263 知らないうちに連れて来られて住んでいた場所が、実は超危険地帯だった
<ふ、ふふふ、封印島ヴェラ・ケヌ!?そして災厄ですってぇぇーーーッ!!?>
ライリーンがつぶやいたキーワードに、オマケ様が食いついた!
なんだか妙に興奮しているけど、何か知っているのオマケ様!?
<はっ!し、失礼しました!ええ、ええ、良く知っていますとも!封印島ヴェラ・ケヌ!何度も何度も異世界転生配信で登場したことのある地名です!>
そ、そうなの!?
つまりこの島は、何度も主人公たちの冒険の舞台になってきた場所ってこと?
<いいえ、違います!>
はい?
<封印島ヴェラ・ケヌ!もともとここは、とある神話の舞台です!かつて一人の英雄が世界の外から侵入してきた怪物を、封じた地なのです!>
はい。
<そしてなんだか、名前の響きが恰好良い!>
はい?
<以上の理由から、封印島ヴェラ・ケヌという地名は、世界観に深みを持たせるためのフレーバー要素として良く使用されるんですね!>
はい!?
<つまりですね、例えば、『将来は冒険者になって、世界中を旅するんだ!』という夢をみる少年主人公に対してですね、保護者格、あるいは師匠格の人物が語ったりするわけですよ!『エセレム大霧海の底、サザーリントフォード嵐荒野の中心部、そして封印島ヴェラ・ケヌ......この世界には、伝説に謳われる未踏地帯がたくさんある!』みたいな感じで!そうやって主人公と視聴者の冒険への期待を煽るんですねぇ!>
未踏......?
普通にわけのわかんない女が、お屋敷を建てているんですけど......?
<世間的には、未踏地帯となっているのです。そうかぁ、ここが封印島ヴェラ・ケヌなのかぁ~......!>
......オマケ様は異世界転生配信マニアだ。
だからこういう風に、たまに突然聖地を訪れたオタク的反応を示すことがあるのだ。
でもオマケ様、感慨深げにしてるとこ悪いんだけど、説明がまだ終わってないよ。
災厄って、なにさ。
<封印島ヴェラ・ケヌと言えば、異世界転生配信マニアの間では『思わせぶりにつぶやかれる割に結局物語に登場することのない地名ランキング』にも名を連ねる有名な島なのですよ!初めてその名がとりあげられたのは今は亡き機械神の異世界転生配信でして、その際に......>
......オマケ様。
おーい、おーい。
オマケ様?
......だめだ、こいつもう話聞いてねぇ!
「......災厄って、なに」
ただのオタクに成り下がったオマケ様に見切りをつけ、私はため息をつきながらしぶしぶとライリーンに質問した。
ライリーンはにこにこと、嬉しそうに説明を始める。
「災厄とは、神々にまつろわぬ、力ある者たちの総称よぉー!連中は様々な理由から、世界各地に封じられているのぉー!」
神々に、まつろわぬ......?
それって、つまり......。
「ヤバイ奴らってこと?」
「そうねぇー、ヤバイ奴らねぇー!」
ヤバイ奴らなのか......。
<あ、補足します。以前魔境で遭遇した黒龍が、強さとしては災厄筆頭格です>
ヤバイ奴らじゃん!!
災厄って、あのレベルの存在なの!?
ってか、あのお喋り黒トカゲが、災厄かよ!!
「お母さんはねぇー、そんな災厄の内の一体......“オドオカト・セ・ケヌ”の管理を『依頼』されているのぉー!だからこんな辺鄙な島に家を建てて、住んでいるわけねぇー!どう?凄いでしょぉー!」
そう言って、えへんと胸をはりながら自慢をするライリーンだけど、まて、まて、まって?
「封印されてる。なのに、どうして管理?管理が必要なの?」
なんだか嫌な予感を感じ、恐る恐る尋ねる。
するとライリーンは、あっけらかんととんでもないことを明かし始めた。
「この封印、そろそろ解けかかっているからねぇー」
はぁぁぁぁぁ!?
「いかに神話時代の伝説的な結界と言えども、経年劣化には敵わないのよねぇー......ほら、この結界って、透明じゃない?だから結構、海鳥がぶつかるのよぉー。バードストライクねぇー」
バードストライク......!?
「悠久の時を経てコツコツ積み重なったバードストライクの衝撃が、神話時代の結界を消耗させ、封印に穴を穿とうとしているのよぉー?時の力って凄いわよねぇー」
<岩に穴を開ける水滴みたいな話ですね。凄いですね>
いや、オマケ様、話に復帰してきてくれたのは嬉しいけどさ、『凄いですね』じゃなくてさぁ......。
「それ、そんな呑気にしてて、良い話?」
「どうかしらぁー?最近ケヌちゃんったら、たまに逃げ出そうとして、地上まで顔を出すこともあるしぃー?」
はぁぁぁぁぁ!!?
「そんな危ない所に、連れてくんなやぁーーーーーーッ!!!」
危険地帯だった!
この島、のどかな地表とは裏腹に地下に時限爆弾仕込まれた超危険地帯だった!!
そんな場所に無断で連れ込まれていた事実に私の頭は怒りで沸騰し、呑気に笑うライリーンの左頬めがけて本気の右拳を放った!!
でも余裕で受け止められる!
ちくしょう!!
「あ、まって、まって、エミーちゃん、だめよ、こんな結界付近で、暴れたら......」
私の連撃を捌き続けるライリーンだけど、その表情には少し焦りが見える。
どういうことだ?
これは、このままいけば、押し勝てるか!?
右拳からの、左拳!
私から距離をとろうと後ろに跳んだライリーンに対し、足元の岩を蹴り砕いて無数の礫を放つ!
「だから、まってって言っているでしょ、エミーちゃん!こんなところで暴れたら、結界に衝撃が伝わっちゃうの!そしたら、封印が、弱まる!ケヌちゃんが、出てきちゃうのぉー!」
ライリーンが石礫を避けながら、慌ててそう叫んだ、その時だった!
飛んでいった石礫のうちのいくつかが、結界に衝突して砕け散り、そして......!
ミシリ。
そう、嫌な音が響いた。
<<<オオ......オアア......オアアア......アア......ア......>>>
さらにはそんな、悍ましいうめき声が周囲に響きわたり、島全体が小刻みに震え始めた。
......良く晴れた青空は、いつの間にか何故か真っ赤に染まっていた!




