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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
14 母編!
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261 けんか

「そもそもねぇー、『技術』なんてものは、しょせんは弱者の足掻きでしかないのよぉー」


 右拳、からの左拳。

 右、左、右。


 私から放たれる攻撃を全て捌きながら、ライリーンはにこにこと語る。


「だからね、エミーちゃん。私たち、真なる強者にはねぇー?必要がないものなの。ふさわしく、ないものなのよぉー!うんうん!」


 足元に放ったまわし蹴りは軽く跳んでかわされ、腰辺りに放った蹴りは余裕を持って受け止められた。

 なので握られている足を支点に全身の力でぐるりと体をライリーンへと引き寄せてその勢いで殴りつける。

 結構変則的な動きで攻めたてるも、効果なし。

 殴りつけた腕を掴まれ、ぽんと空中へと放り投げられる。

 くるくると回転して、着地。


「もちろん、エミーちゃん、あなたはまだまだ弱い。でもそれは、私と比べたらってだけの話ぃー!有象無象と比べたら、既にあなたは十分に強いのよぉー」


 全力で地面を踏みこみ抉りながら、ライリーンに接近する。

 右、左、右、左、右、左、右!

 顔、腹、左肩、腹、腹、顔、顔!

 身長が足りない分は飛び跳ねながら、連続して拳を放つ。


「だからあなたは、まごうことなき強者なのです。私が保証するわぁー!」


 しかしその全てを、ライリーンは受け止める。

 その白く細長く美しい指先が、私の攻撃を容易く防ぐ。

 バシン!

 バシン、バシン、バシン、バシン、バシン!

 衝撃音だけが、むなしく響く。


「つまりあなたに、『技術』なんて弱者の足掻きはふさわしくない。これからは、その恵まれた素質だけを他者に押し付け、ただ思うがままに暴力を振るえば良いの!」


 目にもとまらぬ速さで手を動かし、私の拳を悉く受け止め、いなし、払いのけながらライリーンはにっこりと笑う。

 息をきらし、汗が噴き出ている私とは対照的に、この女は涼しい顔だ。

 それがむかつく。

 むかつく、むかつく、むかつく!


「それがあなたにふさわしい、強者としてのあり方よ!......おわかりかしらぁー?」


 その、傲慢な思考が!

 上から目線が!


 もはやその全てが、気に入らない!!




「ふざけるなッ!」




 全力で、蹴りを入れる。

 もちろんその一撃は、ライリーンの手のひらで容易く受け止められる。

 バシィィンッ!!

 一際大きな音が響き渡り、風圧で周囲の草が千切れとぶも、やはりライリーンには微塵も効いていない。

 私の足を受け止めたその手のひらを足場として跳びはね、くるくるまわりながら宙を舞い、距離をとる。


「何が......何が、『強者としてのあり方』だッ!!適当なこと、ぬかしやがって!!」


 そして、叫ぶ!

 心の底から沸々と湧き上がる自分の気持ちを、そのままの形で叩きつける!


「私のあり方に口をだすなッ!私のあり方は、私が決めるッ!!」


 風の音だけが聞こえる草原に、私の声が響きわたる。

 ライリーンはそれを......目を見開いて、聞いている。


「これは、私の大切な、宝物なのッ!それを捨てる?あり得ないからッ!!」


 体が燃えるように熱い!

 怒りがおさまらない!

 おそらく無表情のままに、しかし激情にまかせて喚きたてる私の様子を見て、ライリーンは冷や汗を流しながらようやくオロオロとし始めた。


「あ、あのねぇー、エミーちゃん?私は......私は、エミーちゃんのためを思って......」


「うるさい黙れクソババアッ!!」


「クソバッ......!!?」


 思わず口をついて出た言葉に、ライリーンがぴしりと固まり、停止する。

 そしてすぐに顔を赤くして、ついにライリーンも怒り始めた。


「お、お母さんに向かって、何て口をきくのぉー!?」


「うるさいッ!お前なんて、母親じゃない!ただのクソババアだ!バーカ、バーカッ!!」


 私はもう、この女を許さない!

 ナイフのように鋭い言葉を、次々に投げつける!


「バーカ!バーカ!!バァーッカ!!!」


 血も涙もない恐るべき暴言の雨あられだ!!




「え、エミーちゃん、どうしちゃったの......?」


 ライリーンは、とても傷ついた顔をしていた。

 それが、またしても気に食わない。

 傷ついた?

 自分だけが、傷ついた顔をするな!


 しかし、それだけなら、まだ許せた。

 この女、そうやってショックを受けていたのは、ほんの一瞬だった。

 すぐにその表情に、喜色が交じり始めたのだ。

 両手で頬をおさえて、ライリーンはその赤色を隠しながら、叫んだ!


「無口で大人しかった娘が、急に豹変するなんて!?まさかこれが......俗にいう『反抗期』ってヤツなのッ!?キャァーーーッ!!」




 ......ふざけている。

 徹頭徹尾、ふざけている。


 私は、この女の背景を知らない。

 何を思って、私の母親になりたがったのかを知らない。

 興味がないから、聞いていない。


 それでも、ご飯をくれた。

 寝床をくれた。

 服をくれた。

 ずっと一緒に、いてくれた。


 だから、私も!

 これがきっと、母というものなのだろうと!

 少しは思い始めて、いたのに!


 ......思い始めて、いたのに!!




 こいつは!




 最初から!




 最初から母親になる気なんか、なかったんだ!




 母親ごっこが、したいだけだったんだ!!




「もう......」


 うつむいて、拳をぎゅっと握る。


「え......?」


 気の抜けた、ライリーンの声が漏れる。


「もう、こんな家ッ......出て行ってやるッ!!」


 私はライリーンとお屋敷に背を向け、周囲をとり囲む丘に向かって全力で走り出した!

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― 新着の感想 ―
[一言] ナイフのように鋭い言葉(バーカ) 血も涙もない恐るべき暴言(バーカ)   今まで人を罵倒することが無かったんだなぁ… 他者を憎まない良い子です(胃袋に収まる屍の山から目を逸らしながら)
[一言] 母親ゴッコってのが的確過ぎるなぁ
[一言] これ家出されて喜ぶやつやん
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