200 ポッケロケ国上層部は紛糾し、そして
祝!200話!
そんな記念すべき、このお話の主役たちは誰なのかと言うと......。
「冒険者ギルド出張所が......ザマーゴの森に......?」
ここはポッケロケ国王都サイレジケのどこかに存在する......薄暗い部屋だ。
カーテンの隙間からわずかに差し込む光の筋が、煙るタバコの揺らぎを浮かび上がらせる。
「馬鹿な......あそこは緑竜の縄張りだぞ?そんな森の中に、出張所だと?」
「事実だ。ユーノカナン卿より報告があり、私も人をやった。随分とまぁ、立派な道と拠点が出来上がっていたということだよ」
「冒険者ギルドめ、勝手なことを......」
「まあ、待て阿呆。そう青筋を立てるな。我らの代わりに開拓をしてくれたのだろう?後からその基盤、我らがそっくりいただけば良かろう?」
「ははは......冗談がうまいな。冒険者ギルドに敵対する気か?そんなことをして、国内の冒険者ギルド機能を停止させられたら、どうする。どれだけ損失が生まれるか、想像もできん」
この、どことも知れぬ部屋にいるのは、数人の男たち。
薄暗く、その顔は闇と煙に隠れ見ることはかなわないが、その実いずれもポッケロケ国有数の大貴族たちである。
ポッケロケの政治は、この闇と煙の中で動くのだ。
「現実的な話をすれば、その新しい出張所と取引するだけで、我らにも十分利益がある。故に、余計なことを考えぬのが吉であろうよ」
「しかし、何故森の中に作るのだ......我が国の、なんとかいう子爵領内に作っておれば良いものを」
「冒険者ギルドとの折衝が足らんかったな」
彼らの話題にのぼっているのは、エミーたちが作り上げたザマーゴの森の拠点......そこに新しく開設される出張所のことである。
報告によればその出張所はかなり立派な防壁によって守られており、森を貫く道もしっかりと整備されているとのこと。
そんなものを作っているなど、ポッケロケ国は気づいてすらいなかった。
長い時間をかけていれば、多くの人を使っていれば、当然情報は漏れていたはずだ。
それが無いのだから、かなり短期間のうちに、しかも少人数で、その出張所は整備されたことになる。
一体どうしたら、そんなことができるのか?
出し抜かれた悔しさよりも、そんな疑問の方が話題の多くを占めるようになった、その時。
「しかし実は、この話......これだけでは終わらんのよ」
「......なんだと?」
「あの“大罪人”が、どうやら......その出張所の開設に、一枚噛んどるらしいのだ」
「は!?」
「馬鹿な!?」
「ありえんだろう!?」
爆弾が、投じられた。
「あの、稀代の大悪党......ジョバンノが、生きとると、いうことか......!?」
滅多なことでは動じない彼らも、さすがにこの一報には驚いた。
稀代の大悪党ジョバンノ・アック・トー。
既に野垂れ死んだと思っていた使い捨てのゴミが、どうやってかしぶとく生き残っていたというのだから。
「どうやって魔境の中で生き残ったというのだ?奴に魔物と戦う力はないはずだぞ?」
「まさか、冒険者ギルドが手引きしたのでは?」
「はあ?そんなことをするメリットが、奴らにはないだろうが」
「待て、落ち着け!どうやって生き残ったかということは、問題ではない。国に仇なす大罪人が、今ものうのうと生きている、それが問題なのだ!」
「然り!そんなことは正義神イヤスタ様が、お許しになるまいぞ!」
男たちのうち、数人の声量が大きくなる。
そしてかなり早口で、大罪人のことを罵り始めた。
しかし一方で他の男たちは、冷ややかな態度だ。
「しかし、あの大罪人は既に罰を受けている。追放刑という罰をな。これ以上、我らから手出しはできぬ」
「何を言う!大罪人を野放しにするなど、正気の沙汰ではないぞ!」
「あれは、『陛下のご恩情により』、森に追放されたのだ。それを、生きていたから、捕まえて首をはねる?陛下の顔に泥を塗りたいのか?」
「ぐ......しかし!」
「......卿らは、どうしてもあれを処分したいと見える。あれが生きていると、何か不都合があるのかね?」
「国民が納得しまい!」
「然り!国家の運営は正義にのっとって行われなければならぬ!」
「ならば、あれに渡した贈り物を、返してもらえば良い」
その一言で、興奮し正義を叫んでいた男たちは、何も言えなくなってしまった。
「卿ら、随分と色々なものを、あれになすりつけていたではないか。正義を謳うならそれを返してもらえ。そして即刻、イヤスタ様の沙汰を受ければ良い」
『イヤスタ様の沙汰』とは即ち、死後の審判のことである。
「とにかく、あれについては、もはや手出しはできぬ。手出しをするメリットもない」
「しかし、国民が納得しないというのは事実。あれが生きているとなれば、義憤にかられ、我らの知らぬところで動く者もおるのでは?」
「それも、頭が痛いところよな。あれの、その出張所における立ち位置がわからん。冒険者ギルドに、どういう立場で迎えられているのかがわからん」
「もし仮に、何か不幸な事故が起きたとしてだ......事故のあり方によっては、冒険者ギルドが我々に、何を言ってくるかわからんぞ」
「その通りだ。あ奴らを軽んじてはいかん」
「結局のところ、その出張所についても、大罪人についても、手出しは無用と......そういうことだな」
「なんとも......業腹なことよ......」
そういうことに、なった。
ひとまずジョバンノは、ポッケロケ国上層部にその存在を認知されながらも、生存を脅かされる可能性はかなり低くなったというわけだ。
だが、しかし。
それでは納得のいかない者が、いた。
それは、誰か?
......それは、比喩でもなんでもなく、天上におわす存在。
即ち、神である。
闇と煙に隠れた男たち......。
一体、誰なのか......。
作者にも、全くわからない......。(おいっ!)




