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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
26 探せ黄金の四角錐!大砂漠疾走編!
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613 王と、バケモノ

 彼は、西の砂漠に住まう、“王”であった。


 長く、長く生きて......いつしかその力は、砂漠に住まう誰よりも強くなり。

 その皮膚は、誰よりも硬くなり。

 その体は、誰よりも大きくなった。


 もはや彼に敵うものはいなかった。




 かつては、いたのだ。

 王の座を奪うため彼に挑みかかる、血気盛んな愚か者も。


 それは大きなサソリであったり、竜であったり、ユムシであったりしたが......。


 結局は全て、身の程知らずのでくの坊でしかなかった。


 彼は全ての挑戦者を一撃のもとに葬り去り、自らの成長の糧としてきたのだ。




 今ではもはや、西の砂漠には、彼に歯向かう者はない。

 彼の姿を見たら、逃げ出すか......あるいは少しは知恵の回る者ならば、服従の意を示す。

 贄を差し出す者も、いるか。


 とにかく、そんなことばかりだ。


 こうなってくると、彼の生は、途端に退屈なものと化した。


 暇で暇で、しょうがない。


 以前は煩わしかった......挑戦者に来てほしくて、たまらない。


 だから彼は、少しでも挑戦者の数を増やすためも、手入れをすることにした。


 例えば、見込みのありそうな魔物を捕まえて餌を与え、大きくしてみたり。

 例えば、魔物の集落を襲ってワザと残虐に殺し、復讐心を植えつけてみたり。


 色々と、やった。


 そう言えば、大昔には西の砂漠にも存在していた、二本足共の国を滅ぼしてやったこともあった。

 これも、復讐者育成の一環だ。


 何せ、彼は西の砂漠で一番強くて硬くて大きい。

 何をやろうとも、自由だった。

 ......しかしながら、望む結果が出たとは、言い難い。


 ボチボチと、彼に挑む個体は現れたものの......全てが、弱かった。

 プチッと潰して、それでおしまい。

 二本足共は、そこそこ粘ったが......ここ数百年は挑戦してこない。

 期待外れだった。

 しかし、二本足共に関しては......お気に入りの戦利品を強奪できたから、まあ良しとしているが。


 とにかく......つまらない生が、いつまでも続いていた。




 ......一月前、までは。




◇ ◇ ◇




 一月前、砂漠の南側に存在する......塔が、突然崩れたらしい。

 何があったかは、わからない。

 『あの塔には、近づいてはならない』。

 そんな習性が、大いなる何者かから、彼ら砂漠の魔物たちには、植えつけられていたから。

 まあ、その詳細については、どうでも良い。


 とにかく、塔が崩れた。


 それから、気の狂いそうになるような悪臭が広がり、雪が降った。


 そして。




 得体の知れない......“恐ろしい者”が、この西の砂漠に現れたのだ。




◇ ◇ ◇




 彼も、その存在の出現には、気がついていた。

 塔が崩れて以降、ピリピリ、ピリピリと。

 何か、嫌な感じがしていたから。

 生存本能が、『逃げよ』と、警鐘を鳴らしていたから。


 しかし、彼は王なので。


 怖いから逃げますとは、ならない。


 むしろ彼は、真っ先に逃げ出した巨大ユムシを始めとする魔物たちのことを、鼻で笑っていた。

 強者としての、気概がないのかと。


 そう。


 そうなのだ。


 彼は、王なのだ。


 最近現れたその存在は、目につく魔物を手当たり次第に狩り殺し、食っているらしい。


 そんなこと、許して良いのか?

 彼は王であり、強者であり、西の砂漠は彼の縄張りである。

 その縄張りで、挨拶もなしに、好き勝手する新入り!

 許すわけには、いかない!


