276 【冒険者ミトラン】『アハテ川上流遺跡』上層部の、調査
今日は、平日だぞ!
もう、連休は終わったんだ!
もう、連続投稿なんて、しなくても良いだろ......!
「おおっ!ここが仮称『アハテ川上流遺跡』!現在黄金大陸で最も“熱い”、未知なる遺跡か!!」
ネボの町からアハテ川沿いを山に向かって進むこと1時間程。
ボクがレーセイダさんに出会ったその翌日、ボクたち二人は町でも話題になっていた謎の古代遺跡の入り口の存在する森へと到着していた!
町からこの遺跡までの道中は、何度も冒険者が行き来しているからすっかり道ができていて、とても歩きやすかった。
魔物の襲撃は無く天気も良くて、春の日差しは暖かく、本当にお散歩しているかのような道中だったよ。
「うわぁー、今じゃ下草も刈られてるから、少しはわかりやすいけど......よくこんな遺跡、見つけたもんだなぁー」
思わずそうつぶやいてしまうほど、『アハテ川上流遺跡』の入り口はすっかり周囲の森と一体化していた。
この遺跡は黄色っぽい石を組みあげて作られているんだけど、大分昔に作られたせいなんだろう、大人が3人で手をつないでも周りを囲めないほど太い幹の大樹が真横から生えてしまっていて、目立たない。
地上に出ているのは本当に小さな、人一人が通れる程度の出入り口だけで、苔むしている部分も多く、もしボクが一人でここまで来ていたら、今でもこの遺跡のこと、見逃しちゃってたと思う。
「なんでも、例の町を困らせていた魔物の巣を探して、山狩りをしていた時に見つけたとのことだ。もともと人が近づく場所でもないらしいし、その事件が無ければ、地元の住民もこの遺跡の存在には気づかなかったことだろうね。つまりは、魔物のおかげでこの遺跡が見つかったと言っても過言ではない!いやはや、魔物様々だね!こんなことなら、どんどん魔物には人里近くにまで出てきてもらいたいものだ!」
レーセイダさんは......多分、はしゃいでいるんだろう。
地表に出ている遺跡の石壁をなでたり軽くたたいたりルーペで観察したりしながら、割と不謹慎なことを言った。
「さあ、ミトラン君!未知が我々を呼んでいるぞ!早速遺跡の内部へとお邪魔しようじゃないか!」
「あ、ちょっと、レーセイダさん!冷静になって!護衛のボクから離れて、先に進まないでよー!」
「はっはっは!私は冷静だ!もちろん、冷静だとも!」
レーセイダさんは、ずんずん薄暗い遺跡の中へと入っていく。
ボクも慌てて後を追った。
◇ ◇ ◇
さて、冒頭のやりとりを見てわかったと思うんだけど、ボクはネボの町で出会った考古学者のお兄さん、レーセイダさんから頼まれた護衛依頼を、引き受けることにしたんだ。
理由は簡単で、ボクが護衛依頼の実績を作りたかったからだ。
ボク、神様からチートな戦闘能力はもらっているんだけど、何しろ見た目が弱そうだからね。
なかなか護衛依頼って、受けられないんだ。
だけど、護衛依頼の実績ってのが、冒険者等級を上げるための要件になっていたりもするから、ちょっと困っていたんだよね。
今のボクのとりあえずの目標は、冒険者等級を高めることだからね!
レーセイダさんからの依頼は、渡りに船だったんだ。
それと、この『アハテ川上流遺跡』の探索自体にも、興味は持っている。
だってこの遺跡、レーセイダさんいわく『超古代魔導文明の遺跡である“可能性もある”』場所らしいんだよ!?
超古代魔導文明!
超古代魔導文明だよ!?
何それ、めっちゃ気になるじゃん!
レーセイダさんに教えてもらったんだけど、超古代魔導文明ってのは、大昔にこの世界で栄えた、今とは比べ物にならないくらいの技術力を誇り栄華を極めていた文明なんだって!
“バマパーマ世界帝国”っていう名前の国が世界を統一してから花開いた文明であると言われていて、その繁栄は実に7,000年近くも続いていたらしい。
それなのに、ある日突然滅びてしまったということでも有名で、何しろ“世界帝国”だったものだから、世界各地の伝承にその日のことが謳われているんだって。
“滅びの日”、として。
とにかくたくさんの人が死んだらしいことはわかっているけど、その原因は未だに不明だ。
「ふむ、見たまえミトラン君。話には聞いていたが、実に興味深い光景だ」
「うわっ!?」
遺跡の入り口から地下へと下る階段を下りて行くと、地下1階の部屋にたどり着いたレーセイダさんが突然立ち止まり、天井を見上げてそんなことを言った。
「いきなり立ち止まらないでよぉ!レーセイダさんのカバンに鼻をぶつけちゃったよぉ」
「そんなことはどうでもよろしい!上を見てごらん」
「上?............うわぁ?」
レーセイダさんに言われて天井を見上げたボクの視界に飛びこんできたのは......その天井を埋め尽くす、荘厳な壁画......!
