274 【冒険者ミトラン】賑わい見せる、ネボの町
ば、馬鹿野郎!
毎日更新なんて、するんじゃねぇ!
ストックなんか、ないんだぞ!?
「いらっしゃい、いらっしゃぁーーーいっ!この町自慢のエビ焼きはいかがーーーっ!?」
「エビ焼きなら、うちのが一番だぜーーーっ!秘伝のタレに漬けこんだ自慢のアハテカワエビ、ぜひ一度ご賞味あれっ!」
「うわぁーーー、良い匂い!」
お客さんを呼び込む売り子さんの元気な声、そしてそこかしこから漂ってくるエビの良い匂いを嗅ぎながら町の大通りを歩くボクの名前は、ミトラン!
冒険神の神託を受けて旅立った、少年冒険者であり異世界転生者だよ!
「ほら、そこの嬢ちゃん!寄っといで!可愛い嬢ちゃんには、エビ焼き一匹サービスしてやるよ!」
「えっ、本当?ありがとうっ!」
......さっき言った通り、ボクは少年冒険者だ。
男の子、なんだけど......なんだかボクって、見た目が凄く可愛いみたいで、こんな風に大抵の場合、女の子に間違われちゃうんだ。
旅をしていると髪を切る暇もなくて、肩くらいまでサラサラと伸ばしているのが、良くないのかもしれない。
少年用の冒険者装束を着ているんだけどなぁ......。
昔は必死になって自分は男の子だって主張していたんだけど......それでも信じてくれないことの方が多いから、最近では特に否定することもせず、その誤解を受け入れることにしてるんだ。
少し騙しているみたいで申し訳ないけど......ま、誰かが困るわけでもないし、別に良いよね!
えへへ!
「ほらよ!頭も尻尾もしっかり火は通ってるかんな!丸ごと食っちまうのが通の食べ方よ!」
「へぇー!いただきまぁーす!」
焼き網の向こうから串に刺したエビを手渡してくれた強面のおじさんのおすすめに従って、この町名物のアハテカワエビを頭から丸かじりする。
「!」
するとまず感じるのが、殻のパリッとした食感。
もともと薄い殻だから食べやすいし、とっても香ばしい!
そして次に口の中に広がる、エビのミソの濃厚な旨味!
その旨味を口に残したまま二口目、三口目もパクパクと食べ進める。
次に口の中に入ってくるのは、ぷりぷりのエビの白身だ。
ミソの旨味と合わさったその味わいは、まさに絶妙!
気づけばボクは、夢中であっという間にエビ焼きを一匹、食べきってしまっていた。
「お、おいしい......!」
思わず顔も、綻んじゃうよ!
「そうかい、そりゃあ良かった!ほれ、まだまだあるから、どんどん買って食ってくんな!今なら一人に13匹だって、余裕で提供できるぜ!」
強面のエビ焼きおじさんは少しだけ頬を赤らめて、そんなことを言った。
「13匹......?」
「あ、ああ、すまん、こっちの話よ。以前、嬢ちゃんよりも小さいのに、大食いの神官の娘っ子が来てなぁ。そん時は初め、エビ焼きを食わせてやれなかったからよ!そん時のこと、思い出してたのよ!」
「ふーん......?」
さて、今ボクがエビを食べているこの町は、ネボっていう名前の町なんだ。
町の中心の大通りには、通りにせり出すようにして焼き台を設置しているエビ焼き屋さんが軒を連ねている、とっても賑やかなところだ。
サイカナン街道っていう道沿いにある町で、ボクはこの町のエビを食べるために、わざわざここまでやって来たんだ。
何せボクの旅、今のところ明確な目的ってのが、無いからね......。
冒険神のおじさんからは『立派な冒険者になれ』程度の指示しか出されていないし。
だから旅をして依頼をこなしながら冒険者等級を上げているんだけど、それだけじゃちょっとボクの旅、味気ないよね。
ボクにとってはその町その町で味わうことのできるグルメも、立派な旅の目的の一つってわけ!
