、ゆっくりゆっくり、元に戻っていく。
あれが、完全に地を這う元の体勢に戻ったら。
真っ先に襲われるのは......!
「皆、危ないっ!」
ボクは砂を蹴り、何度もこけそうになりながらも必死に走った。
目指すは、黄金の四角錐の眼前で立ち止まっている、レーセイダさんたちだ!
もぉーーーっ!
なんで皆、逃げてないの!?
このままだと、襲われちゃうよぉっ!
そう思ったボクは冷や汗をかきながら、皆の方に駆け寄っていったんだけど。
......実は皆は、逃げていないんじゃなくて、逃げられなかったんだ。
「お、おいレディッ!?一体何を、しているんだッ!?」
ボクがその事実に気づいたのは、ハリシュアラップさんのそんな困惑に満ちた悲鳴を聞いたからだ。
それまでハリシュアラップさんの指示を忠実に守り、ボクたちをここまで運んできてくれたワラジムシのレディが......体を揺すってハリシュアラップさんのことを、振り落としていたんだ!
さらにはレディは体を乱暴に動かして、自分とそりを繋いでいた縄を、切ってしまった!
「キュルルッピーーー......!」
混乱するハリシュアラップさんを尻目に、レディはその脚をカサカサと動かし、黄金の四角錐へと向き直る。
そして......。
「キュルルッピーーーッ!!」
......気迫に満ちた咆哮を一声あげてから、猛烈な勢いで走り始めた!
目指すのはもちろん、黄金の四角錐だ!
まるで風のようなスピードで真っすぐに走る、レディ。
でもその疾走は、彼女にとっては単なる助走に過ぎなかった。
「キュルルッピ!」
レディは少し走った後に......ぴょんと。
跳躍したんだ。
そして。
そして......!
「キュルルッピーーーーーーッ!!!」
空中でその大きな体をぐるんと丸めて!
......球体へと、その姿を変えたんだ!
「そんなッ!?嘘だろう、レディッ!?まさか、お前は......!!」
その様を、サングラスを押しあげ目を真ん丸に見開いて見つめ、ハリシュアラップさんは叫んだ!
「伝説の聖獣......ダンゴムシ、だったのかーーーッ!?」
「キュルキュルキュルキュルキュルーーーッ!!」
球体になったレディは超高速で回転し、これまで以上の勢いでもって黄金の四角錐へと突撃していく!
その全身には可視化されるほど濃密な魔力をまとっており、その力を使ってかぐんぐんと速度が増していく!
「キュルッ!!」
そして黄金の四角錐に十分に近づいたレディは、その勢いのまま跳ね跳び!
「キュルルッピーーーーーーッ!!!」
まるで砲弾のように、黄金の四角錐のハサミや脚の付け根の部分へと、体当たりをした!
ギャリギャリギャリギャリギャリッ!!
黄金の四角錐とレディの甲殻がぶつかり合い、金属同士がこすれるような甲高く不快な音が周囲に響き、火花が散る!
「ギジャアアアアーーーッ!?」
黄金の四角錐は痛みに耐えながら、レディを自重で押し潰すため、ハサミを無茶苦茶に振って倒れようとする!
「キュルルッピーーーーーーッ!!!」
だけどレディは、負けなかった!
くるくる回る花火のように、全身から魔力を噴出させて......空中にいるにも関わらず、その回転速度は増していく!
そして、ついには!
ギャリーーーーーーンッ!!
最後に、そんな甲高い音を鳴らしながら。
レディはぐんと、倒れようとする巨大な黄金の四角錐を、押し返したんだ!
「ギ、ギ、ギジャアアアアーーーッ!?」
黄金の四角錐はなすすべなく真後ろに倒れ、ひっくり返った!
四角錐の先端が砂漠に深く突き刺さり、もはや身動きがとれない!
情けなくワシャワシャと動く2対の脚は、空を掴むばかりだ!
「......ようしっ!」
それを見たボクの脳内で【超ひらめき力】が発動し、今ボクがすべきことが明確なビジョンとして高速再生される!
ボクはそれに従って......再度駆けだした。
向かう先は、黄金の四角錐を弾き飛ばして柔らかな砂の上に落ち、現在はぜえぜえと息切れしているような様子を見せる、レディだ!
「レディ!背中を借りるよ!」
「......キュルルッピーーーッ!」
ボクはレディの硬い背中に跳び乗るとそれを蹴り、高く高く......巨大な黄金の四角錐よりも高く跳びあがった。
そして空中にいながらにしてスラリと腰から剣を抜き、上段に構える。
「とりゃーーーーーーっ!!」
さらには【超戦闘勘】に導かれるまま、体と魔力を動かして......落下の勢いも利用しながら、その剣を思いきり振りおろす!
狙うは黄金の四角錐の......超巨大ヤドカリの、隠された柔らかなお腹!
ズバッ!!
ボクの剣は......そしてボクの剣から放たれた魔力の斬撃は、ヤドカリの弱点を深々と傷つけた。
「ギジャアッ、ア、アアアーーーーーーッ......!?」
黄金の四角錐は苦痛にまみれた絶叫をあげる!
黄金の四角錐を斬りつけたボクは、弾力のあるそのお腹を蹴って、すぐさまその場から離れる。
だけど、【超戦闘勘】がサポートしてくれたのは、そこまでだった。
ボクはバランスを崩しながら砂漠の砂の上へと落下し、そして......。
「ぶぶっ!?」
頭から、砂の中へと埋まった!
「ぺぺっ!し、しまらないよぉ」
なんとか砂の上へと這い出したボクは口から砂を吐きだしながら、黄金の四角錐へと目を向ける。
そこにあったのは......頂点が砂へと突き刺さり逆さまになった、超巨大な四角錐だ。
ヤドカリのハサミや脚はもはや動かず、ダラリと力なく、地面に向かって垂れさがっていた。
「やった......?」
しばらく見ていても、その様子に変わりはない。
黄金の四角錐は、ピクリとも動かない。
つまり。
ボクたちは!
「勝ったーーーーーーっ!!!」
ボクはぴょんぴょん跳び跳ねて、喜びを爆発させたよ!




