表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
5 エミー、メイド見習いになる!初めてのお友達編!
46/716

46 “馬車襲撃”~イーマの視点から~

こっそり更新再開しますよ~(小声)。

しばらくは、休日は毎日、平日は気まぐれに更新します。

「オラッ!中の奴ら出てこい!無駄な抵抗すんじゃねえぞォ!」


馬車を蹴りつけながら、外で盗賊が怒鳴り声をあげているのが聞こえる。


「お、奥様......」


眼鏡をかけた地味な顔立ちのメイドが、震えながら主人に顔を向ける。


「......降りましょう」


質素ながらも上品なワンピースドレスに身を包んだ女性、イーマ・サラー男爵夫人は青い顔をしながら、それでも凛とした表情を作り、よく通る声でそう言った。


「そうね。ここに閉じこもっていても、どうしようもないもの」


その言葉に賛同する幼い声を聞き、夫人とメイドはもう一人の馬車の同乗者の方を見やる。

その声の主は桃色髪の美しい少女。

イーマの一人娘、サラであった。


「さっき外を覗いて、盗賊たちの様子を見てみたの!あいつら、大体10人くらいでこの馬車を取り囲んでいるの!」


サラは怯える様子もなく、鼻息荒くこう言った。


「だから、私たちが大体1人につき3人倒せば良いの!簡単な計算なの!」







「はい、計算は良くできました。でもそういう言葉は、せめて初歩魔法がちゃんと使えるようになってから言うものよ」


「あう......」


イーマは愛娘を優しく抱きしめた後、その体をメイドにあずけた。


「......私が交渉してみましょう。あなたは、サラをお願い。隙をみて、なんとか逃げ出して」


「は、はい!お、おま、おまかせください!私の、私の命に代えましても!お、お嬢様は、かかか、必ず助けてみせます!」


「逃げないの!私も戦うの!むーっ!むーっ!」


下手に盗賊を刺激してはいけない。

イーマとメイドは騒ぎ立てるサラの口を抑えながら、馬車から降りた。








そこで待ち構えていたのは、体の大きなひげもじゃの男だった。

両脇には、顔の細長い眼帯の男と顔の四角い眼帯の男が控えている。

おそらくあのひげもじゃがこの盗賊団のボスで、その取り巻きが幹部なのだろう。


今の時刻は午後3時ころ。

夏の日差は強くじりじりと肌を焼くが、イーマは緊張のあまりその不快感にすら気づかない。


「ほー......美人だ美人だと噂にゃ聞いちゃいたが、こいつはなかなか上玉じゃねぇか」


ひげもじゃはイーマを厭らしい目線で舐めるように見たあと、にやけながらそう言った。


「へへへ!とても子ども一人産んだ母ちゃんにゃみえねぇ!」


「で、サラとか言ったか?娘ちゃんも大層かわいらしいじゃねぇか!へへへ!こいつは高く売れそうだぁ!」




盗賊たちの下種な会話を聞きながら、イーマは内心で舌打ちをした。

この連中は、イーマたちが誰であるか知ったうえで、襲撃をかけている。

この襲撃は場当たり的なものではないのだ。


「......何が目的ですか?」


イーマは時間を稼ぐため、交渉を開始した。

時間を稼ぐと言っても、偶然冒険者のパーティがここを通りかかるとか、そういう奇跡を期待するための行動である。

ここはテーニディース国サラー男爵領を通る街道。

左右を森に挟まれた田舎道であり、人の往来は滅多にない。

つまり、イーラの行動が報われる可能性は、かなり低いわけだが。


「あなた方の口ぶりから察するに、我らがサラー男爵家の者であることは、重々承知のはず。なぜ私たちなのでしょうか?こんな貧乏男爵家を脅したところで、出せる身代金などたかが知れていますよ?」


