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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
1 異世界転生用魂オークション編!
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4 捨てる神あれば拾う神(?)あり

 再び吸い込まれた先は、虚無とはうって変わって真っ白な空間でした。

 真っ暗な虚無に慣れてきたところだったんで、眩しいのなんの!


<おぉ......おぉ!無事にここまで、たどり着けたのですね......!>


 眩しさに面食らっている私の頭?の中に、かわいらしい女の人の声が響いた。


<虚無に堕とされてなお揺るがぬ泰然としたその魂......さすがでございます>


 感極まり泣きそうになりながら、その声は私を褒める。

 振り返ると、そこにいたのは......ぼんやりとした女の人のシルエット。

 美しく、そして優しく輝く、青い光の塊だった。

 さっきオークションに参加していた神々よりも、よっぽど神聖な存在であるように、私には思えた。

 多分この方も神様なんでしょう。暫定神様だな。なんだかあったかくて、とても親しみを感じる。




 そんな暫定神様は。

 右手にトングを持ち。

 左手のウチワで七輪をあおぎながら。


 ......肉を焼いていた。


 熱せられた炭に脂がしたたり、じゅうじゅうとおいしそうな音をたてる。




 ..................なにこれ???




<......ようこそ、藍原 瑠奈さん。刈り取られし異世界の魂よ。私は、『器』。『名もなき神の器』......創られども権能持たず、ただ眺める者......>


 まって!厳かな声色で自己紹介しつつ肉をひっくり返さないで!!

 なにこれ!?なにやってんのこれ!?




<......うふふ、見ての通り焼肉ですよ。ささ、こちらにいらしてくださいな。お腹も空いているでしょう?>


 いや、焼肉なのはわかるけどさ!状況がわかんないのよ!?

 今どうなってんの私!?何に巻き込まれてんの私!?ってか、え、私の心の声聞こえんの!?ってかそのお肉超うまそうですねください!!


<混乱していらっしゃいますね。あなたのおかれた状況についてはこれからご説明いたします。あなたの思念につきましては......私にとっては、とても読みやすいものでありますが故、勝手ながらのぞかせていただいております。お肉については、あなたに食べていただこうと焼いたものですので、どうぞお召し上がりください>


 え、マジ?お肉くれんの!?やったーっ!


 ふわふわ近づく私の魂に、その暫定神様......『神の器』様はトングから持ち替えた菜箸で肉を押し付ける。

 肉は魂に吸い込まれ、私には肉を食べたときに得られる味覚情報やら満足感やらが押し寄せてきた。

 う......うめぇ!この肉うめぇ!

 ってか魂状態で食事ってできるもんなんだな!


<さて、食べながらで良いので聞いてくださいね。ご説明さしあげます......あなたがおかれた状況、それと私のことについても>


 私に肉を餌付けしながら、『神の器』様は優しく語りかける。


<まず、そもそものお話からいたします。あなたの魂は、アーディスト......あなたから見たら、異世界ですね。その異世界アーディストの神々の駒とされるべく、あなたの世界から刈り取られました>


 あぁ、柔らかくて脂が甘い......このカルビ最高......。


 じゃなくてっ!

 えぇ、その辺はなんとなく察していました。

 でも、駒って......どういうこと?


<あの会場にいた神々の目的は、異世界の魂を自らの管轄領域であるアーディストに転生させ、彼ら、彼女らが歩む人生を物語として眺めて楽しむことです。その人生を記録して他の神々へ“配信”することも流行しており、最近ではますますブームが過熱しているところですね。実は地球産の魂は、アーディストのものに比べると加護をつけてあげたりとか、加工しやすいという特徴があります。神にとっては“使いやすい”魂なのです。故に、アーディストの神々は地球で刈り取られた魂を駒として用い、異世界転生物語を紡ぎだして遊んでいるのです>


 えぇ~~......異世界転生って、なんかそういうジャンルのお話があるとは聞いたこともあるけど......。

 それって神々のお遊びだったの!?

 実際に魂刈り取られた側としては、なんかおもちゃにされてるみたいで、気分良くないんですけど!

 こちらの都合は一切無視で、駒にさせられちゃうわけでしょ?


<......人の立場で見るならば、それもまっとうなご意見であると理解いたします。ただ、神として永く存在していると、そのあたりのことはあまり気にならなくなってしまうんですよね。あなたが感じている不平不満なんかも、記憶・思考をいじってしまえばなかったことになりますから>


 そんなことできんの!?