......なんてものでは、なく......。
「えっと......あれは、魔灯......ですか?」
「ふむ、そうだね。まさしくあれは、魔灯だ」
天井の岩にまっすぐに埋めこまれ、仄かな光を放ち続けている......魔灯だった。
町中でも街灯として用いられているような設備が......この遺跡には、備えつけられているのだ。
「えっと......冒険者の誰かが、勝手にとりつけた......のかな?」
「そう思えてもしまうほどには非常に現代的な光景だが......そうではない。あの魔灯は超古代魔導遺物......つまりはオーパーツだよ」
「へ!?」
そう言われて、慌てて目を凝らすけど......だめだ、ボクには普通の魔灯との違いなんて、わかんないや。
「あの魔灯、先んじてこの遺跡を調査した冒険者の報告によると、なんでも動力源なしで動き続けているらしい。どうやら周囲の大地の魔力を少しずつ吸い上げて作動しているらしいんだけど、これは、現代では再現不可能な技術だと言われている。そしてこのような魔灯設備が開発されたのが、超古代魔導文明の時代なのさ。ちなみに人の接近を感知して起動するようにもなっていて、この技術にも目を見張るものがある」
ゆっくりと周囲を見回しながら、解説を続けるレーセイダさん。
ボクはその話を聞いて、胸の高鳴りを抑えることができなかった!
「と、いうことは!そんな魔灯が使われているってことは!この遺跡は......本当に超古代魔導文明の遺跡ってこと!?」
「だったら......本当に大発見なんだけどね。うーん......」
興奮で顔を赤らめるボクとは違って、レーセイダさんは顎をなでながら、困った顔をして未だにきょろきょろと辺りを見回している。
「やっぱり、ちぐはぐなんだよなぁ......報告書を、読んだ通りだ」
「ちぐはぐ?」
ボクは思わず小首を傾げた。
「先述した通り、確かに魔灯は超古代魔導文明の技術を用いて作成されている。されているんだが......その割に、この遺跡を構築する石材の質が悪い。超古代魔導文明の遺跡というのは、基本的に継ぎ目のない白い石壁で構成されているんだ。バマパーマ石って呼ばれるんだけどね?ところがこの遺跡ときたら、普通の石壁が使用されているじゃないか。この石の組み方は、超古代魔導文明滅亡後の......今からおおよそ5,000年から4,500年程前にこの地域で作られた遺跡で、よく見られるものなんだ」
「えっと、つまり?」
「つまり、この遺跡は......!」
「この遺跡は......!?」
レーセイダさんは、真剣な表情を作ってボクの顔を見つめた。
ボクはその様子に思わず、ごくりと唾を飲みこんだ!
「まぁ、なんだ、その、良くわからない遺跡だってことだ」
「何ですか、そりゃ!」
豪快にはははと笑う目の前の銀髪のお兄さんに、ボクは思わず脱力して、がっくりと肩を落とした。
「でもだからこそ、調べがいがあるというものだ。それが故に、今この遺跡はとても“熱い”のさ!未知の探求こそ研究者の本分だからね!」
そう言ってレーセイダさんは懐から魔道具らしき片眼鏡を取り出して装着し、目を爛々と輝かせながら室内を這いまわるようにして調査し始めた。
何がわかるのか知らないけど、床とか壁の石と石の隙間なんかを、なにやらぶつぶつとつぶやきながら熱心に観察している。
なるほど、これだけ集中してしまえば、その隙を魔物だのゴロツキだのに襲われたら、ひとたまりもないよね。
冒険者ギルドにこの遺跡は、『少なくとも調査済みの中層までは魔物が住み着いていることもなく、安全』と報告されているんだ。
それなのにどうして護衛が必要なのかと不思議に思ってたけど......この様子を見れば納得できる。
こんなに無防備になるんだもん、護衛は絶対に必要だ。
......とは言え。
ここは既に冒険者たちが何度も行き来している、遺跡の地下1階。
黄色い石壁に囲まれた、6畳ほどの小さな長方形の部屋。
危険な何かが潜むような隙間もないし、罠があったという報告も冒険者ギルドにはあがってきていない。
つまりは。
今、ボクは。
......暇だ。
とりあえず、今下って来た地上へと続く階段、そして地下2階へと続くもう一つの階段という2つの出入り口だけを少し警戒しつつ、ボクはあくびをしながら石壁によしかかった。
「......うん?」
するとボクは、後頭部に触れた石壁の感触に......ちょっとした違和感を、感じたんだ。
ボクはこの世界に転生するにあたって、色々なチート能力を冒険神のおじさんから受けとっている。
そのうちの一つが、【超ひらめき力】!
ここぞという時に注意力が高まり、問題解決のためのとっかかりを直観的に見つけ出すことができる、とても主人公的で都合の良いチート能力だ!
