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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
12 ザマーゴの森開拓編!
191/716

191 防壁完成!

森の中を、大きな“岩の板”が進んでいく。

時折進路をふさぐニシャカーシャの枝とぶつかり、しかしそれを意にも返さずへし折りながら進むその大岩は、厚さが1メートル、高さが5メートルといったところ。


何故、岩が勝手に前へと進んでいくのか?


答えは簡単。

藪に隠れ、さらには岩が大きすぎて遠くからはほとんど見えないけど、わたくしエミーちゃんが、その大岩を一人でかついで歩いているからだ!

そう、一人で!


<相変わらず、凄まじい怪力ですね。しかし、まだまだあなたは成長します。もっと上を目指しましょう!>


うん、オマケ様。

褒めてくれるのは嬉しいけど、実は注目してほしいのは、私が怪力と言う部分ではないのだ。

この程度の大岩、余裕で運べるのはもともとわかっていたわけだし。


それよりも!


私は久しぶりに、“一人で”行動している!


こっちの方が、私にとっては大切なことなんだ。


<ああ......拠点に変態ジジイが一人、増えましたからね>


そう。

昨日拠点にやってきた変態ジジイこと、アースセル。

あのジジイは変態ではあるけど、そこそこ強かった。

それこそ、おっさんの護衛を任せられるくらいには。


だから、私は今、久しぶりに一人で行動している。

おっさんのことは嫌いではないけど、やっぱり一人は気楽だ。

守るべき人がいないというのは、気をはらなくて良い。

私一人であれば、魔境とは言えこの程度の森、お散歩感覚で歩けるわけだし。


「ミギャーーーッ!」


おっと。

アホな三つ目のおやつが、突然藪から飛び出し、私に突っ込んできた。


<【気配遮断】で魔力漏れなどを抑え誘っているとはいえ、大岩をかつげる存在に襲いかかるという行為は、さすがに愚かであると断じざるを得ません。無謀な生物ですね>


両腕が大岩でふさがっているから、反撃できないとでも思ったかな?


「ミギャッ......」


でも残念。

私には【魔力斬糸】がある。

アホなおやつ......フォレストトポポロックは私に近づくことすらできず、不可視の糸によって斬り刻まれ、バラバラの肉片になって絶命した。


とりあえず、腿の肉を蹴り上げて口にくわえ、もしょもしょ食べながら歩く。

歩き食いは行儀が悪いかな?


<生肉を骨ごと食べている時点で、何言ってんだかって感じですね>




......さてさて。

何で私は今、大岩を運んでいるのか、なんだけど。


これは、変態ジジイに頼まれた仕事なのだ。

この大岩を、拠点を守る防壁の材料にしたいらしい。


なんでも、変態ジジイの魔法だけで防壁を作ることも可能ではある、らしいんだけど。

長期間継続して使用する防壁を作ろうと思うと、どうしても時間と魔力が大量に必要らしい。

だから、材料が必要なわけだ。

今私がかついでいるこの大岩を材料に、それを魔法で補強し、防壁を作る。

その方が、『頑丈な防壁を作れるし、圧倒的に効率的じゃぞいッ!』とのことなのでね。

自分たちの拠点の安全のためなのだから、それなら私も防壁作りのお手伝い、進んで協力させてもらおうってことでね。

わざわざナンガ山の崖と拠点とを何度も往復しながら、大岩を【蟷螂】で切り出しては運んでいる、というわけなのだ!


......私がうまく作れなかった防壁を、あの変態ジジイが作れるってのが、どうも気に入らなくはあるんだけど......。


<仕方がありませんよ。人には向き不向きがあります。適材適所です。あの変態ジジイは物を作ることが得意なクリエイター。エミー、あなたは物を破壊し、敵を殺し尽くすことが得意なジェノサイダー。ただ、それだけの話です>


オマケ様は私のこと、なんだと思っているのかな!?

残虐非道の破壊兵器じゃないんだぞ、こちとらよっ!




