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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
3 山奥で謎のじいちゃんと修行編!
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28 飛蝗の習得

 私は今、師匠の家の前の小さな広場に立っている。

 刺すように冷たい空気。

 向こうの山並みから少しずつ顔を出し始めた朝日が、私を照らす。


 右手と左手を、顔の前に構える。

 そして思い切り、それらを打ち合わせる。


 パァン!


 静かな朝の山に、私が手を叩いた音が響き渡る。







 よし、次だ。


 もう一度、両手を構える。

 そして意識するのは、魔力変換。

 思い切り、手を叩く。




 ......無音、である。




 【魔力視】を発動していた私には、両手を叩くことで発生した衝撃が魔力に置き換わり、周囲に拡散し、やがて消えていく様を観測することができた。







 魔力変換の可能性に気づいてから1週間。


 ついに私は、音を出さずに手を叩くことに、成功したのだ。




◇ ◇ ◇




 ここまで来ると、後は早かった。

 拍手の衝撃を消すのも、天井から落ちた衝撃を消すのも、やっていることは同じだもんね。

 何度か練習して、師匠の目の前で『音のない着地』を再現してみせた。


 師匠は黙って頷いた後、私を外に連れ出した。

 たどり着いたのは、でかい木の前。

 この世界、とにかくでかい木がたくさん生えている。

 前世ならご神木としてあがめられているようなレベルの奴らがわんさか生い茂っている。

 で、私をここに連れてきたということは、あれですね師匠。

 この木のてっぺんから落ちて、同じことをしてみろと。


 というわけで、早速挑戦してみる。

 結論として、さほど難しいことではなかったけど、先ほど天井から落ちた衝撃を消したときと比べると難易度は高かった。

 どうやら、衝撃が大きくなるほど魔力変換の難易度も上がっていくみたい。




 そんなこんなで、師匠の要求する高度はどんどんと上昇していき、最終的にたどり着いたのは切り立った崖。

 こうして、2話前冒頭の状況にたどり着き、私はこの崖の上から飛び降りることになったのでした。




◇ ◇ ◇




 まるで何事もなかったかのように、着地する。

 見上げれば、そこにあるのは数秒前まで私が立っていた崖の縁。

 衝撃は全て魔力に変換され、あたりにふわりと広がり、消えていった。

 片膝ついちゃったけど、これくらいは許されるでしょう、師匠?


 あ、頷いている。許された!


<は、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ............怖かったぁぁぁぁぁぁぁ............!>


 もう、びびりすぎだってオマケ様......でも怖い思いさせてごめんなさい......。


<でもこれ、クセになりますね。もっかいやりません?>


 絶叫系アトラクションにはまった女子か!




「............」


 あ、師匠が何か言いたげだ。

 師匠に向き直ると、師匠は軽く屈み、反動をつけて空高くジャンプした。

 そして着地。


 ......あぁ、そうか、【飛蝗】だ。

 これを習得するために、修行をしていたんだった。


<今回脱線が激しくて、忘れてましたね?>


 う、うるさいなぁ!

 そんなことないもん!

 気を取り直して、私も【飛蝗】の再現を行う。


 【飛蝗】はいくつもの技術の複合技だ。

 【凝固】で地面を固め、【身体強化】を使用し、斥力を発生させて跳びあがる。

 そして着地の際は魔力変換で衝撃を消す。

 これらをスムーズに連続して発動させることが、【飛蝗】成功のカギだ。


 力を込めて、跳びあがる。

 私の体はあっという間に、空高く舞い上がる。

 ......師匠の高さには届かないけどね。

 上昇スピードが遅くなり、ふわりとした浮遊感を感じたあとは、自然の摂理にのっとって落下が始まる。

 思えば2か月前、私はここで恐怖のあまり気絶するという無様を晒してしまった。

 しかし、今度はそうはいかないぞ!

 冷静に、意識をしっかりと保ち、音もなく着地!

 発生した衝撃は魔力に変換され、あたりにふわりと広がる。


「............」


 私は師匠を見つめる。


「............」


 師匠もまた、私を見つめる。




「............あとは、慣れだ」


 そういうと、師匠は踵を返し、家の方向に向けて歩き出した。


 あ、これ、私【飛蝗】もとりあえず、合格点もらえましたね?

 ......やった。やったやった、やったぁーーーーーっ!

 嬉しい!

 今回やり方がわからずものすごく苦労しただけあって、喜びもひとしおだ!

 よっしゃぁーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!







 内心はしゃいでいる私を後目に、師匠は進んでいく。

 歩きながら、師匠は無造作に、転がっていた大岩に手刀を振り下ろす。

 大岩はそれだけで、まるで鋭い刃物に切り分けられたかのように、真っ二つになった。


「............【蟷螂】」


 技の名前を告げ、何事もなく歩いていく師匠。


 ......新たな課題である。







 とりあえず、これだけは言わせてもらいたい。




 師匠、いきなりそれやるの、やめてください。


 びびるから。

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― 新着の感想 ―
[良い点] エミーさん、飛蝗習得に内心アゲアゲですけど(´Д` )この風景を外から見ると淡々と課題をこなすクールな弟子と鉄面皮で賞賛もしないハードな師匠にしか感じられないんですよね。これ部外者がいたら…
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