その【超ひらめき力】が......突然発動したんだ。
「なんだ......?」
ボクは石壁を振り返り、そこをぺたぺたと触る。
えっと......何だこれ......?
「ねぇ......ねぇ!レーセイダさん!」
「ふむふむ、ふむ、やはりこの石材、西アハテ暗黒王朝時代の遺跡で用いられていたものと、まるで同じだ。つまり年代的には......む!?何かね?何か呼んだかねミトラン君!?もうお弁当の時間かね!?」
「何言ってるのさ......ここ!ここの石壁なんだけど......なんだか妙な、へこみがあるんだ」
「なんだって?」
寝転がって遺跡の床を調べていたレーセイダさんはボクのその言葉を聞いて飛び起きて、こちらに近づいて来た。
そしてボクと同じくぺたぺたと、遺跡の壁を触り始めた。
「ふむ、ふむ、ふむ......これは、もしや......」
そうつぶやくとレーセイダさんはカバンから紙と鉛筆を取り出し、その紙を石壁に押し当ててから、鉛筆でしゃかしゃかとこすり始めた。
すると......!
「これは......模様?いや、文字......!?」
その紙には、明らかに規則性が見いだされる文字のような記号が、浮かびあがってきたんだ!
「おおっ!お手柄だぞ、ミトラン君!」
レーセイダさんはそれを天井に向けて掲げながら、小躍りをして喜んだ!
「その通り、これは文字だ!超古代魔導文明においても言語神様の恩寵は広く世界を覆っていたとされ、つまりはそこで使用されていた言葉も我々と同じバマパーマ語であったわけなのだが、何故か文字だけは現在と全く異なる形の物が使用されていたという事実が明らかになっている!話し言葉とは異なり、超古代魔導文明の滅亡前後では、不自然な書き言葉の断絶が見られるのだ!このことを我々は......」
「ストップ!落ち着いてレーセイダさん!つまり、要点をまとめると?」
「......こほん。つまりだね、ミトラン君。これは超古代魔導文明の時代に使われていた、文字だというわけだ。風化して、目立たなくなっていたのかもしれないね」
ボクの言葉に冷静になったレーセイダさんは頬を赤らめながら咳ばらいをし、そう言った。
「ねえ、レーセイダさんはその文字を、読める!?」
「ははは、もちろんさ!超古代魔導文明と言えば、考古学会でも最も人気の高いテーマだよ?魔導飛行船のような価値の高いオーパーツでも掘り起こそうものなら、一財産築けるわけだしね......とにかく、超古代魔導文字を読めない考古学者がいれば、そいつはもぐりだと断言できるね。当然私は、読める。簡単な辞書だって、発行されているくらいなんだから」
ああ、もう、この人いちいち話が長いな!
「なんて書いてあるの?」
「ふむ、これはだね......」
するとここで。
片眼鏡を外してじっと紙に浮かびあがった文字を見つめていたレーセイダさんは......何故か少しの間押し黙り、眉間に皺を寄せた。
「ど、どうしたの?」
「ふむ......いや、しかし、何故だ?確かに、石材の年代と伝承の発生時期は、一致する。だが、何故その時期に、この文字を......?」
レーセイダさんは険しい顔をしながら顎をなで、ぶつぶつと何やらつぶやきながら、考えこみ始めた。
もぉー、またボクは置いてけぼりだよ。
この人、見た目は爽やかな身なりの良いイケメンなのに、ちょっと癖が強すぎるよー。
まぁ、ボクは護衛としてついてきているわけだから、別に無視されたって良いんだけどさぁー。
「はぁ......」
ボクは思わず、大きなため息をついた。
すると、ちょうどその時だった!
ガゴンッ!!
ズズズズズズズズズ......!
そんな、重たい物が動くような音を鳴らしながら、遺跡が小刻みに震え始めたのは!
「な、なんだ!?」
これにはさすがにレーセイダさんも思考を中断し、慌てふためいた。
「音は......この部屋のけっこう近くで鳴っている......多分、何個か先の部屋が、発生源だね」
冒険神のおじさんがボクに授けたチート能力の内の一つ、【超感覚力】がそうボクに告げている。
「君は......そんなことが、わかるのかい?」
あまりにも鋭すぎるボクの聴覚に、レーセイダさんが驚きの声をあげる。
だけどボクは、さっきまでのようにおちゃらけた態度で返事をすることは無かった。
何故なら。
【超感覚力】はボクに......ちょっと看過できない情報を、伝えてくれたからだ。
......嗅覚、という形をとって。
「レーセイダさん、身の安全をとるならば、一旦遺跡からは、出た方が良いかもしれない」
「どういう、ことかね?」
ボクは腰にさげた剣を抜き放ち、周囲を警戒しながら、言った。
「血の臭いが、する」
明日投稿できるかどうかは、不明です。
ご了承ください。