 できんのか、神なんだから。

 神、こわっ!


<それに、転生した人々はたいていの場合、加護......すなわちチート能力を与えられます。それをうまく使えば、波乱はあるにせよかなり有利に人生を進められますからね。本人の同意なしとはいえ、転生した人にメリットがないわけでもないのです>


 うーん、転生者が不利なばかりではなく、見返りも十分にある、と?

 それにしたって、という気はするけど......。

 ......そもそも神々という価値観の違う絶対的存在に、文句を言うだけ無駄ってことかな。はぁ。


 私自身は前世に全く未練はないし、他のクラスメイトたちは......まぁ、どうなろうとどうでも良いや。

 あいつら、私のこと嫌いだったしな。

 私があいつらのこと気にしてやる理由もないや。

 よし、この話お~しまい!


<私も異世界転生配信は結構好きでして。暇つぶしにかなりの数の人生を視聴しています>


 なんか、転生者の人生がおもしろ動画扱いされてる!?




<さて、話を戻しますが......。先ほどのオークション、私は参加していたわけではないのですが、たまたま近くにおりまして。......そうしたら、会場の外にいたはずの私にも、あなたの魂の香りが届いたのです>


 あ......私の魂って、すごい臭いんだっけ?

 ごめんなさい、今も臭い?我慢してる?


<うふふ。大丈夫、臭くないですよ。私は慣れていますので。......むしろ私にとってはとても良い香りですよ>


 そうなの?


<そうですよ。汚い臭いと、失礼な奴らですよね。あんな愚かな神々に好かれなくとも、気にすることはありません。......で、ですね。あなたの魂の香りに驚き会場を覗いた私が見たのが、あなたが虚無に捨てられる場面だった、というわけです。......私も転生者の人生をおもしろがって覗いてきましたから、あなたとしてはどの口が言うかと思われるかもしれませんが......こんな非道は、許されてはならないと感じました。勝手に魂を刈り取るだけならまだしも、その魂を無責任に捨てるなんて!だから、助けなきゃ、と思いました。普通、虚無に吸い込まれた魂は雲散霧消して消滅するのが常ですからね>


 そ、そうなんだ......虚無って怖いとこなんだね......!

 私も、虚無にいる時間がもっと長ければ、消滅してたってことか......。


<............。えぇ、そうです。それで、早くお助けしなければと思いましてね。この空間......私のパーソナルスペースなのですが、ここに急いで移動いたしまして>


 うん。


<あなたを助けるために>


 うん。


<焼肉を始めたわけですね>




 ......うん。そこがね、意味わかんないんだよなぁ......。




<虚無というのは、終わりなく続く暗闇。無限に続く世界の狭間です>


 青くぼんやりと輝く『神の器』様は、肉を焼きながら話を続ける。


<一度墜ちてしまえば、救い上げるのは至難の業です。あなたには、なんとかして私のパーソナルスペースの存在する座標に、近づいてもらう必要がありました>


 う......うーん、なんか難しいこと言っているけど、つまりは......。


<焼肉をして、そのにおいを虚無に流し、この空間の存在をあなたにアピールしたということです。そして狙い通り、あなたは焼肉のかおりに誘われ、ここまでたどり着いてくれました。......あぁ!あぁ!!助けることができて本当に良かった!一か八か、肉を焼いてみて本当に良かった......!!>


 『神の器』様は再び感極まり、目元をこするような仕草をする。

 なんだろう、この方感激屋さんだなぁ。

 ......虚無から魂を救い上げるためにした行為が焼肉ってのは字面だけみると理解しがたいけど......。

 この方が私のためを思ってやってくれたことなのは、間違いないみたい。

 ありがとうございます!


 ......でも、なんでこの方は、私のためにここまでしてくれたんだろう?


<............>


 『神の器』様は、肉を焼く手を止め、まっすぐに私のほうを向いた。


<純粋に、あなたを助けたいと思った。その気持ちに嘘はありません。ですが、正直に言いますと、打算もありました。もしあなたを助けられたならば、あなたにお願いしたいことが、あったのです>


 お願い、したいこと?


<はい。藍原 瑠奈さん。あなた、私と一緒に......。




............異世界転生、していただけませんか?>

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― 新着の感想 ―
[一言] 鋼のメンタル主人公が出会ったのはまたトンチキな存在であった…虚無からの帰還法が焼肉の匂いによる誘引、作者さまは天才か!?たましいの状態でお肉をほうばるシーンには水木マンガで人魂を天ぷらにして…
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