表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
3 山奥で謎のじいちゃんと修行編!
32/716

32 狩り、無限礫、黒ローブ

 曇り空が広がりそろそろ夏なのになんとなく涼しい、そんなある日の昼下がり。

 私は珍しく師匠と離れ、山をぶらついていた。


<良い感じの獲物が見つかるといいですね!>


 そう、今私は一人で狩りに来ているのだ!

 というのも、いつもの修行を終え、狩りに行こうと師匠を目線で誘うと、


「............」


 と、首を振って拒否されてしまった。

 どうやらこれから薬の調合を行うらしい。

 ならそれをお手伝いしようと思ったんだけど、それも私にはまだ早いらしく、許されなかった。ちぇーっ!


 で、師匠はお部屋にこもってしまい自由な時間ができたので、こうして一人ハンティングに出向いたってわけ!




 ......おっ。


<あっエミー、前方左手の岩場の陰......>


 うん、気づいてるよオマケ様。


「フギッ......フギッ」

「ギューギュッフギギッ」

「フギーッ!フギーッ!」


 そこにいたのは、変な鳴き声をあげながら何かを貪り食っている3匹のお肉だった。


<まだお肉じゃありませんよ、エミー。あれはヤハジキ猪ですね>


 ヤハジキ猪とは雑食で凶暴な猪の魔物だ!

 常に3匹以上の群れをなして行動し、集団で突進されると人間の小屋ですらバラバラにしてしまうという恐ろしい生き物だ!

 その毛皮は異常に硬く、生半可な矢は弾かれ、傷一つ負わせることはできないという!

(出展:オマケ様の視聴した<狩猟神の異世界転生配信>より)


<大きさは、それほどではありませんね。3匹ともエミーくらいです>


 群れの規模も大きくないし、母親の群れから独立したばかりの、まだ年若く経験の浅い連中ってことかな?


<油断は禁物です>


 もちろん!




 私は山中では常に発動している【気配遮断】をさらに強め、慎重に獲物に近づく。

 そして【飛蝗】で跳躍、そのままヤハジキ猪の首元めがけ上空から下降し......【蟷螂】にて、一閃。

 首をはね飛ばした。

 これ、師匠がエレキディア相手にやっていた方法だね。

 師匠ほどじゃないけど、私もある程度ならできるようになりました。


 驚いた残りの2匹の対応は、真逆だった。


「フギィーーーーッ!!!」


 1匹は怒り狂い、私に向かって突進をしかけようとした。

 が、勢いをつけるには、私との距離が近すぎた。

 彼らの突進が脅威となるのは、助走をつけ、十分なスピードが出た後のことだ。

 すぐ近くにいる私にダメージを与えるには、距離が足りなすぎる。

 結局、彼(?)がやったことは、私が狩りやすい位置までその首を移動してくれたというだけのこと。


 そんな猪の頭を、上から思い切り殴りつける。

 ただのげんこつじゃないよ。

 魔力を込めた岩をも砕く一撃。

 【魔撃】だ。

 猪の頭ははじけ飛び、山肌に赤黒い染みを作った。


 こちらに向かう勢いそのままに突っ込んでくる頭なし猪の体をひらりとかわし、もう1匹の方を見やる。


 残りの1匹、どうやら逃げの一手を選んだらしい。

 私にお尻を向け、一目散に駆けだしている。


 でもね、猪ちゃん。

 私お腹ペコペコなの。

 毎日毎日きつい修行の連続で、体力も魔力もギリギリなの。

 おいしいお肉をいっぱい食べて、鋭気を養わなくちゃならないの。

 私は、肉食系女子なの!!


 地面に手を突き刺し、土を握り取る。

 そのまま手の中の土に【凝固】をかけ、ただの土くれを石礫よりも固く変化させ、【投石】!

 より練度を増した【身体強化】により底上げされた【投石】の速度は、目にもとまらぬほど。


 私から放たれた【投石】により体を貫かれた最後の猪は倒れ、何度かピクピクと震えてから動かなくなった。


 今や私は【凝固】のおかげで、地面さえあれば小石がなくても連続で【投石】を行うことができる。

 これを、名付けて【無限礫】。

 オマケ様の命名だ。




<......それにしてもエミー、たった半年でずいぶんと強くなりましたね......>


 えへへ!そうかな?うん、そうかもね!

 これも師匠のおかげだねぇ!


<......そうですねぇ。たしかに良い師匠に巡り合いましたが、それにしてもこの成長率......さすがは>


 ......?さすがは?


<......なんでもありません。......いえね、エミー、私は少し悔しいのですよ!>


 悔しい?

 なんで?


<私はエミーがこの世界に転生してから6年間、ずっと一緒にいたわけです。そして生き延びるためにエミーを強くしてあげようと、色々教えてきたつもりです>


 うん。


<それなのに、私が教えてきた6年間よりも、あの人が教えた半年間のほうが、エミーはよっぽど強くなってるんですもん。私は一体これまで何をしてきたんだ、と考えてしまうわけですねぇ......>


 あわわ......落ち込まないでよオマケ様。

 私、オマケ様にはいつも凄い感謝してるし、オマケ様がいなければとっくに私、死んでいるし......。

 それに私が師匠の修行についていけているのは、オマケ様が鍛えてくれた基礎があるからこそだと思うんだよね!

 【身体強化】、【気配遮断】、そして【魔力視】......。教えてくれたのは、全部オマケ様でしょ?

 それに、師匠の課題も一緒に考えてくれるし!

 オマケ様あっての私なんだよ!


<......うふふ、ありがとうございます、エミー>


 えへへ!どういたしまして!これからもよろしくね、オマケ様!


 ......さあ!とっとと猪の処理もしちゃおうよ!他の魔物が出てきてお肉を奪われたら面倒だし!


<そうですね!>




 と、ここで。


 猪の死骸に近寄ろうとした私は、この猪たちが寄ってたかって貪っていた黒いモノ。

 それに初めて意識が向いた。


 なんだろうこれ?

 黒い布切れ?

 ......ローブ?


 おもむろに掴んで、引っ張ってみる。


 ころん、と、何かが転がり出てくる。


 それを見た私は......せっかく狩った猪たちもそのままに、師匠の小屋に向けて全力で駆けだした。


 報告しなくちゃいけない。

 異常事態だ。


 何かが起きている。




 猪たちが貪っていたのは、切れ味の鋭い何かで骨ごとばらばらに斬りわけられた、肉塊。


 私が布をひっぱり転がり出てきたのは、知らない女の人の、生首。


 私と師匠以外、ただの一人も人間を見たことがなかったこの山奥で。


 人間が、殺されていたのだ。




 しかし。


 私が師匠の小屋にたどり着いた時、既に事態は動き始めていた。


 師匠と黒ローブを羽織ったスキンヘッドの男が、殺気をぶつけあいながら向かい合っていたのだ。


 そしてその光景に気をとられた私は。


 後ろから音もなく忍び寄るもう一人の男に、気づくことができなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 最後最高ww
[一言] 平穏な日々の最後の一幕、ついに舞台が動き始めた!頑張れエミーさん!守ってオマケさま!死なないでくれじいちゃん!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