 そう思った彼は、ついに重い腰をあげた。

 彼はのっそりと体を動かし、新入りが暴れているという南の地へと進み。

 かの地で、初めてその新入りと、対面した。

 対面とは言え、遠目で見た......ただそれだけであるが。




 彼は......後悔した。


 くだらないプライドに背を押され、この場に赴いてしまったことを......心の底から後悔した。




 それは......その新入りは、バケモノだった。

 悍ましく恐ろしい、バケモノだった。


 色は、どす黒く......白い砂の上にいるので、良く目立つ。

 形状は......遠目から見た彼には、毛玉のように見えた。

 しかしその毛玉を構成する“毛”の一本一本は、実はそれなりの太さを持つ触手であり、ゆらゆらと不気味に蠢いている。


 触手の塊。

 そう、そのバケモノは、触手の塊だった。




 彼がその新入りと対面した時、それはちょうど、トカゲの群れに襲いかかるところであった。

 トカゲ共は、彼には敵わないまでも、強者である。


 その巨大な体は力強く、その牙は獲物の肉を容易く切り裂き、さらに体表には鋭いトゲまで生えている。

 それが群れをなしているのだから、並大抵の魔物では、トカゲ共には敵わないのだ。


 バケモノは、そのトカゲ共を。


 ......蹂躙していた。




 びゅんと一本、触手が伸びると......トカゲはその脳天を容易く貫かれ、死んだ。

 びゅんと一本、触手が伸びると......トカゲはその巨体を真っ二つに斬り裂かれ、死んだ。

 びゅんと二本、触手が伸びた場合には......トカゲはその二本の触手に絡みつかれ恐るべき膂力によって引きちぎられ、死んだ。


 とにかくその触手玉は、トカゲ共を、一心不乱に殺していた。

 助けを求める悲鳴など意にも介さず、殺しつくしていた。


 そして殺されたトカゲの肉に、その触手玉はしあげとばかりに、触手を突き立てるのだ。

 するとトカゲの体はみるみるうちに干からび、カサカサになっていく。

 どうやらそれが、触手玉の捕食行動らしい。

 たまに、肉付きの良いトカゲについては、わざわざ触手玉本体の近くに引き寄せ、それにのしかかるような体勢をとり、何かしていたが......。

 その時には、トカゲ肉の全てが触手に覆われていたので、何をしているのかはわからなかった。

 再度触手玉が動き出した時、トカゲの肉も骨もきれいになくなっていたので、多分食べていたんだろう。

 触手による捕食との違いは、良く分からない。


 ......と、ここまで呆然としながらも観察を続けていた彼は。

 その触手玉のバケモノの視線が。


 己に向けられたことに、気づいた。


 悍ましい、殺気が向けられたから。




 その瞬間、彼は。

 あの触手玉と比べると、自分は。


 まるで、小さなダニのような存在である。


 そのように、錯覚した。

 一瞬で、力量差を知覚してしまったのだ。




 だから。




 彼は悲鳴をあげ方向転換し、驚くべき速さで逃走を開始した!


 だめだ!

 あれは、だめだ、敵わない!

 王だろうが何だろうが、とにかくあれには敵わない!




 その際には、彼にくっついて来ていた手下共の内、肉付きの良い数体を適度に殺しておいた。

 触手玉の餌にするのだ。

 あのバケモノが餌を貪り足を止めている間に、自分だけは遠くに逃げるのだ!


 とにかく、逃げなくてはならないのだ!




 彼は、心の中に悍ましい触手玉への抑えきれない恐怖と、王としてのプライドを傷つけられた激しい怒りを抱えながら。


 西の砂漠を北に向かって、駆けて行った。


 そんな彼の......王の尋常ではない様子を見て、他の魔物たちも北へと逃げ始める。

 そんな魔物たちの様子を見て、さらに別の魔物たちも逃げ始める。

 そういう連鎖の、結果として。


 西の砂漠......魔物の住処にて。

 全ての物をなぎ倒す勢いで走り続ける......多種多様な魔物の群れによる......スタンピードが、発生したのだ!

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― 新着の感想 ―
な、なんて凶悪なマモノナンダー
スタンピード起こす側になってて草 てか触手の塊形態まだ続いてんのかw
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