「ところでよ、嬢ちゃん。嬢ちゃんは冒険者みてぇな服装をしているが、家族で冒険者やりながら、旅でもしてんのかぁ?」
「ん?そうだよぉ?」
三匹目のエビを食べていたら、エビ焼きのおじさんがボクに、そんなことを聞いてきた。
本当は一人旅なんだけどね。
家族で旅をしているって伝えた方が話もスムーズに流れるので、いつものように適当にそう答える。
「へぇ。小せぇのに、偉いなぁ!やっぱりこの町には、エビを食いに来たのかい?それとも、冒険者らしく......遺跡がお目当てかい?」
「遺跡?」
ボクは思わず首を傾げてしまったんだ。
だって、この近くに遺跡があるなんて、聞いてなかったんだもん!
「お、知らねぇか?アハテ川上流にな、立派な遺跡が最近見つかったのよ!以前この町は、正体不明の魔物に苦しめられていたことがあってなぁ。そいつの出所が、その遺跡なんじゃねぇかって話なんだぜ?」
「ふーん!おじさん、凄いね!物知りだねぇ!」
「ははは!褒めてもこれ以上サービスはできねぇぞぉ!」
「ちぇーっ!」
ふむふむ、なるほど。
これは、冒険の匂いがするぞ!
ボクはおもむろに周囲を見回す。
「そっかぁー......だからこの町にはけっこう、冒険者の人たちがいるんだね?」
「おうよ!遺跡探索はこの町の冒険者ギルド出張所にも依頼として出ていたはずだぜ?気になんなら、後で父ちゃん母ちゃんと一緒に、出張所に顔出してみな!」
「わかった!それにしても、おじさん良かったね!遺跡のおかげでお客さんも増えて、ラッキーだったんじゃない?」
「うん......まぁ、なぁー......」
「?」
と、ここで。
強面のエビ焼きおじさんは、初めて浮かない顔をした。
「どうしたの?なんか困ったことでも、あるの?」
ボクは心配して、下からおじさんの顔を覗きこむ。
おじさんはボクと目が合って顔を赤くしてから、ごほんと咳払いをして、こう言ったんだ。
「あー、まぁ、あれだ。客が増えんのは嬉しいんだがよ。人が増えるとなると、どうしても、よ」
おじさんは頬をかきながら、困った顔をした。
すると、その時だった!
「だからよぉー!テメェみてぇな軟弱者がよぉー!遺跡探索だぁ!?笑わせんなよって話だよなぁ!?」
「そうだぜ!遺跡のお宝は、オレらのもんだ!学者先生は、お部屋の中で本でも読んでなぁ!!」
後ろの方から、そんな下品で乱暴な言葉が聞こえてきたのは!
思わず振り向くと、そこにいたのは三人の男性だ。
背が高いけど少し細めの、身なりの良い銀髪のお兄さんを、どう見ても粗暴な荒くれ者が恫喝している!
荒くれ者は四角い顔の男と、細長い顔の男の二人。
二人とも、右目に眼帯をつけており、威圧感が凄い!
「......人が増えると、どうしてもああいう連中も湧いてきやがる。困ったもんだ」
気づけば強面のエビ焼きおじさんはボクの目の前に移動しており、荒くれ者の視線からボクを隠すように立ちふさがった。
その気づかいは、とっても嬉しい。
......ま、不要なんだけどね。
ボク、強いから。
さて、そんなおじさんの気づかいのおかげで少しだけ目を離してしまったんだけど、その間にあのお兄さん、荒くれ者二人に対して何かを言い返したらしい。
二人はすっかり、激昂してしまっている!
「こいつ!こっちが優しく忠告してやってんのによぉ!」
「許せねぇ!アンダー、やっちまおうぜ!」
「おうよ!痛い目見せてやろうぜ、タッパ!」
危ない!
荒くれ者の二人がお兄さんに向かって、殴りかかった!
「お、おい、嬢ちゃん!?」
ボクは思わず、エビ焼きのおじさんの制止を振りきって、お兄さんを助けるために荒くれ者の二人の前に、飛び出していた!
【ネボの町】
第12章にて初登場。
勇者と偽勇者の対決イベントが発生した町。
第13章にて冒険者ギルド副総帥が読んでいる報告書でも、その名前は言及されている。
【ミトラン】
第6章及び第12章に登場。
冒険神の異世界転生配信の主人公。
どう見ても美少女な男の子。
【大食いの神官の娘っ子】
勇者の仲間であるシロンのこと。
【タッパとアンダー】
第2章及び第5章に登場。
メグザム盗賊団の一員。