◇ ◇ ◇




さてさて。


私が拠点に戻ると、おっさんと変態ジジイが地面に図をかきながら何やら打ち合わせをしていた。

周りには数匹の死神狼の死骸が転がっている。

どうやらジジイは私がいない間、きちんとおっさんの護衛をこなしてくれたらしい。

よしよし。


ちなみに今は、ジジイはパンツをかぶっていない。

かぶる時とかぶらない時の、違いがよくわからん。

そもそもパンツをかぶって何が嬉しいのかも、わかんないけど。


さて、その変態ジジイだけど、森から出て来た私の姿を見て、勢いよくぴょんと立ち上がった。


「フォッオ~~~ッ!お帰りエミーちゃんッ!自分で頼んでおいてなんじゃが、よくもまあそんな大岩、かつげるもんじゃの......ってか何なの、その口周りにべったりついてる血は......」


「............」


なんだその若干引きつった笑顔は。

ぶっとばすぞ。


「ま、おかげさまで大助かりじゃッ!これで数か月分は工期が短縮されとるぞいッ!ほいじゃ、その岩、さっきの岩の隣に置いてくれんかのッ!」


「わかった」


ズドン!と音を立てながら、大岩が地面に立つ。


「『大地よ、その口を開け敵を飲み込め!【ピット】!』」


次いで変態ジジイが詠唱をすると、大岩の下に土魔法で穴が作られ、大岩はその穴の中に少し沈んで埋まり、安定する。

変態ジジイが言うには、安定性を増すために岩の形ぴったりの穴を作っているらしく、これは誰にでもできることではないのだとか。


<はい、それはその通りですね。本来【ピット】は丸い落とし穴を作るための魔法ですからね。穴の形を微調整するというのはいかにも地味ですが、詠唱魔法を応用しこれほど活用できているのは、驚愕に値します>


「フォッオ~~~ッ!次じゃッ!『土よ、壁となり我が身を守れ!【ウォール】!』」


次に変態ジジイが使った魔法は、昨日私たちの家を作るために使った【ウォール】という魔法だ。

ただ、使い方は昨日とは異なる。

変態ジジイの魔法を受けて、周囲の土が盛り上がり、まるで意思を持っているかのごとく動き出す。

そして私が設置した、大岩と大岩の間にできた隙間を、あっという間に埋めてしまった。

これで、この区画の防壁の基礎は出来上がりだ。


「フォッオ~~~ッ!調子出てきたぞいッ!ついでじゃッ!『岩よ、鋭い槍となり敵を貫け!【ロックスピア】!』」


変態ジジイはそう詠唱しながら、出来上がった防壁をペシンと叩く!


「............?」


しかし、何も起こった様子はない。


「へんた......アースセル殿、今のは?」


おっさんも困惑顔だ。


「森側から見ればわかるぞいッ!ついてくるのじゃッ!」


言われるがまま防壁の裏側に周り、私とおっさんは納得した。

森側の防壁の上の方に、槍のような鋭いトゲが、無数に突き出している。


「これは、ザマーゴトード対策じゃのッ!奴ら、そこそこ頭も良いからのッ!防壁にトゲがついとれば、飛び越えようともしないというわけじゃッ!壁を登ろうとするフォレストトポポロックも、これではじけるぞいッ!」


「「おお」」


私とおっさんは、思わず感嘆の声をもらした!

本当に、このアースセルは有能なジジイだ。


<これで、変態でさえなければ......>


オマケ様が、こっそりため息をついた。


「これで、変態でさえなければ......」


おっさんも、小声で同じことを言った。




◇ ◇ ◇




それから数日間、私はせっせと岩を運び続けた。

今では防壁はすっかり伸びて、一部分を除いてぐるりと拠点を囲んでいる。

その、最後に残った隙間を埋めるべく、私はいつもの通り大岩をかついでナンガ山の崖から帰ってきた。


ズドン!


大岩を、防壁の隙間に設置する。


「フォッオ~~~!エミーちゃんやッ!隙間からこっちに入っておいでッ!」


誘われるままに拠点へと入り込むと、そこにいるのはおっさんと変態ジジイ。


「おっしゃッ!ほいじゃ、これで仕上げじゃぞいッ!『大地よ、その口を開け敵を飲み込め!【ピット】!』」


最後の大岩が少し大地に沈み込み。


「『土よ、壁となり我が身を守れ!【ウォール】!』」


大岩と周囲の防壁の隙間が、土によって埋められ。


「『岩よ、鋭い槍となり敵を貫け!【ロックスピア】!』」


外敵の侵入を防ぐ、鋭いトゲが形成された。


「これにて、防壁完成じゃ~~~ッ!」


変態ジジイが拳を掲げ、雄たけびをあげる!