そう、サラー男爵家は裕福な貴族ではないのだ。

イーマ自身はもともととある伯爵家の出なのだが、実家との関係はあまり良くはない。はっきり言って、悪い。

サラー男爵家に嫁いだ彼女を助けるため、実家が身銭を切るなどあり得ないと確信できるほどには。


「そりゃあよう、頼ま......オゴッ!?」


何かを喋ろうとした顔の四角い眼帯男を、ひげもじゃが殴り飛ばした。


「奥方様は知らねぇか?器量良しってのは、それだけで高く売れるんだ。それこそ、オレらみてぇなのがしばらくは糊口を凌げるくらいにはな。ははは!」


「「「へへへへへへっ!」」」


ひげもじゃのボスに追従して、手下どもが笑い声をあげる。

その隙に目線を動かしてイーマは周囲の様子を探るが、やはりどうにも状況は悪い。

御者をしていた男性使用人は、生きてはいるようだが、殴り倒され地面に臥せている。

護衛に雇ったはずの冒険者3名は、盗賊どもと一緒になってイーマたちを囲んでいる。

グルだったのだ。


「さぁ野郎ども!さっさとこいつらを縛り上げろぉ!アジトに運ぶぞぉ!」


「「「へいっ!お頭!」」」


ひげもじゃの号令のもと、盗賊たちはイーマやサラ、メイドに掴みかかる。

サラの口を押え、体を抱きしめていたメイドも乱暴に突き飛ばされ、地面に転がった。






「こ、こら!やめるの!その薄汚い手を離すの!」


そうなると、口を押えられ黙らされていたサラが騒ぎ始めるのは、彼女の性格上必然のことであった。

彼女は人一倍負けん気が強く、全く物怖じしないのだ。


「へへへ、威勢の良い嬢ちゃんだ」


「うっさいハゲ!!」


「ハゲ!!?」


サラの腕をつかんでいた帽子をかぶった盗賊は、思わずもう片方の手でその帽子を強く抑えた。




「テメェ!ガキ!なんでそのことを......!」


「うるさいのハゲ!はやく私から手を離すのハゲ!お母様たちを助けるのーっ!ハゲーーーーーっ!!」


「この、ガキ!そんな、何度も、何度もぉ......!!」



サラを縛ろうとしていた帽子の盗賊ハーゲンは、目を血走らせ、顔を真っ赤にして怒った。

彼は最近おでこが頭頂部まで広がってきたことを、とても気にしていた。

そのことをあげつらい彼を嘲笑う者は、誰であろうと許さなかった。

人が気にしていることを馬鹿にしては、いけないのだ。

人の世の基本なのだ。

同業者の盗賊であろうとそこらの村の生意気な少年だろうと、そういう連中はみな、ハーゲンの斧で頭をかち割られてきたのだ。

もちろんサラはハーゲンの毛髪の事情など何も知らずに、ただ罵倒の一種としてハゲ呼ばわりしただけなのだが、彼にはそんなことは関係なかった。






「絶対許さねぇ!ぶっ殺してやるぅぅぅーーーーッ!!」


「!?おい、テメェ!何してやがる!?そいつは売りもんだぞッ!!?」


腰にぶらさげた手斧を頭の上にかかげ、サラに振り下ろそうとするハーゲン。

ひげもじゃのお頭は手下の暴走に気づき止めようとするが、もう遅い。

何人もの血にまみれた薄汚い手斧は。

新たな犠牲者の脳漿をすするべく。

勢いよくサラの頭蓋骨を叩き割りその中に侵入。





......しなかった。


何故なら。









ガァンッ!!!









という凄まじい轟音が手元で響き。


ハーゲンが気づいた時には。


彼が振り下ろしつつあったその手斧は。


柄の部分から先が折れ、どこかに弾き飛ばされていたから。








「な、何が起きッ......!?」


手斧の先を弾き飛ばす。

突然手元にそれほどの衝撃を受けたハーゲンはよろめき、混乱しながらあたりを見回す。


何が起きたのか。

しかし、彼はその答えを知ることは、永遠になかった。






パァンッ!!!





何故なら、そんな音を立てながら、次の瞬間には彼の頭がはじけ飛んでいたのだから。

これが盗賊にして連続殺人鬼、ハーゲンという男の最後であった。







「なッ!?」


「なんだなんだ!?」


「魔法使いか!?」


突然の仲間の死に、あわてふためく盗賊たちの耳に届く、パァン、パァンという、先ほども聞いた何かがはじけ飛ぶような音が2つ。




「ひっ......!?」


イーマは思わず息をのんだ。

彼女とメイドを取り押さえていた二人の盗賊の首から上が、突然無くなったのだ。


どさりと崩れ落ちる、盗賊たちの死体。







「おいおいおい!?なんだこれ!?」


「どうなってる!?何が起きてるんだよぉ!?」


「で、出てこい魔法使い野郎!隠れてこそこそしやがって!卑怯者め!!」


ますます混乱に拍車がかかり、盗賊たちは武器を構えて右往左往している。

しかし、そんな彼らの動きがぴたりと止まる。


卑怯者、という言葉に挑発されたわけではなかろうが。

この惨劇を生み出した者が、街道を挟む片方の森の茂みから、姿を現したからだ。






その者の姿を見て。


盗賊たちは呆然とした。


もちろん、イーマも、メイドも。

そして、サラも。




それは。


照りつける太陽が作り出した、深い森の影から進み出てきた彼女は。




一見するとか弱い印象すら受ける、小さな少女だった。











薄汚い、ぼろぼろの衣服を身にまとい。

森の中から出てきたというのに、裸足で。

不吉でおぞましい、黒髪黒目の、白い肌をした。









そんな少女だった。

人の身体的特徴を馬鹿にするのは、良くないよ。

相手の気持ちをちゃんと慮って、生きていこうね。

でも馬鹿にされたと感じたからって、きれて相手を殺そうとするのはどうかと思うよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 今更さんとサラサラさん
[一言] 定番の馬車襲撃ですが、エミーさんたしかにどえらく強化されてますけど本来ならこんなイベントは加護持ちに回ってくる話だと思うんですよ(´Д` )なんか厄介なシナリオにでも巻き込まれ始めたのかな?…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