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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
14 母編!
246/716

246 なんか探されているよ

 日が傾き始めた、冬の晴れた日の夕方。

 セレリリンの町の、どこかの誰かの家の、屋根の上で。

 どす黒い岩のような何かを身にまとった呪い子が、仰向けに寝転んでいた。

 すっかり【気配遮断】したそれは、ただただじっとしていた。

 動かない。

 まるで、本物の岩であるかのように、動かない。


 そんな呪い子の近くを、鳩が飛んでいた。

 この鳩とは、我々が公園などで出会うことのできる、灰色の鳥である。

 おおよそ、我々の常識に照らし合わせて鳩である、そう認められる見た目をした鳥であると考えてよい。


 その鳩が、無警戒に呪い子の上を通り過ぎようとした......その時!

 呪い子の体を覆っていたどす黒い岩のような何かの一部がほどけ、それはまるで蛙の舌を髣髴とさせるような俊敏さで伸び、鳩を捕らえた!

 どす黒い何かによって捕らえられた鳩は、そのままそれにぎゅっと握りしめられ、騒ぐ間もなく絶命した。


「............」


 どす黒い何か......【黒腕】を自らの近くに引き寄せ、捕らえた鳩の死骸をじっと見つめる、呪い子。

 すると、どうしたことだろう。

 鳩の死骸から一筋の煙がのぼったかと思うと、それが瞬く間に炎に包まれたではないか!


 これはこの呪い子が持つ異能、【着火】である。


 魔法神によって魔法化され、人々から“生活魔法”として親しまれてもいるこの異能は、本来であれば燃えやすい木屑などに小さな火種を起こすのが精いっぱいである。

 それをこの呪い子は、己の持つ有り余る魔力を無理やり注ぎ込むことで、直接対象を燃やし、調理する異能として昇華しているのだ。


 そうして少し後、【黒腕】で握られた鳩は、雑な鳥の丸焼きになった。

 呪い子は無表情のまま、それを骨ごとぼりぼりと貪り始めた。




◇ ◇ ◇




 ふん、ふん、ふふ~ん!

 ふふふん、ふん、ふん!


<おやおや、ご機嫌ですねエミー>


 あ、オマケ様、わかっちゃう?

 その通り、私はすこぶるご機嫌だねぇ!


<このところ、“物々交換大作戦”のおかげで、人間の食べ物もたくさん食べられていますからね>


 そうなのさ!

 きっかけとなった、あの少年との出会いには感謝だね......。




 たまたま足を踏み外し、落ちた裏路地で出会った小太りの少年。

 彼は私のチュロスと引き換えに、魚の干物がたくさん入った袋をくれた。


 その経験から、私はひらめいたのだ!

 物々交換で食べ物を手に入れるという、画期的なアイデアを!


<太古の人類がとっくにひらめいている程度には、画期的ですねぇ>


 この作戦が功を奏し、私はこれまで色んな食べ物を手に入れることができた。

 魚の干物等、前世でも見聞きしたことのある食べ物の他にも、まるで知らないお菓子があったりして、あぁ、異世界文化だぁって、何か感動しちゃった。


 ちなみにこの物々交換大作戦は、子どもを標的にして展開している。

 この町、何か知らないけど子どもがおやつを持って歩いていることが多いってのが、理由その一。

 大人を相手にしてしまうと、彼らは衛兵を呼ぶとかしていらん騒ぎを起こしそうだというのが、理由その二。

 子どもはきらきらしたものって基本的に好きだと思うし、私のチュロスを対価として純粋に喜んでくれそうだっていうのが、理由その三だ。


<でも、良いのですか?あなたがチュロスと呼んでいる、あの鹿の角、実は凄まじい魔力含有素材なんですよ?冒険者ギルドとかに卸せば、結構なお金に変わると思うんですけど>


 良いよ、面倒くさいし。

 高確率で、呪い子ってだけで門前払いされておしまいでしょ。

 森で出会った変態ジジイとか事務の人とか、あの人たちがきっと、例外なんだよ。

 それにお金をもらっても、大抵のお店でお買い物させてもらえないだろうしね。

 意味がないんだよ。

 それなら、子どもたちに喜んでもらった方が良いよね。

 きっとあのでかい鹿も本望だろう。

 お空の上で、きっと笑いながら私たちを見下ろしているよ......。


<絶対それ、引きつった渇いた笑いだと思います>




 まあ、そんな風に。

 オマケ様とお喋りしながら、捕獲した鳩の丸焼きを食べて小腹を満たしていた......その時だった。


「呪い子ーーーっ!どこだ呪い子ーーーっ!」


 遠くから、そんな叫び声が聞こえてきたのは。


<なんでしょう、探されていますよ、エミー>


 ひょいと屋根の端から顔をだし、裏路地を見下ろす。

 もともと人通りが少ない道だから、声の主が誰であるかはすぐにわかった。

 向こうの方からきょろきょろと辺りを見回しながら歩いてくる少年だ。

 彼が、私を呼んでいる。


 年齢は、おそらく私より下。

 ヘルメットみたいな帽子をかぶって、なんだがガチャガチャと中から金属音がする袋を背負っている。

 後は......お腹のあたりにまな板を巻きつけているのか?

 変な恰好だ。


<この世界の誰一人として、あなたにそのセリフを言われたくはないと思います>


 ねぇ、オマケ様最近、普通に私の悪口言うよね?

 何なの?


<申し訳ございません>


 よし、許した。

 さてさて、あの少年に話を戻そう。


「出てこいっ!出てこい呪い子ーーーっ!」


 少年は左手に揚げパンのようなお菓子を、右手にはスパナみたいな金属製の工具を構え、へっぴり腰で私を探している。

 その顔立ちは、なかなか端正だ。

 釣り目で、気が強そうな印象を受ける。


<............?あの少年、なんだか、どこかで見たことある気がしませんか?>


 オマケ様はそんなことを言うけど、私には全く記憶にない。

 この町で出会った子どもたちの中に、あの子はいなかったはずだよ。

 見たことがあるはずがない。

 きっと気のせいだよ。


 とりあえず私は【黒腕】を緩め懐をまさぐって、チュロスの数を確認する。

 あと、3本ある。

 さて今回も、トレードといこうか。

 私は食べ物をもらえてハッピー、相手は価値あるものをもらえてハッピー、互いに得しかない物々交換だ。


 私は少年の背後に、音もなく飛び降りた。

 『次話からお話を動かします。』とか言っておきながら、全然動いてないじゃない!

 だからできれば、今日か明日中に、また次話を投稿します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] チュロスってなんだっけ(とんらん)
[良い点]  (*´-`)焚き火がなくても調理出来るまでに文化的になったエミーさん、成長しましたね。あたしゃポッポ掴んだ瞬間に頭からバリバリ丸齧りだとばかり思ってました、ごめんねエミーさん。骨ごとぼり…
[一言] あーね、物々交換で人間の食べ物を得るという素晴らしいアイデアを思いついたんな かしこーい
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