私は......周囲を見わたし、自分たちを取り囲む壁を見上げた。


何もない森だったこの場所が。

木を切り倒し、畑を作り、壁を作り......。

人の住める環境として、整えられつつある。


なんだか......。


なんだか、感無量だ。


「ほら、エミー、受け取れ」


私が感動に打ち震えていると、横からおっさんが何か差し出してきた。

以前、変態ジジイが土魔法で作ったコップだ。

その中にはキラキラ輝くきれいな水と......ツタが入っている。

このツタは、“酢ヅタ”だ。

つまりこれは、酢ヅタ水。

おっさんが考案した、爽やかな酸味が特徴のおいしい飲み物だ。


「フォッオ~~~ッ!ありがとうのうッ!」


変態ジジイも嬉しそうにコップを受け取った。


「......さて!我々全員が力を合わせることで、無事拠点を囲む防壁が完成した!この先にも、門の作成、堀の作成、水路の作成......道の、作成など、やるべきことは多い!しかし今日の所は!互いの努力を讃え!防壁の完成に祝杯をあげようではないか!......乾杯!」


「「かんぱ~いッ!」」


おっさんの挨拶を聞いてから、お互いのコップを打ち付けあい、酢ヅタ水をごくごくと飲み干す。

おいしい。


「プハ~~~ッ!うまいのうッ!酒もあれば最高だったんじゃがのうッ!」


「酒はあったとしても、この場では出さんぞ。エミーに飲ませるわけにはいかんしな」


「なるほどッ!それは失敬したッ!フワハハハッ!」


おっさんと変態ジジイが笑いあっている。

不思議だ。

数日前までは、見ず知らずの他人だったのに、今では肩を並べて酢ヅタ水を飲んでいる。

今や私たちの間には、強い信頼関係が結ばれていた。


大罪人だという、悪人顔のおっさん。

超有能だけど、変態のジジイ。

そして呪い子の私。


全員、それぞれ抱えているものはあるけれど。

それでも、そんな事情なんか気にならない程度には。


今、私たちは、“仲間”だった。




「......エミーちゃんも、お疲れ様じゃったのうッ!おぬしは、一番の功労者じゃぞいッ!」


アースセルが、今度はこちらに寄って来た。


「別に、大したこと、ない......」


「エミーちゃんにとってみたら、そうなのかもしれんのう......しかしの、吾輩らは、エミーちゃんに、本当に助けられているのじゃッ!ありがとうのうッ!」


「............」


......褒められた?


<ええ、褒められました>


褒められた。

えっと、えっと、褒められた時って、私、どうすれば良いのかな、オマケ様。


<まあ、エミーを“褒める”というのは、いささか不敬ですね!崇め奉るよう、教育しましょう!>


よし、こいつは無視しよう。


えっと、えっと......。


「............」


私はなんだか、恥ずかしくって、結局無言でそっぽを向くことしかできなかった。

アースセルはそんな私を優しく見つめ......。


「......エミーちゃん。おぬしになら、これを託せるのかも、しれんのう......」


そう、小さくつぶやいた。




「え」


「黙って受け取ってくれると、嬉しいのッ!」


そう言ってアースセルはポケットの中から何かを取り出し、ぎゅっと私の手のひらの上にそれを押しつけた。


アースセルがごつごつしたその手を開く。

その時、私の目に飛び込んできた彼からの贈り物、それは......。







パンツだった。







私は変態ジジイを殴り飛ばした。

強い信頼関係は、簡単に砕け散った。

アースセルは【ウォール】を応用して家を作ったりしていますが、ではそもそも“家を作るための詠唱魔法”がこの世界にないのかと聞かれれば、あります。

あるのですが、失伝しています。

何故かと言えば、そんな魔法があったらほとんどの家は魔法で建てられてしまい、建築関係の技術が失われてしまうということで、建築神等から魔法神に抗議があったからですね。

魔法神が作ったは良いものの、こんな風に文句をつけられて使うことのできない詠唱魔法というのが、割と多く存在していたりします。


また、次の投稿まで間が空きます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 悪党、変態、呪い子、厄満3点セットが信頼の絆を結び感無量のシーンが粉砕されるラスト!(ノД`)ジジイのキャラが完全に確立された良き流れかと……ジジイ、いったい何を託したかったのか( ˊ̱艸…
[一言] サイズさえあっていれば…(違う)
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